表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/73

二章二十三項 レデレール


 なんてこと……!

 テドを追って、ペコが扉から飛び出した。


「ペコ、出てはいけない!」

「……大丈夫」


 ペコは静かに、しかし臆することなく廃墟となった家屋から離れた。

 そして、素早く倒れたテドに覆いかぶさる。


 攻撃されない……?

 驚くことに、クタイアはペコに襲いかかるどころか、注意を向ける素振りすらしなかった。

 姿が見えていないらしい。


 ペコは自分の鼻を指し、こちらへ口の動きで何かを伝えてこようとする。

 エー……、エーテル?

 どうやら、なにか秘密があるらしいわね。ペコはクタイアの一体を指した。


 そうか……!

 なるほど、そうか。

 見た目でもわかる通り、クタイアは目が潰れていて恐らく視力が弱い。あるいは視力は全く無い。

 つまり、視覚以外の感覚によって、空間や距離を把握している。それがペコが示したエーテルなのだ。

 エーテルの密度を感覚で捉えることによって、距離や物体を認識している可能性が高い。


 律導壁が働くうちは基本、人間はエーテルを体に持っていない。

 クタイアが見通しの良くない夜の闇の中でも、迷わず人間を狙い打ちできる理屈になるってわけね。


 あと少し、理解が早ければ……。誰のせいという訳でも無いかも知れないけど……テドが巻き込まれることもなかった。


 テドは微動だにしなくなってしまった。頭の重さが気管を圧し、口もとに力がなく、目がうっすらと開かれている。


 即死だった。

 クタイアの一撃によって、命をあっという間に失ってしまった。子供があの蹴りを受ければ、耐えられるはずがない。

 呼吸があれば私には分かる。もう息は完全に止まってしまっている。

 この私の目の前で巻き込まれるなど、一生の不覚だわ。本当に……申し訳ないことをしてしまった。


 クタイアは、テドの死体を見つけられずに戸惑っていたようだが、次の標的に切り替えた。 

 エゲンだ。

 私は魔術の使いすぎで律導壁が弱くなりつつある。ペコはなんらかの対策を編み出している。

 現状としてはエーテルに染まっていない人間……全く魔術を使えないエゲンが真っ先に狙われるわけね。


 あれだけクタイアの攻撃を食らっておきながら、まだ動けそうではあった。

 しかし、囲まれてしまったので、どこにも逃げ場はない。


 エゲンの顔つきには怒りと憎悪が見えた。

 誰に向けたものかはわからない。不甲斐ない自分か、数の暴力に訴えかけるクタイアか、どこかに忍んでいるであろう()()()へか。


 その我の強さは、認めたいわ。

 変わりさえすれば……もっと視野を広げることが出来れば、大きく飛躍出来る資質ではあるのかも知れない。

 そのチャンスは、まだある。


「待ちなさい! 相手はここにいるわよ。この世に迷う亡者達」


 言葉を発した私に、その場に居たクタイアは一斉に振り向いた。

 音は感知できるようね。それもそうか。声で仲間を呼べるんだものね。


 クタイアへの対策は理解した。


 少しばかりの賭けとなるけれど……。このレデレール、こんなところで止まるには早すぎるわ。

 エゲンの言うことを信じるならば、誰かがこの街にクタイアを放ったと思える。こんな魔獣が自然発生するとも思えない。

 首謀者が居るなら、絶対に倒すべき。


「エゲン。この襲撃の首謀者を、倒しに行く。子供を巻きこむような邪悪は、排除しなければならない。今こそあなたの力を示す時だわ」


 エゲンは神妙な顔で答えた。


「歩けるはずよ。信じなさい。反撃を始めるわ」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