32/73
一章三十項 アルノ
勝ったのか……。
一応は、勝った。いや、勝ち負けとかはどうでもいい。なんとか、最悪の結末は回避された。
安心したい気持ちもあるが、正直、嫌な後味ではある。
何も得たわけじゃない。魔人の死体がいっこ増えたぐらいだろう。
マゼスは死んだ。彫像のように、立ったまま、枯れるように、項垂れるように。
最後に僕が本当の兄貴では無かったことに、気づいてしまったらしい。あるいは、本当はどこかの時点からずっとバレていたのか。
今となっては、知りようもない。
僕もどうやら不味そうだ。
「……だ、誰か」
エトルを助けてくれ。
声がもう出ない。彼女には、今すぐ止血が必要だ。
眼の前の光景がぼやける。
流石に、この死に方も怖いな。
まあ、いい。
僕にしては、結構頑張ってやったほうだ。
次のアルノが、きっと新しく頑張ってくれるだろう。
ふわりとした感覚が、身体を包み込んだ。
この星の重力に引かれ、大地の底へ落下するようだった。




