アンディ10歳 仲間に加わりました
それで着の身着のまま城砦のある町へ向かう途中で疲れ果てて動けなくなって倒れてしまった、と。
拾われたのはいいけれどウチが山賊だっていうのは、もう知っているのか。
ドキドキしちゃう。クリスティナは胸の前で両手を握りしめた。
「繰り返しになるけどさ、悪いことは言わないから頭下げて家に帰りな。親御さんも心配してるに決まってるよ」
クリスティナを横目にしてジェシカが諭す。もっともなことなのに「うん」と言わないアンディは強情だ。
せっかくのお友達が帰ってしまうのは残念だけど、正しいのはジェシカ母さんだと思う。
「そうよ、そう。アンディはまだ子供なんだから」
仕事なんて見つかるわけがない。もっとひどい目に合うかもしれない、だってアンディは甘ちゃんなのだ。
「僕より小さいクリスに言われたくない」
アンディはクリスティナにむっとした顔をしてから、ジェシカに向き直った。
「ここは人をたくさん雇ってますよね。俺も働かせてくれませんか。できる仕事はなんでもやります」
「できる仕事ったって、たいしてないじゃないか」
「そこを、どうかお願いします」
体の脇に真っ直ぐに指まで伸ばしてきちんと頭を下げる。
「ここで働かせてください!」
なんだかかわいそう。下げたままの頭を見ながら、クリスティナは母ジェシカの前掛けの裾をそっと引いた。
少し渋い顔をして考えていたジェシカが「子供なりに意地はあるかね」と呟き、分かったよとクリスティナの頭をポンポンとする。
「読み書きと計算は、できるのかい」
勢いよくアンディが姿勢を戻した。
「できます!」
「馬の世話は嫌がってもらっちゃ困る」
「したことはありませんが、教えてくれたらできます!」
「なら決まりだね。クリスと仲良くしな、家出少年」
「ありがとうございます!」
家の外まで聞こえそうな大きな声。クリスティナも負けないくらい元気に歓迎の言葉を述べる。
「仲良くしようね、家出少年」
「『家出少年』じゃない、アンディだ」
クリスティナはジェシカの真似をしただけなのに、アンディはこの上なく嫌そうな顔をした。
こうしてアンディは仲間に加わったのだった。




