伝えられなかった想いと言葉、今なら言えるかもしれない。ホワイトデーとはそういう季節。
作品の予備知識。
新世紀エヴァンゲリオンがテレビで放映していた当時、テレビ北海道では午後の六時から六時半まで「ウェディングピーチ」が六時半から七時まで「新世紀エヴァンゲリオン」が放映されていた。
さあ、そういうわけで今年も引き続きホワイトデーについて書くことになりました。
今回はテンションあげあげで書いているつもりなので期待して読んでください。
ふじわらしのぶは長きに渡る修行の末、手から母乳を出すことが出来るようになった。
そしてきょうはホワイトデー、重力に魂を引かれた者たちへのふじわらしのぶの復讐が始まる。
手から出る母乳を、母乳と呼んでいいものか。それはさておいて。
「グホホッ、いるでごんす。ワチキの獲物がいたでごんす」
ふじわらしのぶは早速イオンのおかずコーナーで獲物を発見した。
以前ふじわらしのぶに道路の真ん中でウンコをしてはいけないと注意した女だった。
女は今、高野豆腐の煮つけを買うかどうか迷っている。
ふじわらしのぶは両手に母乳を集中させた。背後からミルクを浴びせてベタベタにしてやるつもりだった。
(生意気な女子は母乳の力でメスのカマキリみたいに交尾中にオスを捕食するような強く逞しい生物にしてやらなければならない。それがワチキのS・I・M・E・I‼英語で言うとディスティニー‼なぜストライクフリーダムに負けた⁉ディスティニー‼)
過去の呪縛はしのぶを苦しめる。
しかし、そんな時に白き仮面の貴公子がしのぶを勇気づけた。
この世は所詮、力だ。
力が無ければ生きていけない。
そして、ヤツの息子に出来て私に出来ないことは無い。
ラウ・ル・クルーゼ、プロヴィデンス、出撃する‼
(※この後、何かのついでみたいな形で撃墜される)
しのぶはイオンのおかずコーナーに置かれている食べ物の栄養価がかなり偏っていることに不安を感じていた。
その時、因縁の女子と目が合う。
女の名は高倉かなみ、近所のドモホルンリンクル女学院に通うおきゃんな乙女だった。
「何をしようとしているんですか?先ほどから貴方のオーラが私に向けられていることは気がついていましたよ」
かなみは咄嗟に胸を隠すようなポーズをした。
しかし、二十代の頃ならいざ知らず今のしのぶにとってバストは重要なボディパーツではない。
どちらかという肩のバーニアとランドセルの位置こそが肝要だった。
「お前を、俺の母乳まみれにしてやろうと思ってな。安心しろ。まだ誰にも味合わせたことの無い清らかな母乳だ。かなみよ、この俺の授乳処女を奪ってくれ‼」
ブシャアアアアアアーーーッッ‼‼
しのぶは両手から母乳を噴射した。
かなみは口を開けて母乳を受け入れる。
ぶしゃーっ‼ごぼごぼごぼ…。
かなみはしのぶの母乳を全て飲んでしまった。
「これは…おいしいわ?もしかして小岩井農場のミルクかしら」
かなみはサンガリア信者だった。
好きな飲み物はブルーベリー牛乳、あのアクリル塗料のような匂いがかなみのフェイバリットスメルである。
「キサマァァ、ワチキの母乳を全部飲みやがって…ッ‼これでは赤ちゃんにあげる分が無いではないか‼鬼かッッ‼‼」
しのぶは母性に富んだ男だったので、母乳噴射の能力を得た時には世の中のお腹を空かせた赤ちゃんたちに無料で飲ませてやるつもりだった。
かなみは中年男性の屁のようなゲップを出した後、えへっと笑う。
(今さら可愛いキャラ作ってんじゃねーよ)
「すいません。ついお腹が空いていて育ち盛りなもんで…。そろそろ第二弾、よろしくお願いしたいんですけど」
「あくまでタダでワチキのミルクを欲しいんでっしゃろかいな…。ようござんす。腹が裂けるまで飲んでおくんなまし‼」
しのぶ、かなみに向かって最大級の母乳を発射した。
しのぶの手は限界を迎えつつあった。
しかし、頭が巨大なアンパン(※つぶあん)製の男と同等の慈悲の心を持っていたしのぶは目の前の女を見捨てる事など出来はしない。
(かなみよ、腹いっぱい俺のミルクを飲め。そしてこの世に愛はあるのだと思い出すのだ)
しのぶは赤玉が出てしまうほど強烈な母乳を出した。
かなみは涙を流しながら、しのぶに感謝する。
そして二人の間に揺るぎ無い愛が芽生えまくった‼
「ぷはー…。しのぶ、アタイが間違ってたよ。愛は与えられるものじゃなくて、飲み物なんだね。ホラ、カレーは飲み物って言うだろ?」
