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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第三章 幾星霜のクオリア、願いを紡ぐ未来
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第59話 軌跡が導く希望

「立ち上がる度に痛み付ければ、いつかは闘志も潰えるわ」


 黒い魔力の弾が繰り返し私に襲い掛かる。

 その一撃を剣によって対応する。

 しかし、全てを撃破しきれるわけではない。

 いくつかの攻撃は私に直撃してしまう。


「ぐっ……!」


 弾き飛ばされそうな身体を押さえ、剣を構える。

 まだ、立ち続けられる。

 諦めることはできない。


「私は絶望が形になったもの。ちっぽけな存在に勝てるわけがない」

「魔法少女は夢や希望の為に戦うものよ。決してちっぽけじゃない……!」


 ほんの少し見えた隙を狙い、接近。

 そして、剣を振りかぶる。


「まだ諦めないつもり? いくら貴女が頑張っても無意味に終わるというのに」


 魔力を纏った腕で受け止めるルイン。

 剣による単純な攻撃は通らない。……ならば。

 地面を蹴り、空を飛ぶ。

 そして、剣の先端に魔力を込めて狙い、突き刺す。


「アイゼン・シュヴェルト・ライトニング!」


 勢いよく解き放つ突きの一撃。

 狙いは攻撃を受け止めていた腕部分。


「届かないと言ってるわ」


 しかし、魔力を集中させた攻撃も受け止められる。

 それでも、私は諦めない。


「……ライトニング・ショット!」

「なっ……!」


 剣の先端に集めた魔力を瞬時に解き放ち、魔法による爆発を起こす。

 攻撃を行ったのち、私はその爆発の勢いを利用して距離を保つように飛翔し、着地する。


「多少驚きましたが、無駄なあがきです」


 爆風から現れるルイン。

 決め手にはならなかったようで、攻撃を受けていた手の魔力が薄れているくらいの目に見えるダメージは発見できなかった。


「しかし、愛染未来を見ている魔法少女が希望を持つというのは不愉快だわ」


 冷徹な目を向け、私に向かうルイン。

 増幅した魔力がルインを包みこむ。

 対応しなければならない。そう判断した時。


「だから、希望を摘み取っておくことにする」


 ルインが私の前まで瞬時に移動した。

 瞬きする時間すらない。


「希望を信じる魔法少女に対して有効な手段は……」


 腹部に鈍い衝撃が走る。

 対応、できなかった。


「暴力です」


 一瞬思考がぼやける。

 駄目だ、意識を手放してはいけない。

 ふらつく動こうとする。

 しかし、ルインは容赦なく攻撃を加える。


「繰り返し、傷つけられる魔法少女の姿を見て、多くの存在はなにを感じると思いますか?」


 胴体に鋭く襲い掛かる蹴り。

 その一撃で、私は吹き飛ばされてしまう。

 全身が打ち付けられ、衣装に傷が入る。

 身体も擦り傷が増えてきた。

 立ち上がらないといけない。

 そう思っても、身体がすぐに動いてくれない。


「見ていられない、苦しい、嫌だ……様々な感情が浮かび上がるでしょうね」

「わたし、は……!」

「そうそう、無理に喋ろうとして、抵抗してみると痛々しさが増します。そして、深い絶望に陥るでしょう。『信じていたあの強い魔法少女がこんなに苦しめられるなんて』と。失望もするかもしれませんね? こんな存在に希望を託したんだって」

