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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第三章 幾星霜のクオリア、願いを紡ぐ未来
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第57話 託される想い

 花吹雪町、上空。

 町を見下ろせる高度になった時、空の魔物が私たちに襲い掛かって来た。

 鳥の形をした魔物。数は一段と多い。


「一気に行くよ!」


 魔力の結晶弾を展開。魔物にそれぞれ攻撃を当てながら、空間の裂け目まで飛翔する。

 距離はまだ遠い。根本まで到達するのにはもう少し時間がかかる。


「ひとつひとつの魔物の強度が弱いのなら……」


 アイが使い魔を動かし、魔物を追尾し魔力弾で撃墜していく。

 浮遊能力を重点的に特化されているからか、耐久性はないみたいだ。


「わたしでも対応できます」


 魔力を展開し、使い魔の数を増やしながらもアイは不敵に笑う。

 撃破しながら、空に向かって移動する。

 空の色は中心点となる空間の裂け目から少しずつ赤く染まっていく。

 それに伴い、魔物も活発になっていく。


「時間との勝負だな」

「どうにか消滅させないと……!」


 魔物の妨害を受けながらも少しずつ上昇する。

 それでもまだ届かない。

 このままでは間に合わないかもしれない。

 そう思った時、アイが振り向いてさらに使い魔の量を増やした。


「アイ?」

「……未来。この場の魔物、全部私が引き受けます」


 増やした使い魔を多方面に展開し、魔物に攻撃を行うアイ。

 その表情は決意を感じさせるものになっていた。


「いや、ここは私も……!」

「クオリアは未来と一緒に行ってください。裂け目の封印が行えるのはクオリアと未来のふたりですので」

「だが……!」

「心配いりませんよ」


 小さく微笑み、アイが言葉にする。


「これでも、まだこの世界でやりたいことがいっぱいありますので。ここで負けるつもりはありません」


 まっすぐ敵を見据えるアイ。

 信念を感じるその眼差しからは、彼女の強い意志を感じる。


「わかった、任せるね。アイ」

「ただ、未来? これだけは忘れないでくださいね」

「……約束、でしょ?」

「ふふっ、私に高額のものを奢らせないように気を付けてくださいね?」

「大丈夫」


 少しずつ高度を上げながら、アイに告げる。


「必ず、帰ってくるから」

「えぇ、その時はしっかり伝えます。おかえりなさい、と」

「うん。……行こう、クオリア!」

「了解……!」


 目標、空間の裂け目。

 さらに速度を上げるべく、魔力を集中させる。


「……さて、久しぶりに名乗りましょうか」


 魔力を展開させたアイが、魔物を撃墜しながら構える。


「凝視のオルクス・アイ……かけがえのない世界と、素晴らしい友情を守るために参りますっ!」


 凛とした彼女の姿を見届けながら、私たちは空間の裂け目へと移動していった。





 空間の裂け目付近。

 魔物はアイに引き寄せられているのもあってかなり量を減らしている。

 しかし、裂け目そのものの魔力は変わらない。

 裂け目からは今日、これまでに遭遇した以上の強力な魔力を感じる。


「未来」

「大丈夫、やってみせるよ」


 こちらの魔力が届く位置まで移動し、集中する。

 この裂け目を封印できれば、きっとこの戦いは終わる。


「行くぞっ!」

「封印、開始っ!」


 裂け目に対して、魔力を解き放ち、封印を試みる。

 今まで以上の魔力を加えた一撃。


「な……っ!?」


 しかし、その魔力は霧散に消えてしまった。

 裂け目に届いた瞬間、何事もなかったかのように弾かれたのだ。


「次! もっと接近して攻撃するよ!」

「あぁ……!」


 しかし、諦めるわけにはいかない。

 魔力を右手に集中させ、黒鉄の剣を形成する。


「アイゼン・シュヴェルト……!」


 そのまま狙いを定め、中心部に向けて、剣で突撃する。


「ライトニング!」


 核に対して一撃が届けば、対処ができるはずだ。

 そう信じて行う攻撃。

 しかし……


「くっ……!」


 裂け目に攻撃を行った瞬間、剣が光となって四散してしまった。

 爆発的な相手の魔力に武器が耐えられなかったのだ。


「……この状況」

「危険、かもね」


 攻撃を受けたことにより、なにか反応を起こしたのか活性化する空間の裂け目。

 赤い空がさらにに広がっていく。


『未来、おい、未来! 対応できるか!? 各地で魔物が増えつつある!』

「いましてるところ、絶対に対応する!」


 それだけ言葉を放ち、イヴィルとの通信を中断する。

 絶対といったからには、必ずやり遂げないといけない。

 このまま手を足も出ないで負けるのだけは避けるべきだ。


「決めたよ、クオリア」


