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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第二章 音が刻む旋律、心に響く物語
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第27話 響かせたい旋律に手を伸ばす

『仲良し夕食交流大作戦』ののち、なぜか流れで私とアイは一晩宿泊することになった。

 シャンテに申し訳ない気持ちもあったけれども、彼女本人は否定することなく泊まるのを了解してくれていた。

 お風呂場で、なぜか私の動向を注目されたりしたこともあったけれど、トラブルが起こることもなく、次の日を迎えることができた。

 流石にシャンテにも敷布団で眠らせてしまうのはこちらが申し訳なかったので、しっかり話した上で、私とアイは敷布団で眠ることにした。

 そうして迎えた次の日の朝。

 私はアイよりも早い時間に目が覚めていた。


「朝食の用意手伝いくらいはしときたいな」


 流石に色々お願いするのは忍びない。

 私たちが泊まるというのも急な要件だったし、なにかしら作ったりするのはやった方がいいだろう。

 そう思い、布団を畳んで立ち上がる。

 身体の調子は良好。それなりに元気だ。

 私とアイは寝室の隣にある部屋で眠っていた。隣の寝室にはシャンテがいるだろう。

 そう思い、扉を静かに開いた。


「あれ、いない?」


 寝室の布団は丁寧に折りたたまれていて、そこにはシャンテの姿はなかった。

 もう起きているということだろうか。


「台所にいるのかな」


 そう思い、アイを起こさないように移動する。

 台所に通じる通路には昨日ピザを味わった食卓がある。

 歩いて食卓を通ろうとした時、ちょうどシャンテの姿が目に入った。

 熱心になにか、魔法端末を見つめている様子だ。

 話しかけていいか悩んでいると、彼女の方が私に気が付き、挨拶してくれた。


「お、おはよう」

「おはよう、シャンテ。昨日はありがとね。急に泊まるっていう話を受け止めてくれて」

「ううん、大丈夫。あたしもふたりの私生活とか見つめてみたかったし、ちょうどいいタイミングだと思ったから」


 シャンテが魔法端末を動かし、その中でなにかがアップロードされる。

 私の記憶が正しければ、魔法少女の流行を作っている大手のSNSのはずだ。

 私はやってないから、そこまで詳しくないけれど、音楽投稿、ダンス、様々な分野の話題で賑わっているらしい。


「なにか投稿したの?」

「え? ……あっ、こ、これ? べ、別に変なのは投稿してないよ、寝顔アップロードとかそういうのしないし!」

「……もし、私の寝顔とかアップロードしたら今なら結構とんでもないことになりそうだけどね」

「そ、そうなの?」

「うん。風の噂だと花吹雪町で私を探したい魔法少女も少なくないとか」


 私は情報収集くらいでしかそういうのは見ないから、どれだけ流行ってるかは漠然としている部分はあるけれど、意外と見てたりするアイは凄い注目してると面白がっていた。写真撮影の練習はした方がいいと謎に釘を刺してきてもいた。


「……ピザパーティーなうって画像付きってやらなくてよかった、本当によかった」

「そういうのはあんまり経験がなかったの?」

「うん、同世代の友達がいなかったもので」

「ど、同世代……」


 その言葉でそこそこ謝りたい気持ちになってしまった。

 少なくとも見た目は同じくらいなことは間違いない。けど、精神年齢がどれくらいかと言われたらちょっと怪しい。

 そんな私を同世代としてカウントしてくれるのは嬉しい反面、かなり複雑な気分だ。


「と、とにかく、さっきアップロードしてたのは写真じゃなくて、音楽! 嬉しかった気持ちを音にして表現して投稿してた!」

「なんだかいいね、そういうの」

「だ、だよね! よかったら未来も聞いてみて! よかったら……その、感想も聞きたいなって」

「わかった」


 ヘットフォンを耳に着け、彼女が作った音楽を耳にする。


「題名は……『些細で、それでも思い出になる一日』ってつけてみた」


 シャンテが作り上げた音楽が演奏されていく。

 弾むピアノの音が重なり合って音楽を奏でる。和気あいあいとしたリズム、愉快さも感じる雰囲気。

 爽やかで、それでいてどこか素朴な印象の音楽が昨日の瞬間を想起させてくれる。

 曲の時間そのものは短いけれども、満足感がある音楽なことには間違いなかった。


「昨日の情景が思い浮かんだかな。なんていうか、日常のゆったりとした雰囲気の中で、新しい楽しみが増えた……みたいなそんな感じの印象も感じた。雰囲気すっきりしてて、私は好きかも」