「まだ、終わってない……!」


 身体全身が痛む。

 特に、繰り返し入る胴体の一撃によって、うまく立ち上がることも困難だ。

 それでも、私は負けられない。

 ここで、私が諦めた全てが台無しになってしまう。


「はぁ、まだ絶望してくれないのね。愛染未来。なら、もういいわ」


 ルインの身体が空に浮かび上がり、その周囲に強い魔力を集中。

 魔方陣が彼女の前に展開される。


「最大火力を持って、この世界から貴女を消し去ってあげましょう」


 大量に余裕があるルインの魔力は強大。

 今の私に受けきれるほどの魔力はない。

 そして、避けられるほどの体力も残されていない。

 ……それでも。


「信じてくれる人がいるから、私は、諦めない」


 立ち上がり、今ある魔力を収束させる。

 絶望的な状況でも、希望を忘れてはいけない。

 魔法少女は負けない。

 そう信じて。


「終わりよ、愛染未来。破滅からは逃れられないわ!」


 解き放たれる赤と黒の魔力。

 強大な魔力がまるで光線のように襲い掛かる。


「クリスタライト・シャイン……!」


 結晶魔法、その閃光によって私は対応する。

 魔力の量はけた違い。

 相手は人々の負の感情を乗せた一撃なのに対して、今の私の力はひとり。

 このままでは、やられてしまう。

 でも、そんな結末は認められない。


「無駄なあがきね」

「無駄なんかじゃない……!」


 私の姿を見て、信じてくれる人がいるなら。

 私の声を聴いて、励まされた存在があるなら。

 私は、何回だって立ち向かう。

 希望を託された魔法少女として。

 そして、『未来』を信じたみんなの為に。


『多くの視線が集まっている今の現状。ふふっ、わたしたち向けの場面です』

『私が今、全力で魔力を放ち、声を届かせられるようにしている。破滅の日の内部構造は少し理解しているつもりだからな、魔力を繋げられるように善処した』

「……アイ、クオリア!?」


 突如聞こえるアイとクオリアの声。

 幻聴ではない。

 確かに、彼女の声が聞こえてくる。


『詳しい話はあとです。凝視のオルクス・アイが、未来に希望を届けに来ましたよ』

「希望……!」

『声を聞け、未来! みんなの願いを受け止めるんだ!』


 クオリアの声が聞こえた瞬間。それに連なるように様々な声が聞こえてきた。


『負けないで、未来さん!』

『未来さんもどんなに苦しめられても戦ってる、だからわたしも信じなきゃ!』

『私の願いも力になりますように……!』


 見ず知らずの魔法少女の声が聞こえる。

 私に憧れている、私を信じてくれている声が私に力をくれる。


「その信頼は重荷になっていつかは人を潰すわ!」

「違う! まっすぐな感情は人を導いてくれるんだ!」


 明るい感情の力が、私に力をくれる。

 閃光の魔法の輝きが少しずつ増していく。


『未来さん、再び戻ってきて、アニメを見てくださいね』

『そうそう、主役の子がアニメ見れないで負けちゃうのは許さないからな!』

『だから、私たちも願いを込めて祈ります!』


 かがみとかなたの声。

 まだ、この世界でやりたいことがいっぱいある。

 そう前向きにさせてくれる言葉が負けない意思をくれる。


「いつかは終わる娯楽になんの意味があるというの?」

「楽しいことがあるから、生きようって思える! だから意味はいっぱいある!」


 生きることは悲しいことだけじゃない。

 明るい日常があるからこそ、生きていける。


『また、あたしは未来と音楽を作ってみたい!』

『ボクも未来のインスピレーションを感じたい。だから、信じてるよ』

『負けないで、未来! あたしたちにできることは音楽を奏でることくらいだけど!』

『前向きな感情を引き出すのは得意だよ!』


 明るい演奏が赤い世界の空間まで響き渡る。

 絶望を打ち消す、希望の音楽。

 それによって心が励まされる。


「音楽に心が揺さぶられるなんて、信じられないわ!」

「どんな文化だって、感情を揺さぶる力はいっぱいある!」


 閃光の魔力が徐々に強まっていく。

 みんなの声が、祈りが、私に力をくれている。


「偉そうに……!」


 しかし、ルインも魔力を増幅させる。

 それでも魔力の打ち合いの戦いは拮抗勝負まで追い込むことができた。


