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魔法少女の瞳に映る未来  作者: 宿木ミル
第一章 舞台が幕を開ける時、魔法少女は新しい世界を見る
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第20話 久遠の先の未来へ

 レガとクミの舞台が終わりを迎え、拍手の中で舞台挨拶が行われていく。

 途中、魔物騒動の現況の男性、イヴィルの介入はあったものの、観客の負傷者が出ることがなかったのはほっとした。

 舞台裏。軽い治癒魔法で身体の傷を癒しているところに、アイが話しかけてきた。

 舞台を閉じる為の挨拶を外で行っている間に、私たちは休息の時間をもらっていたのだ。


「なかなかボロボロですね?」

「攻撃を引き受けてたところも多かったからね」

「被害者を出さない為にそうしていたんですよね」

「そんなところ。怪我人が出なくて本当によかった」


 治癒を施してもヒリヒリする部分がある。

 これについては自然回復で我慢するしかない。

 一部の魔法少女の衣装のコスチュームも焼けてしまっているが、これについては魔力が回復すれば修復可能だ。心配ない。


「それにしても……自分のことを労わってあげるべきではないですかね? 未来さんは」

「魔法少女として、やれることをしたまでだよ」

「そういうところです。不安でしたよ、わたしは」

「心配してくれるんだ」

「当然です、パートナーなので」


 そう言葉にする彼女は優しく微笑む。

 無理をしている私に対して、しっかりと見つめようとしてくれている。

 それは素直にありがたいことだと思った。


「未来さん、大丈夫!?」

「衣装ボロボロ……なかなか、ショッキング」


 舞台挨拶を終えたレガとクミのふたりが次に駆け寄ってきた。

 見るからに心配そうな表情をしている。


「怪我はちょっとヒリヒリするだけだから大丈夫。衣装は……まぁ、修復できるよ。問題ない」

「よかったぁ、結構ダメージを受けてたから、気になって気になって……」

「レガはずっと舞台挨拶中もそわそわしてた」

「心配になるよ、あんなレーザー浴びてたら!」

「みんなに心配かけちゃったね。気にかけてくれて、ありがとう」


 そう言葉にして、頭を下げる。

 無事に事態を収束させることを考えてたから、自分のことを後回しにしていたけれど、ここまで考えてくれる人が多いというのは嬉しい気持ちにさせてくれる。

 おおよそ治癒が完了したタイミングで、ふと疑問に思ったことを口にしてみた。


「レガ、そういえばなんだけど」

「ん? なになに? なんでも答えるよ?」

「……いつ頃、私が『愛染未来』だということに気が付いたの?」


 観客の明るい応援の声によって魔力を高め、負の感情である魔物の力に打ち勝つことができたのは事実。

 しかし、その応援の起点になったのは『手品』を使ったこと……つまり、私の正体を打ち明けたことがきっかけになる。

 それを行うことができるのは、当然、私が愛染未来であることを確信しないとできないことだろう。だからこそ、気になったのだ。

 私の問いかけに対して、レガは少し悩んだ仕草を見せたのち、しっかり答えてくれた。


「実は色々思い浮かんだタイミングはあったけど、ぶっちゃけると直感だったり……」

「そ、そうなの?」


 はっきりとした理由が出てくるかと思ったから、意外だった。

 そんな私を見て、笑いながらレガが続ける。


「オーラっていうのかな。最初はアニメで見た技とか使ってたから、ファンなのかなぁとか思ってたんだけど、そういうのじゃなくて……目の輝きが眩しかったみたいな、そんな感じ」