「本当? ふふっ、イメージ通り! 伝えたいこと伝えられたって考えると、なんだか嬉しいなっ」


 私の言葉に対してシャンテは嬉しそうに笑った。

 シャンテもカランドと同じように真摯に音楽に向き合っているのは、その表情からもなんとなく伺えた。


「作曲はどういう風にしてるの? そういうソフトとか使ってるの?」

「あたしの場合は自分の魔法でやってる。あんまり参考にならないって言われがちだけど……」

「魔法?」

「ちょっと見ててね」


 そう言ってシャンテは小さく息を吸い込んで詠唱した。


「私の想像を実現する譜面よ、開け!」


 そう唱えた瞬間、空中に音楽の楽譜のようなものが展開されていった。

 それぞれ音符が記載されていて、本格的な譜面になっている。


「あとはフィーリングで音を調整していって形にしていくんだ」


 魔力を楽譜に展開して、それぞれドレミファソラシドと音を奏でる。

 ピアノの音、バイオリンの音、ギターの音。様々な音が聞こえてくる。


「作曲の魔法なんだ」

「そうなる。師匠は羨ましいって言ってたけど、それ以外にも注意点を教えてくれてた」

「注意点?」

「うん」


 譜面を閉じて、シャンテが少しうつむきながら話す。


「まず、奏でられる音は自分が耳にした音しか再現できないこと。だから、上手な演奏を聴かないと綺麗な音は出せないんだ」

「知っていないと魅力的な音にならないと」

「そういうこと、あとは単純な話かな。自分の想像通りにしか作曲できないこと」

「それってどういう……」

「こういう魔法の空間って一般人には見えたりしにくいっていうのは未来も知ってるでしょ?」

「うん。意図的に見せようとすると余分に魔力が必要になるし、不安定になるからね」


 魔法の道具が形として存在しているのは、そういう余計な手間を省いたりするためというのも大きい。

 不可視な現象で事件を解決したりすると、時々人に不安を与えてしまうものなのだ。


「そう、だからね、魔法少女の相談相手がいないと、作曲の幅が広がらなかったりするんだ」

「譜面が見えないから」

「そういうこと。市販の作曲ソフトとかも試したことはあるんだけど、勝手が違いすぎて音楽作る前に知恵熱起こしちゃったこともあってね……このやり方でしかまだ作曲できてないんだ」


 うつむいた顔を少し上げて、私の方を見つめながら彼女が続ける。


「だから、こういう機会が珍しくって、緊張もしてるけど、わくわくもしてるんだ。……あたし、友達いないし……」

「……特別嫌われてるわけではないよね」

「そ、それは大丈夫。本名隠してやってるSNSの音楽はそれなりに色んな人に人気だし、交流もないわけではないから。ただ、単純に、こうやって隣同士で話をする機会に恵まれなかっただけ……」


 そう言葉にして、また落ち込んでしまった。

 なかなか気にしていることなのかもしれない。

 そう思った私は、私なりに励ましたいと思った。


「友達は最初からできるものじゃないし、交友を深めてなるものだよ」

「それじゃ、あたしには難しそう……」

「でもね、本気で挑戦する目標があったりするなら、自然と仲良くなったりするものでもあるんだ」

「本気で挑戦する目標って」

「今なら、一緒に作曲、作詞を頑張ること」

「あっ……」


 その言葉にハッとする彼女。

 そこまで来たならば、もう大丈夫なはずだ。


「大丈夫、私も作曲に協力するし、アイも色々手伝ってくれる。だって友達だから」

「友達……いいの? 本当に?」

「ま、まぁ、同世代かって言われたらちょっと不安ではあるけど……」


 私も私なりに懸念点をぶつける。

 すると、その言葉を聞いて、シャンテは面白そうに笑っていた。


「気にしない、気にしないって、そういうこと! だって一緒にいて楽しいならそれでいいって感じに言ってたのは未来でしょ?」

「それは、そうだけど」

「大丈夫。どんな気持ちでいたとしても、友達だって心から言ってくれた未来の気持ちはしっかり受け止めたからっ!」

「それならよかった」


 私も私で変なところで考えすぎになったりするのはやめた方がいいのかもしれない。

 そう考えながら微笑んでみた。


「一緒に頑張ろっか、作曲と作詞」

「憧れじゃなくて、挑戦に変えていこうね」

「うん」


 一致団結。

 仲良くなって、作りたいものをはっきりさせれば、きっと素敵な音楽にできるはず。

 いまは前向きに挑戦することを意識していきたい。


「おはようございます、みなさん。……あら? なんだか、雰囲気が変わりましたね?」

「どういうこと?」

「昨日に増して友人関係っぽくなったということです」

「嬉しいかも。……あっ」


 ふとした時、シャンテのお腹の音が鳴った。

 私も食べてなかったけれども、彼女も朝食を食べてなかったみたいだ。


「ふふっ、みなさんで美味しいパンでも食べましょうか。わたしもお手伝いしますよ」

「私も作るよ。ちょっとした卵のトーストとか作る」

「そ、それぞれ作ったもので味を楽しみ合うっていうのはどうかな!」

「それは名案です、是非楽しみながら作りましょう」


 日常の音がまた奏でられて、新しい日々に繋がっていく。

 こういう時間も悪くないと心から思えた。

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