二章二十八項 カレル
最下層まで降りてみると、クタイアの死体以外は何も見当たらなかった。
落ちている途中で、どこかに引っ掛かったのか? いや、そうだとしても位置がわかるはずだな……。
何らかの魔術によって、落下から生き延びたと思って間違いない。あの高さで落ちて、生き延びられるとはな。
はあ……。なかなか上手いこといかねえな。
こんなことに手を焼く意味もねえし。
どう転んでもアタシが負ける要素はほぼない。だからといって、放置するわけにもいかねえ。
問題は、何故アイツの位置が探知出来ないのかという点だな。
レデレールには、風を操るだけではない秘密があるのだろう。考えたところで、しょうがねえ。でも、もう殺されたくはない。
居心地の良いこの廃坑が、闖入者に穢されている。
アタシのするべきことは、アイツを殺して脱出を防ぐことだ。
アタシ達“レア”の活動を知られすぎている。レデレールは明らかに敵対的な組織に属している。
可能な限り障害は排除しておくべきだ。
何なんだよ……まったく。
いい案が思いつかねえ。
レデレールの今後の行動を予測するならば、目的は二つに一つだな。出口に向かうか、アタシの拠点に行くかだ。
出口はまだいい。クタイアを固めれば良い。問題は、拠点を探られること。あそこだけは不味い。
この体の主、ナシアがここについてどこまで嗅ぎつけていたかは不明だが、アタシの魔術の原理を知っていて、拠点があることを予測してないってのは無理がある。
レデレールのあの使命感に帯びた様子からも、気持ちが折れたとは考えにくい。まだ調査を続ける可能性は高いな。
やはり、私の拠点だ……。
これは不味いかも知れねえ。先に行かなければ……!
迷宮のような坑道の真っ暗な道だ。常人に簡単に見つけられるはずがねえ。
だが、あのオッサンを舐めるのは危険だ。
絶対に先にたどり着く。
気持ちが急く……。
ヤバい、ヤバいよ。
なんでのんびりしてしまったんだろう。直ぐに動くべきだった。
でも、もしレデレールと遭遇したら、どうすればいい……?
対策しなければ。
アタシは勝つ。どんな手を使ったとしても。




