高崎ドラゴン、ご臨終(上)
第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」応募作品です。
初投稿なので、生易しい目で見て頂けますと幸いです。よろしくお願い致します!
高崎ドラゴンは14歳、女子中学生であった。
兄の名前は高崎槓、姉の名前は高崎栄、そして末っ子の彼女はドラゴン。
そう、彼女の両親は麻雀が何よりも好きであった。
麻雀の「ドラ」の語源はドラゴン、他の用語と異なり、漢字表記がない。
故に語源そのままにドラゴンである。
「ポンとかチーとかあったよね・・・」
平日昼間、学校をさぼり公園のベンチで独り、溜息をつく。
物心ついてからというもの、自身の名前を嘆かない日はなかった。
「羽とか生えていたら、自信を持って名乗れるのかな…」
自嘲気味に呟く。
「生やせば良いんじゃない?」
「それ、もっとイタい子じゃん… って、え誰?」
突然の声に、驚くドラゴン。目を向けると男が立っていた。
丸いサングラスと、やけに艶っぽい黒のスーツが胡散臭い。
「僕は小林巨人、きょじんと書いてゴトだ」
「コバヤシゴトー?苗字と苗字みたいな名前ですね…」
「面白いだろ、君は高崎ドラゴンちゃんだね?」
男は何故か、ドラゴンの名前を知っていた。
「何で知っているんですか? ていうか何の用でしょうか…?」
警戒心高まるドラゴンに、ニヤニヤした顔で巨人が言う。
「君の余命はあと3カ月だね、どうせ死ぬならその前に僕と楽しい事をしようよ」
「ちょっと何言っているか分からないです、すみません」
「待ってよ、もう少し聞いて」
ベンチを立ち、去ろうとするドラゴン(女子中学生)の手を摑む巨人(成人男性)。犯罪現場にしか見えない。周囲の目が刺さる。
「放してください、嫌やめて、痛い!」
「あー…クソッ、めんどくせぇな」
次の瞬間、視界が変わった。
空、雲、太陽、それらが限りなく近い。綺麗な景色に息を飲むドラゴン。
だが一転、落下の感覚が体を襲う。
「なにこれ、なにこれ!!!」
「めんどくさいから、能力を使った」
「能力って何?ワープ?どうなってんの?ねえ!!」
「いいか、おい!しっかりしろ!!死にたくなけりゃ、これ舐めて自分の名前を叫べ!」
「意味わかんない、意味わかんない!!」
噛み切って血が滴る指を差し出し、怒鳴る巨人にキレるドラゴン。
「早くしろ!」
無理やり指を突っ込まれ、口内に血の味が広がる。
「ぅうぇええ・・・」
「名前!!」
もうどうにでもなれとドラゴン、自分の名前を叫ぶ。
「たかひゃきでぅらぎょん!!」
「言えてねえよ!」
言えてないが、状況は一変した。
ドラゴンがドラゴンになった。紛れもなくファンタジーな竜の姿に。
「飛んでる…」
下編に続く…