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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第二章 音が刻む旋律、心に響く物語
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第22話 新たな日常のオープニング

 レガとクミの舞台を襲った魔物騒動は無事に解決し、魔物を操るような存在いない、穏やかな日々。

 私は家の机の前で、頭を悩ませていた。


「文章推敲とかそんなにやったことないから、不安なんだよね……」


 そうぼやくと、お茶を持ってきたアイが面白いといいたそうな表情で話しかけてきた。


「あら、未来は、文学少女ではないんですね」

「まぁ、詩とか書いてたりしたわけじゃないし」

「見てみたいですけどね、詩を書く未来」

「まさか」


 彼女がコップに用意したお茶は暖かい緑茶だ。

 ほどほどの苦みが頭をすっきりさせてくれる。


「魔法少女のSNSとかは見ないんですか?」

「プレッシャーを感じそうだから見てない」


 少なくとも盛り上がっているのは間違いないだろう。

 舞台で発表してすぐの反響は大盛り上がりだったし、少し時間が立った今でも楽しみにしている人はいるだろう。


「なるほど、それも賢い選択です」

「今は目の前のことに集中したいからね」


 調査を勧めながら書いたお話は纏めてある。提出済みでもある。

 しかし、新しく用意することになる話は別問題だ。

 いま私が着手しているものは前回のレガとクミとで解決した騒動についての物語だ。


「おふたりには許可は得たんですか?」

「むしろ本人役として参加したいってさ」

「凄い活動力ですね、流石です」

「宣伝にもなるし、楽しいからって言ってたよ。これについてもかなたには報告済み」

「事務作業もやってるんですか?」

「いや、流石にそこまで担当してないよ。相談したらあっちもオッケーを出してくれたって感じだから」

「ふむ、それならよかったです。過労で未来さんが倒れたらどうしようかと思ってましたので」

「……流石に自分の限界は把握してるよ?」


 現実の内容からそこまで逸れないことを意識して物語を纏めていく。

 一区切りがついたのを確認して、再びお茶を味わう。

 少し冷めていたとしても緑茶は美味しい。


「休憩するなら、甘いものでも用意しましょうか」

「そうだね、軽くチョコレートでも食べたいかも」

「わかりました、用意します」


 そう言葉にしてささっと棚からチョコレートを用意する彼女。

 板系のシンプルなものだ。用意周到なのは彼女が比較的娯楽などが好きだからかもしれない。


「ミルクチョコでいいですか?」

「そこそこ好きな味だね。ありがと」

「ではこちらはビターチョコを」


 甘い味わいを堪能しながら、魔法端末に手を伸ばす。


「なにか見るのですか?」

「ううん、音楽を聴きたかっただけ」


 音楽アプリを開いて、いつものように音楽を流す。

 再生する楽曲は『瞳の未来』だ。いつも気持ちを上げたい時に聞いている。


「なるほど、その曲でしたか」

「アイはどれくらい知ってるの?」

「そうですねぇ、フレーズが頭で流せるくらいといったところでしょうか」

「結構聞きこんでるね」

「未来に会うまでは、暇なときに聞いていたもので」

「意外……」

「ふふっ、こうしてパートナーになれたのも意外でしたけどね」

「それはお互い様」


 『瞳の未来』はかなりストレートな歌詞、そして正統派なキラキラした雰囲気がある、魔法少女らしい特徴が強い曲となっている。

 この曲が完成したのち、歌詞について語っていた瞳の姿は今でもよく覚えている。

 確か、最終決戦の数日前に完成した曲だった。


「昔懐かしむ表情になってますね」

「まぁ、色々思い出深い曲だからね」


 当時のことを思い出すと同時に、アニメで活躍しているような眩しい魔法少女のことも想起させられる。

 多くの感情が浮かび上がってくるのもあって、自分を動かすいいきっかけになるのだ。


「そうだ」


 ふと、机の引き出しの中にしまってあったものを取り出す。


「それは?」

「歌詞カード。せっかくだから、1番の歌詞とか見つめてみるのも楽しいかも」

「それは……なかなかいい提案ですね」


 そう笑顔で答えながら、彼女は歌詞カードを見つめる。

 同時に私も久しぶりに1番の歌詞を見つめることにした。



【瞳の未来】


『朝焼けの彼方に 願い重ねて 今はただ夢を見るの』

『「幸せ」を探して 君と歩む世界』


『知らないモノ見つけて 笑顔になった』

『新しい景色見えたら また歩き出そう』


『世界 空 見渡せば キラキラ 瞳 輝いて』

『どんな瞬間も 大切でぎゅっと抱きしめた』


『想い願ったストーリーは きっと未来に届くから』

『ほら、進もう 希望の明日へ』


 歌詞カードを見つめると、アニメーションの映像が頭を過る。

 私が好きなところはサビの最後の『想い願ったストーリーは』あたりの部分のそっと手を繋ぐみらいとひとみのふたりの姿だ。

 私よりもかなりキラキラした魔法少女っぽい雰囲気になっているみらいは特に好印象だ。


「なるほど、こんな感じの歌詞になってたんですね」


 しみじみと頷くアイ。

 なかなか好印象という様子は見て取れた。


「アイが好きな感じのフレーズはあった?」

「そうですねぇ……」


 少し考えて、彼女が答える。


「どんな瞬間も大切という言葉が歌詞として気に入りました」

「理由は?」

「瞬間というものは文字通り一瞬で過ぎ去っていくものですが、目に焼き付いた風景、景色、思い出というものは心に残るものです。そういうのを歌詞としてぶつけてきたんじゃないかなと思いますから」

