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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第三章 幾星霜のクオリア、願いを紡ぐ未来
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第49話 音楽を響かせて

「『破滅の日』への対策は多方面に行うと安心できると思うのです」


 準備期間二日目。

 朝食を終えたあたりの時間で、再びアイがなにか提案をしようとしていた。


「戦力的な対策か?」

「戦力については……まぁ、こちらが引っ張る形になるので気にしなくていいかと」

「大本を叩くのは私たちだからね。そこはコンディションを整えていくべきだと思う」

「そうか、ではどういう対策を練る予定なんだ?」

「ふふっ、それはですね……」


 微笑みながら彼女が言葉を繋げる。


「現地で戦うことになるであろう魔法少女の心を励ますものを作るべきという対策です」

「いまいちわからないな……」

「私は言いたいこと、わかる気がする」


 こういう時のアイは積極的に行動するというのはよく知ってるつもりだ。

 今日も知人の力を使って、なにかをしようと考えているのだろう。


「曲を作るんです」

「曲? しかし、作曲者は」

「カランドとシャンテ。……ふたりに相談してほしいって流れじゃないの?」

「ふふっ、ご名答です」


 小さく拍手をする彼女。

 それに対して、私もすぐに端末を取り出した。


「忙しい可能性があるから、繋がらなくっても仕方ないかも」

「大丈夫ですよ、未来。特にカランドさんはこういう状況が好きな感じありますので」

「そうかな」


 前にオープニングを作った時にもらった連絡先にメールを送る。

 内容は、近々『破滅の日』が再来する。それに魔法少女が負けないような音楽を作ってほしいというもの。

 ……少し唐突な感じもあるけれど、彼女なら問題ないだろう。そう思いながら文章にしてみた。


「もう来た?」


 返信がやってきたのはあっという間だった。

 雑談を挟む時間すらなかったくらいにはすぐ返事が来た。


『いいね、そういう大舞台用の音楽を創るのはボクに任せて正解! あっ、早速相談したいからお昼にカフェで待ち合せない? 気分いいしボクが奢ってあげるよ!』


 文章だけでも嬉しそうなテンションが伝わってくる。

 それに対して私もそれなりにすぐに返答する。


『ありがとう。カフェで待ち合せすればいいんだよね。場所を送ってくれたら行くね』

『花吹雪町の公園付近のカフェ! そこで会おう!』

『うん、指定された時間に向かう』


 これで問題ないだろう。

 魔法端末から目を逸らし、ふたりに報告する。


「カランドはすぐに答えてくれた」

「シャンテにも話を付けておいた方がいいかもしれません」

「それもそうかな」


 そう思い、再び魔法端末を確認する。

 そこにはもう一通メールが届いていた。


『あっ、せっかくだからシャンテも連れていくね! こういう場面は経験値になるから、彼女にも経験を積ませたいからさ!』


 懸念は解消されたみたいだ。


「多分、シャンテも来る感じになった。カランドが連れてくるって」

「結構積極的なんだな、そのカランドっていう魔法少女……」

「我が道を進む方は結構ぐいぐい動いたりするものですので、そういうものなのかもしれません」

「なるほどな」


 とにかく、これで今日のやるべきことができた感じになるだろう。

 身支度を整えて、私たちはお昼時にカフェに向かうことにした。






 花吹雪町の公園。

 待ち合わせ場所として指定されたところでゆっくりしているとカランドが笑顔で手を振りながら、私たちに会いに来た。


「こんにちは! ボクたちがやってきたよ!」

「うぅ、のんびり今日は家にいたかったんだけど……」


 カランドはハイテンション。シャンテは断り切れずにやってきたといった印象を受ける。


「こんにちは、シャンテ、カランド。元気にしてた?」

「当然! ボクはガンガン作曲してたよ!」

「ちょっと魔法少女として、花吹雪町の魔物退治の手伝いしてたのもあってちょっと寝不足気味かも」


 それぞれの状況は異なっているものの、大きな怪我をしていたりするわけではないから、元気といってもいいだろう。


「あっ、キミがクオリアなんだね!」

「知ってるのか?」

「シャンテの近況報告の時に教えてもらったんだよね。未来、そしてアイと一緒に行動してる魔法少女がいるってさ!」

「そういうことか。私は昔の魔法少女ではあるが、戦うのはできる。よろしく頼む」

「ほほう? ボクはカランド・カンタービレ。作曲大好きな魔法少女さ。なんかクオリアをモチーフにした音楽も作ってみたくなるね!」

