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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第三章 幾星霜のクオリア、願いを紡ぐ未来
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第55話 未来を導くショータイム

「まず、状況を再度確認しましょう」


 怪獣の魔物から身を隠しながら、アイが説明する。

 その解説を新しく来たレガとクミが聞いていく。


「あの怪獣型の魔物の鱗はかなり硬いです。未来の基本的な攻撃は届かない可能性は高いです」

「魔力を全力で使えばいけるかもしれないけど、正直まだ未知数なんだよね」

「私の格闘術もそのまま相手をすると分が悪い印象を受けた」

「つまり、どうにかして攻撃を通させるのが重要になりそうですね」

「そうだったんだね」


 頷くレガ。

 しかし、彼女には策があるらしく、動揺している様子はなかった。

 真剣に話を聞き、そして考えている。


「レガ、あれだけ大きい魔物だと見栄えもよくなりそう?」

「うん、私たちの秘密道具の出番だって思ってた!」

「秘密道具?」

「ふふん、それはね」


 レガは連れてきたうーしーちゃん3号に近づき、指を鳴らした。

 そうすると、周囲の町の道から、なにやら箱が2つほど運ばれてきた。

 見覚えがある箱。そう、これは……


「イヴィルの時に使ってたマジックボックス?」


 イヴィルが起こした騒動の時にもマジックボックスを使っていた。

 あの時はうーしーちゃん3号が入っていたけれども、今回は何が入っているのだろうか。


「ふふん、正解っ。開けてビックリ素敵なボックスだよ!」

「この中に私たちの今回の切り札が入ってる」

「なかなか気になりますね」

「逆転の一手か……なんだかわくわくするな」


 それぞれの期待が高まる中、レガは笑顔を見せて、合図をする。


「じゃあ、いくよ! マジックボックス、オープン!」

「そして、うーしーちゃん、メタモルフォーゼ、ショウタイムっ!」


 レガの合図でマジックボックスが開き、そしてクミの言葉でうーしーちゃんが変形する。

 キャラピラーの足は分離変形し、人型ロボットの足の形に。

 うーしーちゃんの顔パーツは胴体に組み込まれ、変形により新しい人型の顔が頭に登場する。

 胴体から両腕が出来上がり、そして私が前に見た『牛王三式』になる。


「今回は特別編!」

「さらに武装を追加……!」


 開いたマジックボックスから追加の装甲と武装が牛王三式に装着されていく。

 両腕にはさらに大型の腕が換装され、肩にはキャノン砲が装着される。

 背中には大きなブースターが実装され、自由に空を飛べそうだ。

 全体の装甲がさらに補強され、出力が上がった魔力のマントはさらに雄々しく揺らぐ。

 そしてもう一つのマジックボックスには大型の剣と狙撃銃が用意されていた。


「舞台に登場、ドカッと解決! レガちゃんクミちゃんとっておき! うーしーちゃん、特別戦闘形態!」

「重装型牛王三式、見参です」

「おぉ……!」


 追加装甲の影響で通常のうーしーちゃん、並びに牛王三式よりも一回り大きなサイズに変貌した重装型牛王三式。

 あの怪獣の魔物よりは少し小さいものの、対抗できるくらいの質量はあるだろう。


「クオリアには見せるの、初めてだったよね? これがレガちゃんとクミちゃんの切り札っ」

「うーしーちゃん3号の戦闘形態、牛王三式です」

「いいな、特に格闘戦が得意そうなところが私好みだ」


 状況を忘れるほど、目を輝かせるクオリア。

 シンパシーのようなものを感じるのだろうか。明るい表情を見せる彼女に私もほっこりする。


「なかなか粋ですね、やっぱり大舞台におけるフルアーマーは点数高めです」

「みんなの希望を届ける為なら、頑張るよ!」

「普段とは違う作業してたから、少し寝不足続きましたが」

「……とにかく、この重装型牛王三式は切り札になるはず!」


