学ぶ事、教える事
5話目
リュウノスケは森で斬ってきた木を使って、集落の周りに柵を作っていた。
集落に住んでる人たちも、リュウノスケの柵作りを手伝っていた。
集落が襲われた時、大人たちは狩りに出かけていたようだ。
リュウノスケが襲ったと疑われそうになったが、とりあえず犯人ではないと分からせた。
拳で。
全員ボコボコにして、リュウノスケが群れのリーダーになった。
まさに、拳で語るだった。
まあ、言葉が無くても意思疎通をすること可能だった。
ジェスチャーで身振り手振りだけでも、わりと言いたいことは理解できた。
他の異世界でも似た出来事があったので、ここでも経験が役に立っていた。
この世界は言葉以外にも文明が遅れているのが理解できた。
とりあえず集落の安全確保のため、リーダーになったリュウノスケが指揮して、柵作りを開始したのだった。
「これで、いいでござるな。」
集落の周りに柵を建築した。
塀みたいな物を作りたいが、おそらくリュウノスケの呪いの期限までに完成しないだろう。
柵を飛び越えてくる可能性も考えて、掘りも作っておいたほうが安全だろう。
「あー、うー。」
助けた女の子がリュウノスケを呼びに来た。
どうやら食事ができたようだ。
黒髪の長い10歳くらいの女の子だった。
助けたことでリュウノスケに懐いていた。
食事はリュウノスケの狩ったサーベルタイガーを焼いた物だった。
「おー、らー。」
他の集落の人々(ひとびと)も、リュウノスケに感謝していた。
おそらく火打石を教えた事によるものだろう。
ここの文明は、まだ木を擦って火をおこしていた。
「うー、らー、やー。」
焼きたての肉が振舞われる。
リュウノスケは肉にかぶりついて食べる。
美味いが、もう少し塩味が欲しい。
近くに海があるようだし、塩を作るのもいいかも知れない。
塩作りも、別の異世界で学んだ知識だった。
「ふむ。」
人に知識を教えるのは楽しかった。
自分の今までの経験が無駄じゃないと実感した。
「彼女も同じ気持ちだったのでござろうか・・・」
1年前に出会った1歳年上の少女。
出会った頃は怒ってばかりだったけど、本当は優しくて世話好きな人だった。
一緒にいると互いに惹かれあっていった。
ツライ別れがあるとわかっていたのに、告白を受け入れてしまった。
恋人同士になった時は、日々(ひび)がとても楽しかった。
彼女は天才だったから、いろんな知識を教えてくれた。
自慢げな態度も、屈託ない笑顔も素敵だった。
だが・・・
「うー?」
助けた女の子が心配そうにリュウノスケの顔を覗き込んでいた。
いつの間にか考え込んでいたようだ。
「大丈夫でござるよ。」
心配かけないように、笑顔を見せるリュウノスケだった。
翌日、リュウノスケと子供たち数人と一緒に海へ。
大人たちには掘りを作らせているので、子供たちで食料になるものを取らなければならない。
砂浜に着いたリュウノスケたちは、まず拠点になる場所を作り何人か待機させる。
リュウノスケが周りを索敵するまでは、残りの子供たちは砂浜で貝を取らせておいた。
海岸の辺りには猛獣はいないようだ。
沖の方にいけば、サメみたいな大型の危険なやつがいるようだが、どうも彼らは水中に潜ることは、やらないようだ。
魚も川で石槍で刺して取っていた。
木の枝と蔦と骨で作った釣り竿で釣る方法を教えたので、子供たちは釣りで魚を取らせるとして・・・
念のため、海岸のほうに来ないように沖の危険そうなヤツを、狩るか追い払うかしようと考えてるリュウノスケ。
「水中戦と、いくでござるかな。」
リュウノスケは裸になり、海へと飛び込む。
危険な気配のする方向へ泳いで進む。
何度か海上に出て息継ぎして、かなり沖のほうにきた。
そこで・・・
「うおっ、デカいな。」
とてつもなく大きな竜のような生物だった。
恐竜に近い感じだ。
予想以上に大きかったので狩るのは、あきらめようかと思案したリュウノスケだったが・・・
「グオオオオー。」
リュウノスケが見つかってしまった。
海面まで逃げて、噛みつきを回避する。
空間から刀を出して、構えるリュウノスケ。
「短時間しか出来ないでござるが・・・」
リュウノスケは足を素早く動かし、なんと海面を走り出した。