「気になるな……」

「ふふん、それはまた今度! 今は戦う魔法少女の歌を作る予定だから、そっち優先にするよ!」

「わかった、楽しみにしよう」


 これでみんな顔を覚えた感じになるだろう。

 それぞれ準備が整ったのを確認して、アイが声をあげた。


「では、カフェに向かいましょうか」

「ちょっとしたピザ食べて元気出さないと」

「ピザの食べすぎは太るよ? シャンテ」

「太らないから大丈夫!」


 公園から移動してカフェに到達するまでにはそこまで時間はかからなかった。

 比較的大きめなカフェの中に、カランドが先頭になって入っていく。


「5人集まれる個室の準備は整ってる?」

「はい、大丈夫ですよ。案内します」


 手慣れた雰囲気で受付を済ませ、個室まで案内された。

 静かな雰囲気が漂う小部屋の空間だ。扉が閉じられるようになっているのもあって外にはそこまで音が聞こえなそうだ。

 椅子は6人分あり、ひとつ余る。机は長机で作業もしやすい感じだ。

 全体的にシックな雰囲気が漂う部屋になっている。


「よし、これで色々安心かな?」

「個室を選んだのは『破滅の日』関連の話題だから?」

「そうだね! 急に言われると魔法少女のみんなもビックリしちゃうだろうし、そういうのって多分かなたがのちのち報告して避難確認とか行うだろうから、噂になるのは辞めとこうって感じ!」

「……えっ『破滅の日』って再来するの?」


 ひとりポカンとした表情を浮かべるシャンテ。

 カランドが情報が伝えてなかったのだろう。私たちも伝えるタイミングがなかった。


「うん、来るよ? あと9日後くらいだけど」

「師匠、知ってたんですか?」

「ぼちぼち? 昨日かなたに会うタイミングがあって、そこで聞いてた」

「なんていうか恐ろしい」

「だから、それに対策する為に音楽を創るんだよ、ボクたちは」

「音楽で、対抗?」


 色々と困惑している様子のシャンテ。

 それに対して、アイは自分のペースで話し始めた。


「この前の魔物退治の時に、一緒に戦ったことはありましたよね?」

「うん、未来がとどめを刺したやつだよね」

「その時、魔物に対して音楽を奏でて動きを阻止してましたよね」

「まぁ、師匠直伝の護身術だけど……」

「あれを大規模に利用して、魔物に対しては動きを拘束して、魔法少女には鼓舞を意味する音楽を作ってほしいのです」


 端的にそう説明するアイ。

 音楽には力がある。それを実感しているからこそ、戦いに応用したいという部分が強いのだ。


「魔物は負の感情を嫌う。明るい感情を引き起こす音楽を町いっぱいに届けられれば、魔法少女の優位が作れると思うんだ」

「魔法少女が夢と希望を持って戦うようになるような音楽! いいねいいね、想像するだけでも愉快!」

「でも、そんな大音量の音響道具ってあたしは用意できないかも……」


 考え込むシャンテに対して、カランドは肩を叩く。

 問題ないと言いたそうな態度で。


「平気平気! ボクのコネを使えば、花吹雪町の放送を利用して音楽を奏でたりするのはいけるよ!」

「コネでなんとかするんですか!?」

「あと、試してない魔法音楽道具もいくつかあるから、それ使って音楽を届けるっていうのもいいかもね!」

「……師匠、この状況を楽しんでません?」

「まぁ、楽しんでるかもね! 魔法少女が勝つって信じてるから!」


 そう言いながら笑顔を見せるカランド。

 音楽に対するひたむきさと前向きさは魔法少女らしいキラキラした雰囲気を感じさせる。


「あ、あたしにできることはどれくらいあるかわからないけど……やってみるよ。あたしも力になりたい」

「ボクも当然力を貸すよ! こういう土壇場を巻き返す音楽ってロマンがあるからね!」


 それぞれが決意表明して、協力してくれることを約束してくれた。

 とてもありがたい。


「じゃあ、どういう歌詞を作るべきか考えよう!」

「えっ、歌うんですか?」

「ボクが直々にね! シャンテにはバックミュージックをお願いするよ!」

「責任重大……頑張ります」

「これから、色々考えてくつもりだけど、アイデアぶつけてきてほしいな!」

「わかった、みんなで素敵な音楽を創っていこう」


 魔法少女が明るい気持ちを引き立たせられるような音楽。

 それがどんなものかはわからないところも多い。

 それでも負けない気持ち、前向きになる思いを導けるのならば、どんなことだって頑張りたい。

 アニメーションを作ることも、音楽を作成することも、どんなことにだって意味はあるはずだから。

 カフェで会話する時間。弾む音楽に対する期待で、胸がいっぱいになっていた。

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