『大舞台に立っている未来へ!』

『こちらの気持ちがいっぱい届きますように』

『レガちゃんとクミちゃんの舞台、もう一度見てほしいから!』

『いっぱい、祈るよ』

『この世界は明るくて、素敵な気持ちでいっぱいだから!』


 レガとクミのまっすぐな願い。

 そして信頼する気持ちが伝わってくる。

 私が花吹雪町で解決した事件。

 そして、前向きになったきっかけ。


『未来、私はお前に会えてよかったと思ってる』

『パートナーとして、共に日常を過ごした時間。とても尊いものでした』

『これからも、また、一緒に多くのことが知りたい』

『もちろん、未来にもどんどん笑顔になってもらいますからね?』


 日常を教えてくれたアイ。

 日常を知りたいと言ってくれたクオリア。

 みんなの為に、負けられない。


「フル・バースト!」


 全魔力を集中させ、クリスタライト・シャインの閃光をさらに強く輝かせる。

 明るい感情、そして魔力が宿った一撃。


「ま、まさか、私が……まけ、る……!?」


 その光線がルインの魔力をかき消し、彼女の身体を覆った。

 空から力なく落下していくルイン。

 その衣装は先ほどのドレスを纏ったような姿ではなく、落ち着いた雰囲気の衣装へと変化していた。

 先ほどまで展開されていた、外の魔法少女まで通じる映像も消えて、今は私とルインの二人きりの会話の状態になった。


「……人々の夢や希望がここまで大きなものだなんて、想像もしてなかったわ」

「負の感情も抱えて生きるものだけど、それでもみんな明るく生きていたいから」

「……で、どうするの? 私はここで消しとく?」

「ううん、ルインは生きていてほしい」

「何故?」


 困惑した表情のルイン。

 それに対して、私は答える。


「楽しい日々を送れたら、案外この世界も悪くないんじゃないかなって思えそうだから」

「……結構マイナス思考よ? 私は。性格も結構悪いし」

「美味しいものを食べたりすると変わるかもしれないし」

「……お人よし。私は『破滅の日』の代行者にそういう判断しちゃうの?」

「元『破滅の日』の導き手とパートナーなわけだし、誤差みたいなものだと思うけど」

「さっきまで殺し合ってるような感じとは思えないわね」

「それはそうかも」


 笑いながら、そう答える。

 大きな戦いはこれで終わったはずだ。

 そう信じる。


「はぁ、毒気を抜かれるわ……ところで、愛染未来。空間の裂け目の核を破壊しないことには『破滅の日』がなくならないのは知ってるわよね?」

「わかってるつもり」

「もし、戻ってくるつもりなら、しっかりこの世界のことを考えておいた方がいいわよ」

「うん、気を付ける」

「これが私から言えるアドバイス。もう一つ質問いい?」

「なに?」

「いつ、愛染未来はこの世界のことが好きになったの?」


 その率直な疑問に私は考えながら答える。


「一緒に悩んだり、考えてくれたりする人がいるって気が付いた時かな」

「不安だけが全てだとは思ってないの?」

「瞳と離れた時はずっと不安がいっぱいだった。でも、今は少しずつ自分の足で歩き出せてるから」

「そう」


 ルインは静かに笑い、頷いた。


「なら、きっと大丈夫ね」

「なにが?」

「こっちの話。核は向こうにあるわ。壊しにいけばいい」

「ルインは消えないよね」

「『破滅の日』との繋がりを絶てば問題ないわ。……まぁ、一般的な意思を持つ魔物的な存在になっちゃうけど」

「アイと仲良くなれそうかもね」

「ま、誰と仲良くなるかはこれから考えるわ」


 大きな戦いが終わり、破滅の日を終息させる瞬間まで到達する。

 その先に何が待っているかはわからないけれども、明るい結末が訪れることを私はただ願っていた。

 赤い世界。戦いを終えた私の衣装も身体も傷ついていたけれど、今は不思議と痛まなかった。きっとルインとも話を行うことができたからかもしれない。この世界はそこまで綺麗じゃないとしても、明るい場所だっていっぱいある。そう私の口から言えるように、また、帰ってこよう。

 私は決意を胸に、『破滅の日』の核まで近づいていった。

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