 変形合体を終わらせた時、怪獣の魔物がこちらに気が付いたみたいだ。

 息を大きく吸い込んで、なにやら吐き出そうとしている。


「あれは……!」

「魔法による炎のブレスと予想されますっ!」

「だったら……!」


 アイの視認した判断を信じて、もう一度防御魔法を展開する。


「ルビーズ・ディフェクト!」


 私たちに、そして町の自然が燃やされないように範囲を広げて魔力結晶の壁を展開する。

 ブレスに対して壁が対応する。

 しかし、広範囲に展開しているのもあって、長く持ちそうにはない。


「レガ、クミ! お願いっ」

「了解、飛んで、牛王三式!」


 牛王三式に命令を下し、飛翔させる。

 そして、その勢いのまま、拳を突き立てて、殴りかかる。


「牛王拳っ!」


 大質量の一撃が怪獣の魔物に襲い掛かる。

 その一撃で地面に叩きつけられた怪獣は動揺したような悲鳴を上げた。


「グオオォ!?」


 鱗では対応しきれないほどの一撃。

 ようやく有効手をひとつ得ることができた。


「追撃します、牛王砲」

「二連掃射!」


 爆音をあげ、地面に叩きつけられている怪獣に砲弾が降り注ぐ。

 そのひとつひとつが確実に怪獣を追い込んでいく。


「ググ……グガアアア!」


 しかし、怪獣も立ち上がり、牛王三式に殴りかかる。


「損傷率確認!」

「25%、まだ平気」


 強化された装甲とはいえ、質量があるもの同士の戦い。

 続けていたら牛王三式だってただでは済まないだろう。

 見ているだけではいられない。


「私たちも動こう。クオリア、アイ」

「はい、私は弱点を探ります」

「ならば、こちらは……」


 マジックボックスから開いて、置かれたままの武器に目を向ける。

 装備する前に牛王三式を稼働させていたから、そのままになっていたのだ。


「武器を使おう」

「えっ、だ、重さは大丈夫?」

「なに、持ち運びには自信がある」


 そういうと、牛王三式用の大剣をクオリアは持ち上げた。凄い力だ。

 とはいえ、特殊仕様の武器を使うのは有効手段かもしれない。


「牛王三式用のライフルの性能は?」

「貫通重視の狙撃銃タイプ。自立もできるよ!」

「よし、ならそれでいこう」

「使えるんですか? 未来」

「なんとかする!」


 今はとにかく手数が欲しいタイミングだ。

 まごついている余裕はない。

 牛王三式が足止めしているとはいえ、長い間食い止められるかといったら別問題だ。


「……うーしーちゃん!」


 怪獣の一撃が牛王三式の左腕に襲い掛かる。

 強烈な衝撃。その影響で機体からスパークが発していた。


「損傷率45%、左手稼働はきつそう」

「……なら、右手で全力! 重装式牛王拳!」


 頭部に向けて放たれる牛王拳。

 しかし、今回の一撃は掌で掴むような動作だった。


「頭を押さえた!」

「今、行動して!」

「わかった」


 状況を確認したクオリアは、走り、そして、怪獣の魔物の側面に到達する。

 そして、大型の剣を右腕で持ち上げ……


「魔力を乗せて貫く! 覚悟しろ……!」


 本来牛王三式用の剣を思いっきりまっすぐ、怪獣に向けて投げ飛ばした。


「な、投げた!?」

「凄い怪力」


 勢いよく投射された剣は怪獣の胴体に突き刺さり、強烈な一撃として加わる。


「グガアアア!?」


 抵抗する力が弱まる怪獣。今がチャンスか。

 狙撃銃の発射機構を私なりに調整する。


「魔力を通じて放つ一撃なら、この中に入ってる魔力バッテリーと私の魔力をいい感じに組み合わせればいけるかな……よしっ」

「準備はできましたか?」

「あとは狙いを定めるだけ、いけるよ」

「……でしたら、あの剣が刺さった横を狙うといいです」

「横?」

「あそこに、空間の裂け目が内蔵されていますので」

「……わかった!」


 狙いを定める。

 しかし、後ろに高層ビルがあることに気が付く。

 町に多くの被害を出してしまったら、この先の生活を行う人が大変になってしまう……!


