薔薇色の海
夕陽は
咲き綻ぶように
散っていきました
凪いだ海の
陰影に
ひらひらと
紅色を落とし
浜辺に打ち上げる
その裾まで
淡く色づかせたのです
私の皮膚の
細かな皺も
砂浜に残る
疎らな足跡も
余すことなく染め上げ
風に洗われれば
掻き消える儚さを
孕みながら
旋律となり
奏でられる光
繋がることも
途切れることも
恐れぬ光が
射したのは
感傷と近しい場所で
溶け合う
眼差しと海──
永遠と刹那の
果たされた
邂逅──
世界はほどなくして
薔薇色に包まれ
薬指の爪ほどの
割れた白い巻き貝を
吐息のような明るさで
柔く抱き
そうして
静静と
滲んでゆきました
海はもう
蒼い影を
曳くばかり