「最初に会った時からレガはひっそりとふたりの時に言ってましたね、未来さんはかっこいい目をしてると」

「そうそう! なんて言えばいいのかな……優しくて、ちょっと鋭いけど、でも守ってくれるみたいな感じの目で……アニメで見たあの『みらい』みたいだなぁって思ってた!」

「そうだったんだ……」


 アニメに登場する私は、『みらい』であって、厳密に言うと私ではない。とはいえ、その姿に似ているというのはそれだけ魂が込められているということだろう。

 ふと、私を演じてくれた月灯かがみとの会話を思い出した。

 彼女が演じた『みらい』が、今の私の『未来』を導いてくれたと考えると、なんだか素敵だ。


「でね、魔物と戦ってる時の未来さんを見て、確信に変わったんだ! あの魔法少女は『愛染未来』そのひとなんだって! 憧れてた魔法少女そのものだったって!」

「だから、心の支えになるように、みんなに伝えた。とっておきの手品として」

「……ありがとう」


 ふたりでそう言葉を繋げる。

 憧れとして見られているという事実は、嬉しく思う。

 今の私は瞳に誇れる自分だろうか。そんなことをぼんやり考える。

 きっと私からは打ち明けることはなかっただろう。応援されるという状況になることも考えてなかった。

 けれども、ふたりの『手品』によって今でも支えにしてくれている人がいることがわかった。

 それは、とても嬉しい発見だった。


「そ、そのね? あと、結構ボロボロな未来さんに伝えるのもあれかなーって思ったんだけど……」

「どうしたの?」


 伝えようか伝えまいか悩んでいる様子のクミ。

 それに対して、私は首を傾げて尋ねてみる。

 そうすると少し悩んだのち、彼女が言葉を繋げた。


「観客のみんなのボルテージが上がっちゃってね、その……今日のもうひとりの主役だった未来さんの姿が見たいって声がいっぱいになっちゃった」

「無理ならいいとは言ってる人もいるけど……もう一度、声が聴きたいって観客が多くて」

「お願い、もう一度だけ一緒に舞台に上がってくれないかな!」


 切実な願いを言葉にする彼女。

 期待には応えたいという気持ちが強いのだろう。

 ……期待しているのにそれを裏切るのは私だって避けたいところだ。

 だから。


「いいよ、舞台のカーテンコールはやっぱり、みんな揃ってないとだからね」


 私は笑顔で頷いた。

 愛染未来として、人の前に立つ。それも素敵なことだろう。


「ありがとう、未来さん!」

「今度なにか奢るかも。期待してほしいな」

「こちらこそ、色々ありがとね」


 彼女たちのお陰で向き合えたこともある。

 そう考えると、今回の出来事は私自身の大きな成長に繋がったと思える。


「そうそう、アイさんにも出てもらいたいな!」

「あら、舞台裏で色々してただけですよ?」

「舞台を支えてくれるアシスタントの活躍も忘れてもらっては困るからね。影から支えてくれた存在としてしっかり姿を見せてほしいんだ」

「そうですね……拍手を浴びるのは悪くないかもしれませんし、舞台に上がりましょうか」

「ありがとうっ!」


 お礼を言うレガ。

 それに対して、構わないという態度で穏やかな姿を見せるアイ。

 そんな微笑ましい様子を見ながら、私は魔力で魔法少女の服の修繕を行う。

 かなりの魔力をさっきの戦いで使っていたけれど、服を元に戻すくらいの余力はある。


「これでよしっと」


 綺麗に整った衣装を確認して、身だしなみを整える。

 問題ない、人前に出ても恥ずかしくないだろう。


「それじゃあ、カーテンコールをしに行こう!」

「着いてきて」


 ふたりに案内される形で、舞台に上がる私とアイ。

 舞台を見ている観客の姿は大勢。戦いの時に安全の為に避難していた観客も戻ってきているみたいだ。

 きっとこれは私を見に来ているという人だけではない。今日の舞台の終わりを無事に見届けたいという人もいっぱいいるはずだ。


「皆さんに紹介します!」


 大きく大胆にスポットライトを当てて私とその隣のアイに光が集まる。


「今日特別のスペシャルゲスト愛染未来さん! そして、舞台を影から支えてくれたオルクス・アイさん!」


 大きな拍手が上がる。その中で歓声も聞こえてくる。

 凄い迫力だ。どうやって言葉を紡げばいいか、一瞬わからなくなるくらい。

 そんな私を見つめてか、アイは先にマイクを受け取り、話し始めていた。


「どうも、みなさん。わたしはオルクス・アイと申します。今の未来さんのパートナーになっています」


 その言葉にざわつく会場。

 それに対して気にしない様子で言葉を繋げる。


「本日は舞台の証明などのお手伝いをしていました、近況では……未来さんを支えてましたね」


 そう言いながら、微笑む彼女。


「美味しいものを食べたり、一緒に事件を追いかけたり。そんな様々な日常を繰り返しながらも、本日を迎えました」


 しみじみと語りながらも、アイは続ける。

 伝えたいことをはっきり言葉にするように。


