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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第二章 音が刻む旋律、心に響く物語
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第24話 彼女の条件

 上機嫌なカランドは条件を受け入れるなら、音楽を作成してもいいと言葉にした。

 しかし、彼女が口にした条件を承諾するのは私だけでは難しい問題でもあった。

 公園のベンチで魔法端末で色々相談するべきだろう。

 そう思い、私は『みらい・アイゼン』の製作者の責任者側にも立っている陽空かなたに連絡を送っていた。


「ボクの提案が不服なら別に諦めていいけど?」

「不服っていうわけではないけど、こればっかりは許可取らないと何とも言えないことだから……」


 一つ目の条件。

 それは、自分は『オープニングを担当しない』ということだった。

 厳密に言うと、『オープニングは自分の最近卒業した弟子にやらせたい』というものだ。

 『ひとみ・アイゼン』から続くシリーズなのもあって、オープニングの担当は同じ人にしておきたいという考えも、もしかしたらあるかもしれない。そのことを考えると私だけだとなかなか許可するのは難しいと思ったのだ。とりあえず、連絡を送り既読を待つ。


「ちょっと意外です」


 私が連絡待ちをしている間、アイはカランドと会話していた。


「なにが?」

「いえ、音楽家としての名声とかそういうので、再びオープニングをやるのは嬉しいっていうものかと思って」

「ふふふ、名声も大切だけど、ボクはそれ以上に重視しているものがあるんだよ」


 びしっと指を向けながら、カランドがしみじみと語る。


「独創性だよ」

「独創性……ですか?」

「うん、仮にボクが今回のオープニングを作ったとして、万民受けはするとは思うよ? そういう曲作るのは得意だからね。でも、それだけだと足りない気がするんだ」

「見慣れた景色を見つめることによる安心感とは違う、別の世界を見せたいといったところでしょうか」

「よくわかってるじゃないか! そう、ボクが創る音楽は結局のところ、ボクの音楽になってしまう。だから、あえてそこに変化球を飛ばしたいと思うのさ。ボクとは違う作曲者の音楽によって彩られる『みらい・アイゼン』のオープニング。実に面白いと思わないかい?」

「少なくとも、話題を引き出すことはできそうですね」


 ふたりの会話を耳にしながら、既読確認が付いたことを目にする。

 その後、少しして返信が届いた。


『わかりました』

『かがみさんを連れて、すぐそちらに向かいます』

『直接お話をした上で、考えます』


 それらに対して、了解の言葉を伝えて、カランドにも報告する。


「責任者と連絡着いたから、もう少し待ってて」

「うーん、待つのはあまり得意じゃないんだけどなぁ」

「すぐって言ってるから、すぐ来るとは思うけど……」


 それでも数十分ほどは待たせてしまうかもしれない。

 そう思いながら、周囲を見渡した時だった。

 公園の隅で突如、魔方陣が展開されて、そこからかがみとかなたが現れた。


「待たせるのもよくないと思いましたので、すぐに来ました。カランドさん、お変わりないですか?」

「んー、まぁ、上々だよ。作曲のモチベーションも高め。そっちにいるかがみも元気? なんか疲れてそうだけど」

「ひ、引っ張られてきたからな……うん、なかなか、視界がぐるぐるする」

「そっかそっか、悪いね」


 彼女たちも初対面というわけではない。

 『ひとみ・アイゼン』の時に会っているし、それ以外の時にも色々協力しているかもしれない。

 やってきて早速、ふたりは疑問をぶつけてきた。


「音楽の協力をする予定はある、ということでいいのですか?」

「それはもちろん。作中の音楽とかもそれなりに楽曲提供できると思うよ?」

「歌の方はどうなんだ? 今でも問題なく歌えるのか?」

「病気してるわけじゃないし問題ないよ? いい音楽はいつでも作れる」

「では……オープニングは担当しないのですか」


 真剣な眼差しでそう言葉にする彼女。

 シリーズ物の続編というのもあって、慎重になっている部分も強いのだろう。

 そんな彼女に対して、少し真面目な表情になりながら、カランドは答える。


「あんまりオープニングを歌おうって気にはならないかな」

「……理由を聞いても?」

「そうだね、あえて理由を付けるとしたら変化が欲しいからかな」

「変化、ですか?」

「そう、ボクはね、変化が面白いと思ってるからね」


 不敵に私の方を見つめながら、彼女が言葉にする。


「最近ボクが花吹雪町にやってきたのも、それが理由だったりするよ」

「レガとクミの劇場に、未来が関与したとかか……?」

「大正解。それに、隣に新しいパートナーさんがいたっていうのも興味深くてね。色々見てみたくなったんだ」

「あら、わたしのことも評価対象だったのですね?」

「うんうん! だって、未来がこういう明るい表情を見せてるの久しぶりだったからね。まぁ、ボクと未来の関わりはアニメの音楽のフル聞かせたりした時くらいだけど……」

「当時より、元気っぽかったと」

「舞台で派手に挨拶してたじゃん? あれ、いいなぁって思って、そういうのにインスピレーションを感じたボクは考えたのさ。『ボクがオープニングを創らないことで新しい刺激を用意しよう』ってね」


