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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第二章 音が刻む旋律、心に響く物語
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第28話 知らない音を刻む

 シャンテと交流を深め、友人関係になれたのち、私たちは音楽創作に着手することになった。

 彼女が魔法の譜面を展開し、私はノートを片手に歌詞を考えるというのが基本的な流れだ。隣には、アドバイサー兼サポーターとしてアイが笑顔で見守っている。


「まず、リズムやメロディの雰囲気だけど、どういう風にしたい?」

「そうだね……比較的静かなテンションがいいと思う」


 少し悩みながらそう言葉にする。

 私の発言を聞いて、アイは意外そうな表情をしていた。


「あら、未来はキラキラした魔法少女ものの音楽が好きという印象でしたが、自分の作品の場合そういうのではないと?」

「そんなところ。今の私の心境や状況はキラキラした眩しいものではないし、もっとしっとりした雰囲気だと思うから」

「なるほどね、そういう形で調整してみる」


 シャンテは言われたことを受け止めて、譜面を組み立てていく。

 魔法の譜面に色とりどりの音符が集まり、それがひとつの楽譜になっていく。


「まだあくまで仮組みの段階だから、気になった点とかはガンガン伝えてくれるとあたしも助かるよ」

「わかった」


 前奏の音楽を組み立てていくシャンテ。ふと、なにか気が付いたことがあったようで彼女は私の方を向いた。


「音楽の下地はどうする?」

「下地?」


 音楽に詳しくないのもあって、首を傾げてしまった。

 そんな私を気にしないで、彼女は詳しく教えてくれた。


「コード……っていうのも難しいか。ええっと音楽の伴奏、背景を決める感じで……つまり、その」

「主軸となる楽器を決めよう、といったところでしょうか。ピアノを使うか、ギターを使うかみたいな」

「そう、それ! それが言いたかった!」

「ふふっ、お役に立ててなによりです」


 笑顔で答えるアイ。彼女らの説明でようやく把握することができた。

 音楽には伴奏も欠かせない。それに使う音をどうするかを考えたいというところか。

 考えながら、発する。


「ピアノはちょっと静かすぎる雰囲気があるし、ギターもなんだかものによっては結構活発な雰囲気になりそうって思うかな」

「あら、ものによっては、静かめですが、結構いい感じの雰囲気を出せるものもありますよ? そうですよね」


 そういってシャンテの方を見つめるアイ。

 その期待に応えるように、シャンテはひとつの音を奏でた。


「その手のやつだったらバイオリンが強いって思うよ。こういう感じに旋律を刻めるし……」


 簡単な楽譜を作成したのち、シャンテがバイオリンの音を鳴らす。

 やや高い、それでいてまっすぐ響くような音が心地よい。


「こんな感じ。もちろん、バイオリンだけにしちゃうと結構また雰囲気変わっちゃうから、前奏とかに使う形になりそうだけど、どうかな」

「いいと思う。私好みの音だし、雰囲気が出るって感じたから」

「ほんと? それならよかった。じゃあバイオリン、組み込んでみるね」


 思い浮かぶまま、音楽を作成していくシャンテ。

 その隣で私は歌詞を作ることに悩んでいた。


「詩みたいものとして考えれば気が楽かもしれませんよ、未来」

「前にも言ってる通り、詩とは馴染みがなかったからね、なかなか筆が進まない……」

「実際に身体を動かしている方が楽だったりします?」

「それは……ないわけではないかも。事実、瞳と一緒にいた時は外で動き回ってたし」


 慣れない作業、やったことのないことをやっているのもあってなかなかに集中力を使う。

 考える、という活動にはなかなかどうしてエネルギーを使うものだ。

 少しずつ時間をかけて、歌詞を形にしていく。

 正直なところ、なにが正解かもまだ漠然としている。

 印象的なフレーズのようなものが、私に作れるのだろうか。


「暫定的なものはとりあえず書いてみたけど……どうかな」


 ノートをシャンテに渡して、彼女の反応を待つ。

 少しの時間が経過したのち、頷いて感想を言葉にしてくれた。