沈む前に足を出して・・・・とかいう達人のアレだ。
スピードに乗せて海面に出てきた敵に斬りかかる。
「疾風斬。」
敵の竜もヤバイと感じたのだろう。
リュウノスケの斬撃が当たる前に素早く海中に深く潜り逃げていった。
「ふう、まあこれで海岸には近づかないでござろう。」
流石に水中戦だと分が悪い。
このころのリュウノスケは水を斬る事は出来るのだが、モーゼのように海を割ることは、まだできなかった。
リュウノスケは泳いで子供たちの所へ戻るのだった。
子供たちは教えた事を、よく理解してくれて思った以上に魚が取れた。
魚は干物にして、貝を夕食にすることにした。
それから20日くらい、リュウノスケが教えられる事を、できるだけ彼らに教えてあげた。
オオカミやサーベルタイガーなどは、問題なく狩れるだろう。
集落も柵と掘りで囲まれて守れている、さらに犬を番として飼うことにした。
大人たちは始め抵抗があったようだが、子供たちはすぐに受け入れて懐いていた。
今では犬も家族の一員のような感じだ。
「旅立つ前にマンモスを狩るでござるか。」
自分が狩ってみたいというのもあるが、彼らが狩れるようになれば、この辺りでの脅威は無くなるだろう。
作戦を立てて計画通りに戦わないと、彼らに危険が及ぶだろう。
仕込みや連携などの指示は、まず絵を描いて大まかな事を説明した。
絵で指示を出すアイデアは、以前彼女と博物館にデートで行った時に彼女が説明してくれた。
絵が変化して文字になったそうだ。
問題なく伝わったようだ。
彼女には感謝しかない、リュウノスケだった。
下準備と配置につかせて、リュウノスケはマンモスをおびき寄せるために、やつらの縄張りの所へ出かけた。
マンモスの群れを見つけた。
さて、普通にリュウノスケが攻撃したら全員逃げ出すだろう。
リュウノスケが勝つ上に相手に強さを知られて警戒されるだろう。
脅威が無くなるが、食料として狩れなくなるとマズイ。
とにかく気配を消して弱そうに見せかけつつ、マンモスの群れの強そうなヤツに見つかるように動く。
群れのボスらしいマンモスにだけ見つかる。
ギロリと睨まれる。
「ひい。」
わざと悲鳴を挙げて足を縺れるように逃げ出すリュウノスケ。
逃げながらマンモスの様子を窺う。
よし、マンモスのボスだけ追ってきた。
途中で追うのを辞めないように、武器をちらつかせながら、作戦の場所まで走る。
「追ってきてるでござるな。」
リュウノスケはマンモスに追いつかれそうなスピードで、わざと諦めないように追わせた。
そして、ある地点まで来るとリュウノスケは大きく跳躍する。
「今でござる!」
リュウノスケが合図を出す。
マンモスの前方の足元に、いくつも束ねた蔦がピーンと張った。
蔦に引っかかってマンモスが転倒する。
さらに、その先に作っておいた落とし穴にマンモスが落下した。
「ぐあおおおおおー。」
落とし穴の底には木で作った杭があり、マンモスに突き刺さる。
さらに集落の人たちが岩や槍をマンモスに投げつける。
リュウノスケの作戦は上手くいき、もう集落の人たちだけでマンモスを倒せるだろう。
作戦を考える事、下準備する事、連携する事、道具を使う事、工夫する事、マンモスを倒す事。
様々(さまざま)な事を集落の人たちに経験させる事ができた。
この経験がリュウノスケのいない後でも役に立つだろう。
「あとは・・・」
やはり他にも何頭かマンモスが追ってきたようだ。
今来られると集落の人たちが危険だ。
「邪魔はさせないでござるよ。」
リュウノスケは、こちらに来る複数のマンモスたちに本気の殺意の威嚇をする。
マンモスたちはリュウノスケの威嚇に驚き恐怖し、急いで反転して逃げ出した。
少しは怯えずに突っ込んで来るやつもいるかと思ったが、どうやら杞憂だったようだ。
何頭かは警戒されるだろうが、群れ全体に警戒されることは、ないだろう。
「うおおおー、むおおおおー。」
罠に掛かったマンモスを倒したのだろう、皆が雄たけびをあげていた。
もう大丈夫だろう。
翌日にはリーダーを集落の人間に譲り、準備をしたリュウノスケは別の異世界へと転移していった。
この後、ここの集落で発見された壁画や石像は、リュウノスケを模ったものが発見される。
