フレイヤとティナ・1
中庭に視線が向かないのは「あの女とかかわるな」というご当主よりの指示が徹底されているのかもしれない。
勝手に押しかけた身で城内を動き回るのは、それこそネズミ(コソコソと嗅ぎ回るものという意味)だ。
さすがにティナちゃんとここで会うのは目立つ。フレイヤは腕組みをした。
大人のくせに暇な私より、ティナちゃんが忙しいような気がする。
これは「いつ、どこで会える?」と率直に聞いて、ティナちゃんの都合に私が合わせるのが、話が早いのでは。
という訳で「いつ会えるかな」とベンチの足元、土に枝でメッセージを書いた。
翌日には「夜から朝まで毎日ひとり」とお返事があった。
堂々と訪問できるかどうかは別として、お部屋に行くことはできるようだ。
下手に外で会うより目立たないかもしれない。機会は逃すな、忍び逢いは今夜と決めた。
慎重に扉を数えながらいくと、少しだけすかしてある扉を発見。確信を持って押せば簡単に開いた。
部屋の中央に立って大きく目を開いている女の子。全身からわくわくとドキドキが伝わってきて、こちらまで染まりそう。
「こんばんは、ティナちゃん。素敵な贈り物をありがとう、フレイヤです」
フレイヤは、優しく見えると信じている微笑を作った。
大人びた子を想像していたけれど、九歳とはこれくらいかもしれない。そして子供でも妙な色気のある子はいるものだが、ティナちゃんには全然ない。
ラング様の幼女趣味はやはり否定できる。疑ったことを申し訳なく思い、心の内で詫びる。
「座ってお話ししよう」
「私のことを、知っているの?」
「毎日見てたから」
窓に顔を向けるので、つられてフレイヤも目を向ける。下方だけ磨かれた窓だ。
椅子がひとつしかないからと、ふたり並んで寝台に腰掛ける。
「お招きありがとう、ティナちゃん」
「来てくれてありがとう、お姉さん」
笑顔が可愛い。この城に来てから、笑顔に接する機会はほぼなかったので、尊い気すらする。
優しいやりとりの嬉しさはこの子より私のほうが大きいんじゃないかしら。人情が沁みるのは子供より大人だもの。
などと考えているとはつゆ知らず、ティナちゃんはうふうふと笑い「お姉さん、やっぱりきれいね」などと言ってくれる。
「そう? それをいうならティナちゃんは可愛らしいわ。眉の形がよくて目がはっきりしているから、羨ましいわ」
私は、口の悪い人に言わせると雰囲気美人だから。
ティナちゃんのくすぐったそうな笑みがまた可愛らしい。
「お姉さん、私たちお友達になれる?」
「ええ、ぜひなりましょう」
フレイヤは一も二もなく賛成した。