「……なんだか、懐かしい気持ちになる回答だね」

「あら、前に未来と会った時に語ってましたか?」

「ううん、それもあるけど、もうひとつ繋がりがあってね……」


 少し考えて、思い出す。

 度々敵対していた時のアイもそうした言葉を話していた。

 そして曲が完成して、音楽を聞かせてきたときの瞳も……


「そう、瞳が同じようなこと言ってたんだ」

「瞳さんが? それは意外です」

「何回も同じ個所を聞かせながら、言葉にしてたんだよね。……『どんな瞬間も、かけがえのない思い出で、ずっと心に残ってる。そういうのを歌詞としてぶつけたんじゃないかな!』って」

「なかなか面白い偶然ですね?」

「うん、それは感じてた」


 瞳とアイは当然同じ人物ではない。

 そもそも前々は敵対していたし、こうして一緒に生活するようになったのは最近だ。

 だからこそ、なかなか不思議な体験だ。


「そういえば、この歌詞には未来は関わってたんですか?」

「え? 私は関わってないけど……」

「では、瞳さんは?」

「なんとも言ってなかったかな」

「そうですか……歌詞カードに書いてあればいいのですが」


 そういって歌詞カードの作詞を見つめるアイ。

 そこには知らない人の名前が映っていた。


「作曲者は……カランド・カンタービレ? どなたでしょうか」

「カランドは魔法少女の中でも、ちょっと変わり者な音楽家だよ」

「へぇ、変わり者というと?」

「自分が興味を持った相手にしか音楽を提供しないみたいな人で、芸術家みたいなところが強い」

「なかなか探すのが大変そうな方ですね?」

「……まさか、探そうとしてた?」

「えぇ、まぁ、気になってたので。少し家の近くにいないか使い魔の眼を飛ばしてました」

「ちゃっかりしてる……」


 ぼんやりと確認しながら、アイが調べていると、ふと何かに気が付いた表情になった。


「未来、お客さんですよ」

「相手が家にアクション起こす前に気が付けるのは凄い」

「ふふふ、セキュリティは完璧ですね?」

「で、誰が来たか知りたいな」

「かがみさんですよ」


 月灯かがみ。『みらい・アイゼン』でもみらい役を演じる魔法少女だ。

 そんな彼女がやってきたということはなにかあるのだろうか。


「……進捗を聞かれたりしないかな」

「未来さん、もしできてなかったら自首するべきですよ?」

「いやいや、できてるからね? それなりにだけど」

「それにしては目が泳いでますね?」

「……結構不安だからね、これでも」


 しかし、ここで討論していても始まらないだろう。

 そう思いながら、家の扉まで移動する。

 もし、原稿のことで指摘されたならば、より練っていこう。緊張しながらも、扉を開ける。

 そこには、爽やかな雰囲気なかがみがいた。


「進捗どうですかー!」


 原稿を追い求める編集者みたいな雰囲気の声でそう言葉にする彼女。

 なんていうか、無言の圧力を感じる。


「はっきり言うと推敲作業がうまくいってないかも。後々確認してほしいかな」

「な、なるほど……」


 なぜか正直に伝えたら、静かに頷かれてしまった。

 そんな状況を見て、アイは後ろで微笑んでいた。


「こういうのは『完璧です!』とか『全然ダメ!』って言ったりして反応すると理想的だったかもしれませんね?」

「……そうそう! そういう反応だったら、演劇チックで返せた! いや、未来がまさかしっかり返答してくれるとは思わなくってあたしは悩んだよ」

「……急にやってきたら、真剣な意味で捉えるよ、私なら」

「なるほど、真面目だよね、未来は」

「えぇ、本当に」


 共感しあうふたり。

 この様子から察するに、どうやら原稿側で不備があったとかそういうわけではなさそうだ。

 となると、別の用事か。


「なにかアニメ関連で進展があったの? かがみ」

「そうだな……あるけどいまのところないっていうのが現状かもしれないな!」

「回りくどい状況ですね?」

「まぁ、これを見てくれたらわかるさ」


 そういってかがみは魔力端末である画面を表示させた。

 そこには『流浪の音楽家、カランド・カンタービレが花吹雪町に現れた!』という見出しがあった。


「カランド・カンタービレって、『ひとみ・アイゼン』のオープニングを作った方ですよね?」

「そう、その彼女が花吹雪町に出没したという噂がある」

「噂、ですか?」

「そうだ、噂なんだ。彼女、ひとつのところに留まるのが嫌いで、あたしたちにも情報を寄こさないんだ」


 カランドのことは呼び捨てにしているけれども、私もじつは詳しくはよく知らない。

 音楽を作るって言った時にささっと作って、オープニングを仕上げて満足そうに帰っていった印象が強い。


「でも、このタイミングでやってきてるということは意味がありそうだよね」

「あたしもそう思ってる。例えば、未来に会いたいとかな」

「なるほど……要件はわかった。つまり、カランドを探してほしいということだよね?」

「そうなる! で、オープニングとエンディングの相談をしてほしい!」

「まぁ、カランドが手掛けてたから、そっちを任せたいという気持ちはわかるよ。うん、わかった。探してみる」

「ありがとう、ふたりとも、手がかりは少しはこちらで見つけたから探してほしい!」

「ふふ、まるで迷子探しですねっ」

「そうかな……?」


 アニメーションの協力者として動く日々。

 明るい日の光が感じられる時間は、不思議とアニメのオープニングのような情景だなと思えた。

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