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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第二章 音が刻む旋律、心に響く物語
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第23話 流浪の音楽家を探して

 かがみにカランド・カンタービレを探すことを依頼され、私とアイは花吹雪町を調査することになった。

 ちなみに今回は私もアイも私服の状態だ。


「未来、せっかくなので魔法少女としての恰好のまま行動してもよかったのでは?」

「今はするつもりはないよ」

「人の目が集まるからでしょうか」

「そういうこと」


 流石にネットでの反響というのはすさまじいもので、レガとクミの舞台で挨拶してた画像はもう広まっている。

 それもあって、魔法少女として活動するとそれだけ目立ってしまうことになる。


「目立つのは嫌ですか?」

「嫌っていうわけではないけど……私が目立ちすぎると帰って探してる相手が雲隠れしちゃいそうだなぁって思って」

「気難しい方だったら大変ですからねぇ」

「まぁ、だから今は地道に調査していく感じにする予定。見た目の手がかりはあるんだよね」

「はい、こちらに目撃された画像はあります」


 魔法端末に転送された画像を確認する。

 そこに写っているカランドの姿は十年前に会った彼女の姿そのままだった。

 銀髪のショートボブ、そして青い目が印象的なやや大人びた女性といった印象も感じさせる見た目。

 音符の記号が付いたロングジャケットを纏っていてお洒落な印象を感じさせる。

 画像が撮られたのは数日前。自分でも見覚えがあるような容姿のままなことに驚いた。


「魔法少女は老けにくいって言うけど、ここまで同じだとびっくり」

「それ、未来が言える台詞ですか?」

「……まぁ、人のことを言える立場じゃないか」


 少し呆れた様子でそう言葉にするアイに対して、私もそういうものだと割り切る。

 なかなか印象的な見た目をしているのもあって、発見するのはそうそう難しくないだろう。


「変身後と変身前で髪の色が変わったりするタイプな方なのでしょうか?」

「それについては、かがみから情報があったよ。変身前も変身後も同じだって」

「わたしたちと同じですね」


 情報ふたつめ、と書かれたスクショには律儀にカランドの身体情報まで書いてあった。

 一応、彼女が公開しているものとはいえ、そこまで教えてくれるのはなんだかじわじわくる。


「まぁ、髪については私は魔力で前髪を調整してるけど」

「……正直、片目隠れって、前見えにくくないですか?」

「内側からは見えるように視覚情報として髪は見えないようにしてる」

「ちゃっかりしてますね」

「まぁね。まぁ、とにかく騒ぎを起こすのもよくないだろうし、地道に人探ししていこっか」

「わかりました、こっそりこちらも使い魔を飛ばしておきます」


 そういって彼女は半透明の使い魔を街の四方八方に飛ばしていった。

 それぞれの眼が捉えた情報をアイが調べていくことによって調査効率を上げるというわかりやすい作戦だ。


「じゃあ、私は魔力感知で探るね」

「十年前の少しだけあったような感じの方の魔力を覚えてるものですかね?」

「ううん、それはキツイと思う。だから、情報を元に調べていく」


 ここでも出てくるのがかがみが紹介してくれた魔法端末から得られる情報。

 カランドは気分によってはリクエスト楽曲を投稿するらしく、その為にちょっとした個人ブログのようなものを持っているらしい。

 ……そこに書かれているプロフィールの中に、魔力の色まで記載されていたのだ。


「情報からすると彼女の魔力の色は白みたい」

「魔力の色を探るのは、なんだかいかがわしい感じですね?」

「普段見えないものを見ようとするのにフェチズムを感じるとかそういうのを考えてるんだったら、アイの方こそいかがわしいと思うけど」

「あら? そこまでは言ってないのですが、深読みでもしましたか? 未来」

「……とにかく、探していこう。変なことは考えないように!」

「ふふっ、わかりました」


 マイペースなアイの雰囲気に流されそうになりながらも、各々のやり方でカランドを探すことにした。








 ……数時間後。お昼を過ぎて、おやつ時。

 私とアイは街の公園付近にあるクレープ屋に並んでいた。


「なかなか銀髪の方は見当たりませんねぇ」

「赤、青、黄色、緑……うーん、魔法少女の魔力反応は流石に多いけど、白は見つからない……」


 私のやり方は視界の魔力反応に頼っている部分もあるので、自分の目で見える範囲しか見えない。

 アイのやり方も見た目で探っているのにも関わらず、見つからない。雲隠れしてしまったのか。


「それにしても、なんで私たちはクレープ屋に並んでいるの?」

「あら、腹が減っては戦はできぬってやつですよ」

「武士ではないでしょうに……」

「単純な話、目が疲れました。そろそろ糖分でも補給しないとやる気が出ないので、さらっと並んでみました」

「長時間粘って、見つからないとなるとちょっとやり方変えたほうが良さそうだよね……うん、なら気分転換の案に乗る」

「そう言ってくれると思いました」


 笑顔でそう言葉にする彼女。

 少なくとも、このやり方だとなんだかよろしくなさそうな気がする。

 なにか別の方法を考えた方がいいか。

 列を並びながら、別の作戦を考える。


「いい手段はありますかね」

「魔力で探知されないようにしているのなら、興味のある話題で引き寄せるとかどうかな」

「興味のある話題?」

「例えば……音楽の好みを話し合って相手から来るのを誘導するとか」