「Aメロ、Bメロ、サビに繋がりそうな感じの言葉の並びになってるのはいいね。しっかりと聞ける歌詞の流れに沿ってるってあたしは思う」

「よかった」


 ここで全部がよくないという状態だった場合、かなり状況は悪くなっていただろう。

 ある程度の流れが作れているのなら悪くないと思える。


「現状できる成果物を師匠に聞かせるのが第一目標だから……まずは組み立てるところからやっていこっか」


 そう言いながら、譜面を展開していくシャンテ。

 彼女の思うがままに曲は作られていく。


「なにか、手伝えることはある?」

「あたしの作曲の魔法は想いによってコントロールしている部分もあるんだ。だから、その、未来の気持ちをこの譜面に魔力と一緒に届けてほしいんだ。そうすると、その想いが形になって音になっていくから」

「私の想い……」

「ふふっ責任重大、かもしれませんね」



 微笑むアイ。

 彼女は私が比較的内側に感情をため込むタイプなのを知っているからこそ、そう言っているのかもしれない。プレッシャーをかけるような言葉の裏腹には、無理はしないようにという感情が込められているような気がした。


「で、でも、無理に引き出さなくっても大丈夫だからね! 伝えたいことを伝える、それが大切だから」

「とにかく、やってみるね」

「わ、わかった」


 魔力を展開して、譜面に手を伸ばす。


 ……私がやらないといけないこと、私がするべきこと。

 愛染瞳が提案して、形にしたアニメーションの続編の物語を期待外れのものにしてはいけない。

 しっかり、瞳と紡いだ物語の続きを描いていかないといけない。

 だから、責任を持って向き合うべきだ。

 昔の自分、かつての物語、そして、瞳に。

 うまくいくかはわからない。

 それでも、私は、私たちは前に進むべきだ。


 感情を込めた魔力は、譜面の中で音符に変動し、少しずつ形を変えていく。

 そうして、ひとつの音楽の形になっていった。


「ありがとう、これでまずは形になったと思う……!」


 そう言って音楽を鳴らしていくシャンテ。

 歌詞を見て、彼女が少しずつ歌っていく。


「……君とはぐれた世界、ひとりで空を見つめた」


 バイオリンの音が響き、静かな雰囲気の中、音は綴られていく。


「なにが正しいかなんてわからなくて、ただ歩いていた」


 寂しそうなメロディ。

 重さを感じる音。


「それでも、私は生きていく。この世界と向き合うんだ」

「キミがくれた想いを心に、一途な思いを貫いて」

「願えばきっと瞳に届くから」

「いま、私の物語を続けよう」


 オープニングサイズの歌詞を歌い終わり、シャンテが一息つく。


「いまのところはこんな感じ。まだ、歌は練習してかないとだけど形にはなってる……かな?」

「そうですね、ひとつのオープニングとして仕上がっているとは思います」


 考えながら、言葉にするアイ。

 そんな彼女の様子は普段と少し違うように思えた。


「なにか、物足りない感じがする?」

「未来にはわかりますか。しっかりとした音楽なことは間違いないのですが、エッセンスといいましょうか。足りないものがあるような気がするのです」

「うぅ、作曲センスじゃないよね」

「いいえ、シャンテさんの作曲力は流石ですし、未来の作詞も上々です。しかし、なにか引っかかりを覚えるのです」


 そう言葉にして考え込むアイ。

 一から作り直すというわけではないけれども、引っ掛かりがあるという感じ。

 客観的な目線で見ることによる感覚の話になってくるのだろうか。


「色々調整してかないといけない感じになってきたね」

「そうだね、ひっかかりを感じるポイントを修正しながら調整してかないと……!」

「歌詞のパターンとかもある程度色々考えとくね。気になる音楽の箇所があるなら、私の魔力での支援も行うよ」

「わかった! 最初の締め切り、なにを言われるかはわからないけど、いいものを創れるように頑張ろう!」

「うんっ」


 ひとつひとつ音楽の形を見直したり、歌詞を見つめながら過ごす日々。

 悩みながら少しずつ変化を加えていく中、時間は過ぎ去っていく。

 交流して、音楽を創作し、調整する日々を繰り返す中で、ついに私たちはカランドが定めた最初の提出日を迎えることになった。

 悩みながら進む日々。漠然とした感覚はそれでもまだ、何かを求めているような気がした。

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