「活躍するヒロインの影には日常があり、支えてくれる人がいます。そんな支えとして貢献できるようわたしは行動しました。本日の舞台、ありがとうございました」


 頭を下げる彼女。

 そこに響く大量の拍手。

 アイも舞台の一員として受け入れられている。その意味合いを強く感じる拍手だった。


「アイさん、ありがとうございました! じゃあ、次は未来さん! なにか挨拶をお願いしますっ!」


 レガの手からマイクが手渡される。

 正直なところ、いい言葉が思い浮かびそうにない。

 昔の私として会話するべきか、それとも今の私として話すべきか。

 どうするべきなのだろうか。

 悩んでいると、アイから小さな声でアドバイスが届いた。


「伝えたいことを伝えればいいんです。心の底から思ったことを言葉にすれば、それは大切な一言になりますから」


 伝えたいことを言う。

 シンプルだけれども、重要なことだ。

 ……難しく考えなくていい。

 今の私が、伝えたいことを言葉にすればいいんだ。

 決意が固まり、マイクを手に取る。そして、言葉を発する。


「こんにちは。私は未来。愛染未来、その本人だよ。まぁ、今は久遠未来って名乗ってるけど……」


 こういう表舞台で話したことがないのもあって、どう言葉を繋げればいいかはわからない。

 だけど、思いつくまま、私の伝えたいことを伝えていく。


「今日、みんなの声援が聞こえてきて、嬉しかったんだ。最近、表舞台に立って活動してたわけでもないし、アニメでも私自身が登場しているわけでもなかったから……『愛染未来』っていう存在がここまで大きいものだったなんて、自分でもわからなかった」


 小さく息を吸い込んで、言葉にする。

 私の意思で、伝えたいことを。


「瞳がいなくなってから、私は悩み続けてたんだ。目標もなく存在している魔法少女にどれくらいの価値があるか、私は魔法少女としてうまくできているのかみたいな、色んなこと。でも……」


 まっすぐ、ひとりひとりの目を見つめる。

 それぞれの心に届くように、私の言葉を繋げる。


「でも、もう悩まなくっていいって思えた! 私の姿を見て笑顔になってくれる人がいる! そして、私自身、日常を生きていて楽しいって思えるようになったから!」


 それぞれの魔法少女との出会いを思い出す。

 愛染瞳に会って、私は生きることを知った。

 アニメで『私』を演じてくれた月灯かがみは、多くの人々と『未来』の繋がりをくれた。

 陽空かなたが制作を決意したアニメーションが私に思い出の暖かさをいつでも思い出させてくれる。

 長い年月の中で出会った魔法少女との出会いは私を今までつなぎとめてくれていた。

 オルクス・アイとの出会いだって、私を変えた。些細な日常、少ない時間でもパートナーとして一緒に活動してくれていた彼女のお陰て、後ろ向きな私が変わっていった。

 舞台を作ってくれた花薄レガ、花椒クミのふたりも今の私と接して、優しい笑顔を向けてくれた。

 私は、もうひとりじゃない。


「久遠の先まで続く魔法少女の未来の道標になれるように、私はこれからも頑張るよ!」


 私の姿はあの時、10年前から変わらない。

 魔法で身体を構成しているという、通常とは異なる形の魔法少女だからそれは仕方のないことだ。

 でも、そんな私だって、きっと象徴として多くの魔法少女を導いていけるはずだ。

 明るい未来の為に、きっと。


 鳴り響く大きな歓声。

 舞台の魔法少女のみんなは笑顔を見せている。

 これで、私からの言葉は閉めようか。

 そう考え、ふと観客席を見つめる。

 そこには安心したような様子のかなたの姿があった。引き渡しが終わったのちに戻ってきたというところだろうか。

 ふと、かなたの姿を見て頭の中で思い浮かんだことがあった。

 終わりの挨拶の前に伝えておきたいことがあった。


「もう一つだけ、伝えたいことがあるんだ」


 そして、ひとつだけ付け加えて言葉にする。

 途端に静かになった会場は再び私の言葉で盛り上がる。

 かなたひとりだけが、驚いたような、安堵を浮かべたような表情をしていた。


「……以上! ありがとうございました!」


 拍手や歓声が鳴り響く。

 そしてマイクはレガとクミのふたりにパスされる。


「いやー最後に凄い情報聞いちゃったね! クミ!」

「うん、まさか……この舞台で聞くとはびっくり」

「さてさて、色んなビックリがあった、私たちの舞台! 本日はこれにて閉幕! 本当にみんな、最後まで付き合ってくれてありがとね!」

「また、機会があったら見に来てね」


 ふたりが笑顔でお辞儀をして、私とアイもそれに従って頭を下げる。

 舞台が終わったら日常が戻ってくる。

 けれども、その日常に楽しみの彩りをつけられたらいいな。

 最後にサプライズで言った言葉を自分の中で思い返しながら、そう考えていた。

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