 そうはきはきと言葉にする彼女は本心を口にしているのが伺える。

 変化。確かに、私は最近の事件や出来事を通じて変わっている。それを音楽に取り入れようということか。


「なるほど、理由は把握しました。カランドさんが真剣に考えているのもわかりました」

「どうする? 条件は飲む?」

「……担当しないのはあくまでオープニングだけ、ですよね?」

「そうだね、条件通りいくならそうなるね。……あっ、エンディングはやらせようと?」

「見る方々の中にはカランドさんの歌を求めている人だっているはずです。その方へのサービスくらいはした方がいいのでは?」


 強かにそう言葉にする彼女。

 引けない部分があるといったところだろう。


「なるほどね……まぁ、ファンサは大切だし、繋がりはないと怖いよね。それの話は乗った!」

「では、オープニングは別の方が行うという形で」

「担当するのは、ボクの推薦した魔法少女でいいよね?」

「構いません。しかし、実力が気になります」

「実力はあると思うよ? まぁ、テストはする予定だけど」

「テスト?」

「しっかり『みらい・アイゼン』のオープニングに相応しいかは審査するってこと。ボクたちでね!」


 そういってかなた、かがみ、自身に指を向けるカランド。

 私とアイはなぜか省かれていた。


「あれ、私たちは審査しないの?」

「アイも審査員側に入れていいかなとは悩んだけど、パートナーとしてアシストしてほしいからそっちにした! 残念ながら未来は審査される側なのだ!」

「どういうこと?」


 流れが読めず、首を傾げる。

 そんな私に対して、カランドは二つ目を表現する指をしながら、新たに条件を提示してきた。


「ボクが協力する二つ目の条件! それは『久遠未来が作詞を担当すること』だよ! これは確定でやってほしいね!」

「えっ、私が作詞?」


 まさか私も音楽を作ることになるとは。

 急に提示された条件に私自身驚く。


「このふたつの条件がクリアされない限り、私は『みらい・アイゼン』で音楽の手伝いはしないよ! さぁ、どうする?」

「未来さん……!」

「未来っ」

「ふふっ、期待の目が向けられてますね。未来」

「……そうだね」


 条件を呑まない場合、アニメーションの制作は難航する可能性が高いだろう。

 カランドの手を借りられないとなると、色々な問題が起こることも考えられる。

 乗せられているようにも思える。それでも、前を向くなら一歩進むべきだ。


「いいよ、作詞、やってみる」

「そう来なくっちゃ!」

「ありがとうございますっ」

「楽しみだな、未来の作詞!」


 これでふたつの条件がクリアされることになる。

 当然、宿題として作詞することになったけれども、私なりになんとかするしかない。


「よしよし、これで条件達成だね! ……まぁ、審査とかするから油断大敵なんだろうけどね!」

「ところで、カランドさん。推薦した魔法少女の方とはどんな方でしょうか?」

「ん? あぁ、伝えないとね」


 そう言って彼女は新しくメモ帳を取り出し、素早く魔法少女の情報を書きだした。


「魔法少女シャンテ・ソノ―ル。ボクみたいに作曲が得意だけど、そこまでまだ有名にはなっていない。青いセミロングの髪で、目の色は紫。ちょっとダウナーっぽい。こんな感じの子!」

「なるほど、そのシャンテって子に会いにいけばいいのかな?」

「そういうこと。まぁ、最初はボクもついていくから安心して! きっちり話してやらせる気にするから!」


 そう言って笑顔になるカランド。

 シャンテという魔法少女の協力を得る。そして作詞も行う。

 挑戦することが多くてうまく行くかがわからない。

 それでも、頑張っていくべきだろう。それぞれの歩幅で。


「未来、わたしも協力しますよ」

「ありがとう、助かるよ」


 ひとりで抱え込まないで行動すればきっとうまく行く。そう信じながら、また新しい一歩を踏み出す。

 新しいオープニングを求めて。

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