「そういう手段でうまく行くものですかね?」

「まぁ、なにもしないよりはいいかなって話。せっかく休憩するんだから親交を深めるついでに音楽の好みでも聞いておきたいなぁって思って」

「ふふっ、それは名案ですね」


 クレープが注文できる位置になったので、ふたりでそれとなく注文する。

 私はチョコチップアイスのクレープを、アイはバナナチョコのクレープを注文した。

 公園のベンチで座り、クレープを味わっていく。


「こういう時はサクサクしたものが食べたくなるんだよね」

「ストレス発散ですか?」

「うーん、なんていえばいいのかな……ほどよい刺激がいいみたいな」

「なるほど、こちらは食べ応えがあるのが好みです」

「バナナは結構満足度高いよね」

「えぇ、おやつにも最適です」

「バナナがおやつかぁ、瞳も言ってた」

「ふふっ、未来のパートナーはみんなこってり食べたい派なんですよ」


 チョコレートの甘さとアイスの味わいがいい感じに気持ちをすっきりさせてくれる。

 雑談する感じの雰囲気にもなってきたし、音楽の話題を振ってみようか。


「そういえば、アイはどういう音楽が好き?」

「音楽の好みですか……そうですね……」


 自然な感じに会話として繋がっている。

 唐突な雰囲気はないと信じたい。

 少し悩んだアイが答える。


「アニソンとかも好きな部類なのですが、実はロックとか好きなんですよ」

「ロック? どういうところが好きなのか、教えてほしいな」


 思わず困惑の声をあげた。

 雰囲気的にはあまりそういった感じを受けないけれども、なんで好きなのか純粋に気になった。


「そうですねぇ、反抗的な感じがいいというべきですかね。我を貫く音楽として歌詞や音がかなり強く感じます。そういう……強い意志を持った存在というのが好きなもので、時々聞いたりしてます。未来と会う前とか、音楽のお店でそういう系の音楽を聴いてたりしたものです」

「……ちょっと予想外」


 すまし顔でロックを聴いたりしていたのだろうか。

 なかなか状況を想像すると面白い。


「でも、納得できる部分もあるんじゃないでしょうか」

「まぁね、意思とかについては正直アイらしいなって思う。自分の意思で運命とかそういうのを無視して『破滅の日』には私たちと協力した。人によってはそういう自分の意思で突き進む人をロックだって言うかもしれないよね」

「ふふっ、今度ロック音楽に挑戦してみましょうか?」

「ギャップが凄いことになりそうだけど、悪くないかも」


 彼女は自分の意思を貫く存在が好きだということがよくわかった。

 他人のことを知るきっかけになったのはとてもいいことだと思う。


「未来はアニソンが好きなんですよね?」

「厳密に言うと、アニソン以外も好みなものがあったりするよ。ポップ系音楽とか」

「近代っ子ですね」

「それについてはなんとも言えないけど……私が面白いなって思うのは、明るい歌詞について考えながら音楽を聴くこと」

「どういうことですか?」


 きょとんとした雰囲気で尋ねる彼女に私も答える。


「ポップ音楽で、明るい音楽のものって『夢』とか『翼』とか『未来』みたいに明るい言葉が多いんだけど、盛り上がる前のメロディでは『暗い』とか『涙』とか『雲』が多いって話」

「……随分ニッチなところを見てますね」

「音楽の物語性っていうのかな。そういうのを見るのが好きなんだよね。なんていうか、ひとつの道筋が繋がっていて、表現したいものが見えてくるみたいな」

「なるほど、どちらかといえば音楽の表現を見るみたいな感じなのですね」

「そうなるかな。とにかく、そういうすっきりしたメロディとか聞いてると満足して音楽を楽しめるんだ」

「別の着眼点にしてはなかなか興味深いですね……今度、歌詞の流れを見てみるのも面白そうです」

「おすすめするよ」


 音楽談義はなかなか盛り上がり、クレープを食べ終わるまで賑やかな雰囲気が続いていた。

 少しの時間が立ち、クレープの包み紙を纏めていた時、拍手の音が正面から聞こえてきた。

 ふと、顔を上げてその方向を見つめてみると、そこにいたのは銀髪で青い目をした魔法少女……カランドだった。


「いいねいいね、十年くらい見てなくても輝かしい雰囲気の未来! 音楽に関する興味関心! 久しぶりに活動的になってて正解だ!」

「カランド・カンタービレ!」

「ふふっ、フルネームで呼ばれるとなんだか嬉しいね。でも、気軽に呼んでくれていいよ、カランドって」

「……カランドさんは、身を隠していたのですか?」

「そうだねぇ、簡単に見つかっちゃうのはつまんないから、魔力も姿も少しの間変装してたんだ。でも、今日はもうそれはしない予定さ」


 上機嫌でそう話す彼女。

 まるで、新しい楽しみを見つけたかのような雰囲気だ。


「ふふっ、探していたんだろう? ボクを」

「そうだね。音楽の協力を頼みたかった」

「なるほど、なるほど、音楽の協力を……悪くないね。きっと『みらい・アイゼン』のことだろう?」

「そうですね、そちらのオープニングの協力をお願いしたいという流れです」

「わかりやすくていいね! ふふふ、どうしようかなぁ」


 少し悩んだのちに、彼女が言葉にする。


「無条件でもいいって言いたいところだけど……それだと創造性に欠けるから……うーん、あっ、そうだ!」


 閃いて、彼女が笑顔で微笑む。


「いくつか条件を呑んでくれたら、ボクが『みらい・アイゼン』の音楽の手伝いに入るっていうのはどうかな?」

「条件?」

「ふふん、それはね……」


 いくつかの条件を言葉にするカランド。

 彼女が口にした条件がどれくらいこの先に影響を与えるかは、今の私にはまだわからなかった。

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