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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第三章 幾星霜のクオリア、願いを紡ぐ未来
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第48話 世界に明るい物語を

 『破滅の日』が発生するであろう予測日が迫る中、最初に私たちが取った行動はアニメーション制作の進捗を進めることだった。

 普段暮らしている家の客室。みんなで集まって談笑する時間。

 今まで書いたものとはまた別に増やすような形でメモを書いていき、まだ報告していない物語も纏めていく。


「クオリアとの出会いもアニメーションにしたいんだけどいいかな」


 念のために本人に確認する。

 すると、クオリアはきょとんとした表情で首を傾げた。


「アニメーション……?」


 そう、彼女は百年前の魔法少女。まだ、アニメという概念が有名でなかったのもあって、そのことについて知っている知識はなかったのだ。

 そんなクオリアを見て、アイは優しく微笑みながら答える。


「わたしたちが生活した瞬間や、戦いの記録を映像媒体として残すのです。まぁ、演じているのは私たちではないのですが、ノンフィクション……つまり、実際にあったことを元に今回のアニメーションは作成されてます」

「それは、なんの為に?」

「そうですね……未来はどう答えますか?」


 私に話が戻ってきて、少し考える。

 昔から私や瞳が関与しているアニメーションにはひとつの理念がある。

 それを伝えたい。


「世界に明るい物語を届ける為に、かな」

「辛いことばかりが続くわけではないというの不特定多数に伝えるといったところか」

「そうだね、例えば、アニメに登場する私も瞳とは離れちゃうわけだけど、彼女の意思を受け継いで、思いながら前を向いて生きるみたいな展開だし……」

「最終話に入る前の様々な日常描写は人気だったりすることも多かったりします。そういった細かい幸せを伝えて生きたと思うのです」

「なるほど……」


 私たちの解説を聞いて、クオリアが頷いた。


「私が記録に残るというのはきっと歴史上初になるだろう。かつて、存在を隠蔽されたような存在だからな」

「ふふっ、なかなか印象的な存在になると思いますよ。『百年前の魔法少女の魔法少女が日常を知って笑顔になる』みたいな展開は」

「そういうものなのか?」

「えぇ、そういうものです。……前向きに、考えてくれますか?」

「こんな私でも誰かの日常を彩るなにかになれるのならば、悪い気はしない。是非協力させてほしい」

「ありがとう、クオリア」


 快く引き受けてくれたクオリアにお礼を言いながら、さらにメモを書く速度を加速させていく。


「それにしても、未来の作業はなかなか大変そうに見えるが」

「エピソードを色々日記帳形式からアニメ映えするような雰囲気に合わせながら調整してますからね。なかなか大変だと思いますよ?」

「……脚本家という仕事なのだろうか」

「どちらかといえば原作者的な立ち位置ですね。まぁ、大変なことには変わりはないかと」

「多くの人が制作に協力してるのか?」

「そうですね。音楽や作画……様々な人が協力してアニメ『魔法少女みらい・アイゼン』という作品が彩られて行きます」

「なかなか奥深いな……」

「見ます? 前作。多分フルタイムで見れば8日ほどで見終わるかと」

「……それはまた別の機会にしてもいいか? 流石に時間があっという間に過ぎ去ってしまいそうだ」

「それもそうですね」


 ふたりが談笑している間も、ひと段落するところまで書き進めていく。

 クオリアとの出会い、『破滅の日』の再来があるということ、それを解決する為に動いていること。魔物とも戦うこと。

 今リアルタイムで遭遇している問題もどんどん書き記していく。無事に解決することを心の中で誓いながらも。

 それと同時に、クオリアと過ごした日常も書いていく。

 美味しい朝ごはんを一緒にしたこと、外食をしたこと、レガとクミのショーを楽しんだこと。

 それぞれ書き記していき、ようやくひと段落させることができた。


「よし、これでなんとかっ」

「お疲れ様です、未来。お茶、飲みますか?」

「うん、もらうね」


 アイが組んでくれたお茶を味わい、一息つく。

 ようやく落ち着いた感じだ。


「とりあえず、音楽創作から先の出来事について書いてた」

「クオリアと会ってからのことですよね」

「うん、まぁ、流石に発生してないことは書けないけれど、要所を纏めてきっちり書き上げたと思う」

「読んでも?」

「いいよ、変なところとかあったら教えてね。クオリア」


 クオリアが私の創作用のメモをじっくり確認して目を通す。