「ようやく理解したか、かなみよ。俺もまた理解した。世界中のお母さんたちは子供と旦那からミルク代を取っていいと。見ろ、お前にミルクを飲ませすぎて俺の手に肌荒れが出来てしまった。どうしてくれる‼」
「甘いぜ、YOUたち‼マンゴスチン、ドリアンだね‼」
ブシャーッ‼ブシュッ、ブシュシュッ‼
その時、しのぶとかなみに向かって母乳が発射された。
かなみは口を開けて母乳を飲もうとする。
しかし、しのぶはかなみの顔をバケツの中に入れて未然に防いだ。
別のミルクがぶっかけられた場所は溶けていた。
かなみはこの時、しのぶが自分を愛していることに気がつく。
普通なら絶対に助けてくれないシチュエーションだろう。
「貴様…、一体どこの母乳使いだ‼名を名乗れ‼」
吹き上がる白い蒸気の中から男は現れる。
目にはサングラス、赤茶色の髪の毛に、白のボディースーツを着ていた。
「ぶほほほほッ‼俺は目から母乳を出す男、人呼んでオプティックミルクのヤス‼しのぶ、どちらが他の人にいっぱいミルクを飲んでもらえるか勝負だッッ‼」
しのぶはヤスに向かって掌を向ける。
ヤスはサングラスを外してしのぶを睨みつけた。
しのぶの手の周囲に白い霧のようなオーラが発生する。
この白いオーラの正体がしのぶの母乳である。
やがてオーラが渦巻き、ジェット気流のようにヤスに発射された。
「くらえ‼ワチキの母性をッ‼ミルキーメイルシュトロームッ‼」
しのぶは横からミルクを目当てに割り込もうとするかなみに警戒しながら必殺技を繰り出した。
ミルキーメイルシュトロームとはしのぶがアメリカの山奥にあるナイアガラの滝で修行して手に入れた必殺技である。
手から出しているミルクの激流を秒速6億回転させ敵にぶつける技で食らった相手は確実に赤ちゃんに戻ってしまう危険な技だった。
しのぶはこの技を間違って恋人の河内あやかに使って精神破壊してしまったという悲劇の過去を持っていた。
(あやかはん。許しておくんなまし。ワチキはこの戦いに勝って二十一世紀枠を脱却せんとあかんのや‼)
しのぶは”京ことば”に憧れていた‼
「俺も負けるわけにはいかないから全力で行かせてもらうぜ。食らえ、目は口ほどにものを言う‼ギガンティックミルキーロード‼」
ヤスはありったけの目力を込めて母乳を出す。
ギガンティックミルキーロードに限らず、ヤスの母乳技は基本涙成分を大量に消費するので目薬は欠かせない。
「ワチキも京の女(※しのぶは男性北海道生まれ、北海道育ち)や‼ここで引いたらぶぶ漬け出されるかもしれへんのや‼ヤスはん、堪忍やでえ‼ミルキーメイルシュトローム・サンダードリルエクスプロージョンスペシャルでっせ‼」
しのぶは念力で腕の数を増やしてパワーアップした。
左右、合わせて十七本となった腕からしのぶはヤスを母乳まみれにする。
その時、ヤスの身体が黄金色に発光する。
何とヤスは瀕死の重傷になることでハイパーモードに進化してしまった。
危うし、しのぶ‼
「ぐおおおッ‼たとえこの目がカラカラになろうとも俺は俺であることを止めない。だから神様ワンモアチャンス‼ジオグラインドスペリオールミルキーロードフェスティバル‼」
ヤスは全身を独楽のように回転させながら母乳を出した。
360度に加えてヤスはヤス・ファンネルも出していたのでオールレンジ攻撃をも再現する。
もうヤスを止められるのはあの男しかいない。
救世主ふじわらしのぶだけだ。
「ヤス。せめて最後は人間らしく俺の母乳を飲んで逝きやがれーッ‼最終奥義デッドエンドファイナルラグナロクミルキーアーマゲドンヘブンアンドヘル‼ヤスの魂よ、光に還れ…ッ‼」
しのぶはヤスを直接、殴った。
ヤスはショックのあまりミルクのコントロールを失い地球を水没させるほどの量のミルクを放出してしまう。
だがその時、かなみがヤスとしのぶのミルクを全部飲んで何とかなった。
ミルクの飲み過ぎで死にそうになっているかなみを抱き締めるしのぶ。
しのぶはかなみの前髪をさっと掃ってやった。
「かなみ。何か言い残す事は…あるか?」
かなみは朦朧とする意識の中、最後の願いをしのぶに告げた。
「アタイさ。本当はウェディングピーチ派だったけど、シン・エヴァンゲリオン、観たかったよ。…しのぶ」
「か、かなみぃぃぃぃぃッッ‼」
ガクッ‼
かなみは二十四年の人生に幕を閉じる事になる。
しのぶはかなみの意志を遂行する為に月に一度は有給休暇を取る予定を出すことになった。
しのぶとかなみの魂よ、永遠なれ…。