第3話「初めての成功」
森を抜け街に出た頃にはすっかり太陽は真上になっていた
1分1秒でも早くルシフェルを見つけなくてはならない
「絶対に大丈夫ルシフェルだって魔法が使える」自分に言い聞かせるかのように何回も何回も呟き一心不乱に探し回った
気づいたらもう太陽が沈み月が昇っていた
隅っこのお花屋さんにも大きな時計台の周りにもどこにもいない街から出たのだろうか森に帰ったのだろうかそれとももう……
最悪な事態を想像した時私は思い出した
昔教えてもらったとある魔法の存在を
その魔法は『リサール』
マーティン家代々伝わる魔法で何が起こるかは分からないという魔法だ
奇跡が起きるとも言われているし不幸に襲われるとも言われている今家にいる人で使える
のは父様だけだそんな魔法を私が使えるとも思わない
けれど出来る可能性があるなら1%でも賭けたい善は急げ私は急いで城に戻ろうと駆け出した
父様に何か小言を言われたような気がしたけれど構ってる暇もないから無視して部屋まで走ってきたあとが怖いな
お願いします!ルシフェルを助けたいの
あんだけ居るわけないとか思っていた神に頼んだ
『リサール』
何も起こらない
『リサール』
…もう1回
『リサール』
部屋が静寂に包まれたやっぱり何も起こらなかった
(あの兄弟ですら使えない魔法なんだから私なんかが使えるわけないよね)
分かっていたのに少しだけ凹む
ルシフェルを見つける作戦を立てるため一旦落ち着いて外の空気でも吸いに行こうと部屋から出た
扉を閉めた瞬間廊下に飾ってある花瓶が落ちた
片付けなきゃと思い近づくと花瓶は割れていなかった疲れているのだろうか
やっぱり少しだけ休んだ方がいいと部屋に戻ろうとすると次は階段の踊り場に飾ってある絵画が落っこちそうになっていた
これも近づくと何ともなかった
部屋に帰ろうとする度に皿の割れる音がしたり虫の大群が追いかけてきたり次から次へとへんてこりんな事が起こった
更に変なのがそのどれもが幻のように何もなかったことになる事だ皿を片付けようと手を伸ばすと皿は消え虫の大群に捕まったから炎魔法で焼き払ってやろうとしたら虫の大群が消えた
花瓶も絵画もそうだ誰かに幻覚魔法でもかけられたのかなと思いつつ変な出来事に巻き込まれながら歩いていくと父様の部屋まで来てしまった
こんな所にいると父様に怒られてしまう
怖くなった私はその場から離れようとした
すると父様の部屋から誰かの声が聞こえた
少しだけ…そう思い扉にこっそり耳を立てる
「父様天使は捕らえて地下の部屋に入れておきました」
ルシフェルは捕まっていたようだ
「捕まっている…けどこの城みたいよかった助けにいける」安心してぽろぽろと涙が出てきてしまった色々とあったせいか異常に疲れてしまったので部屋で休む事にした
「まさか明日いきなり平和の国パルツェ王国が襲われるとは誰も思わないよね♪楽しみだねみんなの絶望する顔♪」
「全く○○は…虐殺するのが目的じゃないんだからな僕らの目標は天使を捕らえる事なんだから」
「分かってるって!邪魔する人は容赦なく殺すだけだもーん♪魔法の天才の5人兄弟さんにも会えるといいな♪早く太陽昇ってこーい♪」
2人の少年少女が月夜の下で笑っていた