 しばらくの時間が経過したのち、彼女は満足そうな表情でメモを閉じた。


「いいと思う。日記帳よりも具体的に状況が伝わってきた」

「それならよかった」


 私以外の目線から見て、問題なさそうならばきっと提出してもいいだろう。

 そう思い、ほっとする。


「さて、ここでひとつ提案があるのですが、いいでしょうか。未来」

「なに?」

「ちょっと強引な取引を行うのはどうでしょう」

「アニメ関連で?」

「えぇ。前にも言っていたじゃないですか、世界を救う為に明るい感情を増やそうって」

「うまく行くのかな」

「やってみないとわかりませんよ」

「具体的には何をする気?」

「かなたさんに『魔法少女みらい・アイゼン』の新PVを公開してもらうんです」

「……そうそうすぐには完成するとは思えないけど」

「そこはまぁ、交渉するんですよ、未来」

「なにか言われそう」

「大丈夫ですよ、ほら、いきましょう」

「あぁ、ちょっと」


 背中を押されて外に出される。

 クオリアはその様子をぼんやり見つめていた。


「私はどうすればいい?」

「休憩、もしくは魔物退治協力をお願いします。流石に現場まで連れていくのはよろしくなさそうなので」

「わかった、応援しよう」

「……とりあえず行ってくるね」


 アイが強引に私を案内しているものの、アニメの進捗を報告するのは大切だろう。

 そう思いながら、かなたに会いに行くことにした。






 アイが連れて行った先は、少し小さな会議室だった。

 魔法でできたその会議室への扉は路地裏にあり、どちらかというと秘密の相談みたいな雰囲気を感じさせる。

 部屋に入った先では、かなたが笑顔で出迎えてくれた。


「アイさんに呼ばれてきました。……進捗を伝えたいそうですね?」

「うん、一応これまでのお話は纏めた」

「ありがとうございます」


 ひとつひとつを確認しながら、彼女が目を光らせる。


「魔法少女の方との協力は許可取ってますよね?」

「問題ないよ」

「時系列的にも問題なさそうで、『破滅の日』関連のことは……解決できれば素敵な話になりそうです」

「じゃあ」

「はい、原案としてしっかり受け取ります。コピーも取りますね」

「よかったぁ」


 これでひとまず安心だろう。

 胸をなでおろす。

 そんな私を置いて、アイは笑顔でさらに交渉を続けるつもりだった。


「ところで、かなたさん。お願いがあるのですが」

「な、なんでしょうか」


 謎のプレッシャーに緊張するかなた。

 そんな彼女を気にしないまま、指を上げて、アイは提案した。


「『破滅の日』の再到来前に、新PVを用意してほしいのです」

「えっ、ええ!?」


 急な提案に困惑するかなた。

 さらにアイは続けていく。


「どど、どうして急に」

「生きていく希望というのがあると思うのです」

「希望……?」

「新作のゲームが出るから生きたい、アニメを見るまでは死ねない。そういう気持ちですよ」

「いまいち、言いたいことがピンとこないのですが……」

「……アイが言いたいことはこういうことだと思う。『破滅の日』の負の感情に対抗する為に、明るい感情を引き起こすようななにかが欲しい。それがアニメのPVだと思うから、強力してほしい」

「な、なるほど」


 少し考えて、かなたが答える。


「一応PVはある程度完成してはいるのですが、そう来られるのは予想外でした。多分、今貰った資料を基に色々補強するとなると結構スケジュールはかつかつになってしまいそうではありますが……」


 頷いて、続ける。


「ですが、なんとかできなくはないです。希望の為にアニメを作るという感じになると、みなさんのモチベーションも上がりそうですからね」

「スタッフさん、大丈夫かな……」

「花吹雪町にいるスタッフの方はなんとなく、今の異変に気が付いてたりします。だから、明るい気持ちにしたいという志は同じはずですよ」

「不安を打ち消すのは大切ですからね」

「えぇ、生きる希望はどんな形でもあった方がいいと思いますから。……間に合わせますよ、『破滅の日』前にPV実装」

「ありがとうございます、それで安心です」

「……負けないで、とはいいません。無事を願います、みなさん」

「ありがとう、クオリアにも伝えとくね」


 交渉が成立して、新しい希望が生まれる。

 今回発生する希望や、前向きな意思というのは小さなものかもしれない。

 それでも、生きてみたいという意思を創るなにかが増えるというのはいいことだろう。

 負けない意思だってきっと増やすことができる。

 アニメーション作成が作る、希望がどれほどのものかはまだわからないけれど、みんなの笑顔を見て、素敵なエネルギーにはなると信じていた。

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