 だから、私は覚悟を決める。

 このまま、希望を託された私がなにもしないわけにはいかない。


「まさか……!」

「いなくなるわけじゃないよ。でも、お願いはする」


 まっすぐ、クオリアの目を見つめて、話す。


「……クオリアの魔力でさ、空間の裂け目を開くことってできるよね」

「可能ではあるが、未来……!」

「うん、裂け目に侵入して、その核を破壊する。それで『破滅の日』を終息させる」


 少なくとも、これ以上時間をかけるわけにはいかない。

 友達に、そして世界各地で戦っている魔法少女に怪我をさせるわけにはいかない。

 長引けば長引くほど、被害は増えていくだろう。


「本来は私がやるべきだ! 私がやった方が、損失も少ないはずだ!」

「クオリアだってこうしてこの世界に戻ってこれたんだよ? 私が戻ってこれないはずがない」

「だが、それは……!」

「……クオリア、私はね。魔法少女は奇跡を起こせるものだって信じてるんだ」


 胸に手を当てて、静かに心の内を話す。


「夢物語だ、幻想だと言う人もいるかもしれない。だけど……魔法少女の物語の全てが悲しい終わり方をするなんて、寂しいから」

「何を、言って……?」

「決意表明。私だってこれでも世界を救った魔法少女のひとりだからね。絶対ハッピーエンドにするつもりだから。……信じて」


 まっすぐクオリアの目を見つめて、私の想いを伝える。


「……わかった、だが、私からも約束してほしい」

「約束?」

「私は、この世界のことをもっと知りたい。だから、絶対戻ってくるんだ」

「当然、戻るつもりだよ。誰も悲しませないためにね」


 アイ、そしてクオリアから帰ってくることを願われる。 

 それはきっと幸せなことだ。

 帰りを待っている人がいるということなのだから。

 その言葉を受け取り、心が温かくなる。


「私からもお願いしていいかな」

「構わない」

「帰り道、確保しておいてね」

「当然だ」


 必ずやり遂げるという意思を感じる力強い言葉。

 そして、まっすぐな眼。

 信頼できる姿に私は安心する。


「じゃあ、お願い」

「あぁ……!」


 最大の魔力を解放して、クオリアが空間の裂け目に立ち向かう。

 全力でこじ開けるように腕を使って、膨大な魔力の隙間を作っていく。


「未来に会えてよかった」

「どうして?」

「私がこうして、世界を見つめて、改めて守れる時間を得られたのは未来と出会えたからだ」

「……だったら、平和な世界をもっと見つめられるようにしないとね」

「そうだな……!」


 裂け目の隙間が広がっていき、私が通れるほどの空間が発生する。

 空間の先はなにも見えない。ぼんやりと赤い世界が広がっているだけだ。

 それでも、怯むつもりはない。


「今だ!」

「うんっ!」


 開いた隙間に侵入し、通り抜ける前にクオリアに告げる。


「行ってくる!」

「気を付けろ、絶対戻ってこい!」


 裂け目の隙間が閉じ、赤い世界に私が残る。

 ……もう、クオリアの声は聞こえない。

 いま、ここにいるのは私だけだ。隣に誰かが立っているわけでもない。

 それでも、まっすぐ覚悟を持って立ち向かえているのは願いを託されたからだ。


「すぐに終わらせないと……!」


 赤い世界を歩き、その魔力が集まる場所まで進む。

 少し進んだ先、そこに赤黒く澱んだ魔力を纏った球体が見つかった。あれが、核だろうか。


「破壊するっ!」


 結晶の魔力を解き放ち、核に対して攻撃を行う。

 その瞬間だった。


「絶望は繰り返され、不安や妬みは人の心に絡み合う。それでも抗うというの?」


 黒い影に漠然とした、それでもはっきりと少女の形をした魔物が核を守るように立ち塞がった。


「お前は……!」

「初めまして、愛染未来。私は『破滅の日』の代行者、ルイン」

「私の名前を知っている……?」

「当然だわ。私は『破滅の日』の側面のひとつ。かつての魔法少女の動向くらいは理解してる」


 淡々と話す代行者、ルイン。

 その表情は変わることはない。ただ、冷徹に言葉を紡ぐ。


「災害現象としての『破滅の日』は確かに愛染瞳によって消滅させられたわ。でも、人間の負の感情によって発生する『破滅の日』はまだ動いている」

「何が言いたい」

「ねぇ、愛染未来、聞かせてほしいの。あなたが信じる人間の善性を、そして世界の在り方についてを」


 言葉を紡ぎながら魔力を展開するルイン。

 掌に魔力の剣を構えて、少しずつ私に向けて距離を詰める。

 私も黒鉄の剣を展開し、立ち向かう覚悟を決める。


「そして、諦めて絶望してほしいの。この世界はそこまで綺麗じゃないって」


 黒く光る魔力が迫る。

 強大な敵、『破滅の日』の代行者。

 私はひとり、立ち向かう。希望を背負って。

 赤い世界、剣を構える私の心には決意が宿っていた。

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