「大丈夫、牛王三式が頭を押さえてたのには理由がある」


 心配している私に対して、笑顔で対応するレガ。


「街への被害を減らすなら、飛ぶしかないよね!」

「牛王三式、飛翔」


 怪獣の頭を離さず、そのまま飛翔する牛王三式。

 空中で撃退できれば、町の被害は抑えられる。

 つまり、理想的なタイミングだ。

 ……射撃難易度が上がったこと以外は。

 ここは、外せない。

 標準を再度調整して、宙を狙い定める。


「ターゲット……くっ、標準がぶれる……!」


 不安定に動く相手を打つ。

 それはかなり難しいことだ。狙撃手でもないとしんどいかもしれない。


「うーしーちゃんを撃っちゃっても平気……!」

「その時はうーしーちゃん4号になるだけだから」

「……私は、怪獣だけを狙うよ。私もうーしーちゃん3号には思い入れがあるから」


 不安定な状況。

 それでも、私は怪獣だけを狙撃したい。

 どうすればいい、どうすればいい。

 悩んでいた時、助けてくれたのはアイだった。


「予測射撃タイミングを目視で判断しました、私のカウントから7秒後に胴体を狙ってみてください」

「……わかった!」

「カウントと同時にサイドスコープから得た情報を元に微調整を要求します、いけますね? 未来」

「当然!」

「では、いきます」


 空に浮かされる怪獣のみを狙う。

 その狙撃のカウント。


「7、やや左」


 標準を合わせる。


「6、下に移動」


 微調整。


「5、次は上」


 繰り返し。


「4、左下です」


 確実に当てる為に……


「3、ズレ発生、右上」


 みんなが笑顔で戦いを終える為に……


「2、下です」


 私は、ただ、狙いを定める。


「1、その位置そのまま、発射してください」


 そして、信じる。

 私のパートナーを。


「0、お願いします」

「……いけっ!」


 狙撃銃から、一筋の光が照射される。

 それは、魔力で構成された弾であり、敵を打ち倒す一撃。

 味方を撃つものではない。


 ひとつの閃光は、確かに牛王三式が抑えていた怪獣の胴体を貫いた。

 牛王三式……うーしーちゃんには当たっていない。

 うまく、いった。


「グ……ガ……」


 狙撃の一撃によって、怪獣の魔物は光となって消滅し、中央広場付近の魔物もいなくなった。

 空間の裂け目にうまく魔力をぶつけることができたのもあって、裂け目の再発生の心配もなさそうだ。


「できた……!」

「お疲れ様です、未来」

「こっちこそありがとう、アイ。的確なアドバイスだった」

「撃ったのは未来ですよ、未来も凄いです」

「……そうだね」


 お互いに健闘を称え合う。

 そうしている間に、クオリアが戻って来た。


「有効手の手段を作り出せたみたいだな、安心した」

「凄かったよね、クオリアさん。牛王三式用の武装ってすっごい重いんだよ?」

「本来の握力に魔力を上乗せした。そういう魔法が得意だからな」

「それぞれが頑張ったことによる勝利」


 大事になる前にうまく対応できてよかった。

 まだ、気を緩めるわけにはいかないけれども、ほっとする。


「うーしーちゃんは休ませてあげないとね」

「あとは、こっちで頑張る」

「うんっ、みんなを笑顔にするために手伝っていかないとっ!」


 まだ戦いは続いている。

 私たちは、戦いに勝つために、再び行動を開始するのだ。

 再起しようとしたタイミング、イヴィルから再び連絡が届いた。


『ふたつの空間の裂け目を封印したようだな、いいペースだ。しかし』


 少しの時間が立ったのち、イヴィルの声が再び届く。


『なにやら相手の動きに変化があったらしい。気を付けるんだ』


 それは、盤面が少しずつ変わっていっているという報告の言葉だった。

 どんなことが待ち受けているかはわからない。

 それでも、私たちは立ち向かおうとまっすぐ前を見つめていた。

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