学会では、宇宙人説と神様説で論争が繰り広げられているが、それはまた別の話である。
そして現在。
冒険者ギルドでリュウノスケが話しをしているところに戻る。
「・・・という感じでござる。さあ、勉強を再開・・・うおっ。」
いつの間にか、リュウノスケの話を聞いてたギャラリーが増えていた。
ざっと、10人以上はいるようだ。
酒を飲んでる冒険者や、掲示板を見ていた冒険者たちだろう。
「吟遊詩人の話より面白いよ。」
「他にも珍しい話は無いのか?」
と、みんな口々(くちぐち)に尋ねてくる。
リュウノスケは戸惑いながら答える。
「宇宙で海賊やったり、ファミレスでバイトしながら除霊の仕事したり、女子高で怪物と戦闘したりしたでござるが、今は勉強で仕事中だから、邪魔するなでござる!」
と言うわけで今度、時間ができた時に皆に話しをする事になった。
一応、話は考えていますが書くかどうかは、この作品の人気と作者のやる気の問題ですけど・・・
その頃、ナツたち3人を教えるイライザ。
とても解かりやすく、丁寧に教えられる3人。
「リュウノスケさんの言うとおり、イライザさんが教えたほうがよかったのでは?」
アキはリュウノスケが言っていたことを、イライザに言う。
確かにイライザが教えたほうが効率が良かった。
それでもイライザは・・・
「リュウノスケのほうがいいよ、優しいし丁寧だし凄いし、私なんて最悪よ・・・」
そう言いながら窓の景色を眺めているイライザ。
リュウノスケをヨイショしているようだが・・・・
「凄く自虐気味ですよね。」
「二人の関係って一応夫婦らしいけど、普通じゃないですよね、奴隷の首輪付けさせてるし、5歳児の姿にしてるし・・・」
「詳しく聞いたら、ただじゃ済みそうにないから気になるけど、切り替えて勉強するのが賢明かもね。」
と3人は小声で会話する。
イライザに聞いたら命が危険になりそうなので、聞くならリュウノスケの方が無難だろう。
と、結論付けて勉強に集中することにした。
翌日、今日は薬草採集の仕事をしつつ野草の見分け方などを教える。
「思い出せないやつや見分けの難しいやつは、こうやって腕の皮膚に付けて刺激の有無で判別するでござるよ。」
と毒の見分け方のサバイバル知識をリュウノスケが4人に教えていた。
すると息を切らせながら老人が町へ急いでるのが見えた。
それを見たリュウノスケは気になった。
「・・・ちょっと気になるでござるな、イライザに授業を任せるでござるよ。」
「えっ、ちょっと・・・」
リュウノスケは新人の4人の教育をイライザに任せて、急いでいる老人のところに向かった。
イライザはリュウノスケについて行きたそうだが、4人の教育の仕事を放置してまで行くわけにもいかない。
町に行くようなので、そこまで心配することもないのだろうが・・・
「アンタたち、速攻で教え込むから死ぬ気で覚えなさい、できないと殺すわよ。」
イライザが本気で4人を教え込もうとする、殺意も一緒に。
震え上がる4人は、命の危機のため必死に学習する。
リュウノスケも1人旅の時は、こういう感じで勉強していたのかと、なんとなく感じた4人だった。
それから2時間後、死ぬ気で覚えさせて仕事を終わらせたイライザと4人は町の冒険者ギルドに戻ってきた。
リュウノスケは受付嬢と話しをしていた。
イライザの機嫌がさらに悪くなる。
震え慄く4人。
リュウノスケはイライザに気付き、紙を持ってイライザたちのほうへ来た。
「早かったでござるな、もう終わったでござるか?」
「うん、リュウノスケの教え方がいいから、もう終わっちゃった。」
リュウノスケがこっちに来ただけで、機嫌が良くなったイライザ。
ほっと、胸を撫で下ろす4人。
「リュウノスケさん、その紙は次の仕事っすか?」
ハルが紙が気になり、リュウノスケに尋ねる。
「うん、町まで送り届けた人は村長さんで、またゴブリンが増えて被害が出てるから、また退治して欲しいという依頼でござる。」
「ゴブリン退治っすか、腕がなるっす。」
「まあ、いいんじゃないかしら。」
4人もやる気満々(まんまん)だし、イライザもいいと考えた。
ただ・・・
「少々(しょうしょう)気になる事があるでござるよ・・・」
と言うリュウノスケだった。
6話目に続く




