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教主様「天に罰を」

 天から裁きの雷が地上に降り注ぐ。神話などで語られる神の審判にして、最終判決。地上の終わりを意味する力。

 その力にも匹敵するような力だとわかった。


「やりましょう」

 天を見上げ、囁くように紡がれた言葉。

 それに対して何をという問いは発することは間に合わなかった。


 包帯を巻いていた、俺の身体を用いている何かは教主と同じように手を見上げ破壊の光を立ち昇らせた。

 その光は太く、まるで天に届く柱が急に現れたかのようだった。





「うわっとっとぉ!? なんじゃあ?」

 うたた寝しとったら、いきなり揺れたぞい。

「……揺れる?」

 あり得んじゃろうそんなこと!

 慌てて下界を見下ろす。それだけで揺れの正体はわかった。

「なんじゃあああああ!?」

 かれこれ千年ほどぶりの驚きじゃ。いや、小さいのはあったが、大きいのは久し振りというべきか……?


「下界と地上の境目にヒビが……!」

 誰じゃこんなことをするのは!?

 慌てて意識を集中してみればさらに驚愕の事実。


「……地上からの攻撃じゃと?」

 バカなッ! そんなことが出来る奴がおったのか!?

 可能性があるとすれば聖女と呼ばれておる小生意気な娘っ子じゃが、あれにここまでの力は与えておらん。

 だとすると、先日預けたあの変な男か……?

 力の使い方を覚えば可能性はあるだろうが……。


「いや、待てよ?」

 ここまでの被害と頭に浮かんでいた文字を変えてみれば……。

「まさか、これはあやつなのか?」

 創生の時代とまで語り継がれる時代に生まれたあの魔法。あれを使える奴が再び出て来たということか?


「だが、あれは使い手とともに滅んだはず」

 強大に過ぎる力ゆえに消滅までを確認したのだ。間違いなく使い手は死んだ。そして、それを後世に伝えないように厳命もしておいた。

 馬鹿げた魔法を創りだしたものの、使い手自体はマシな人間だったからかなりの温情で次の人生は平穏なものを用意までしたのだ。裏切るようには見えん。


「……だとしても、儂にまで及びかけた力を使う者となるとそれ以外に考えられ――」

 思考を遮るような形で再び揺れが響いた。

 今度のはかなり近い!

「ぅおのれ……! 正体見てくれるわ!! ……へっ!?」

 覗き込んだタイミングが悪かった。





「……んんっ!?」

「どうした!?」

 突如頭を押さえて苦しみだした聖女に駆け寄ると眉間に皺をよせ、めっちぇ不機嫌な面をしていた。


「……だ、大丈夫か?」

「大丈夫じゃないわよ! ったく、あのボケナス! ちったぁ、こっちの状況も考えなさいよね!!」

 天を睨みつけながら喚く姿になんとなくだが、状況を把握した。

 あの爺さんが何かやらかしたんだろう。


「……はぁ。それにしても師匠もとんでもないのを隠し玉として持っていたものね」

 悩ましいと嘆息する聖女はある意味で豪胆だ。


 各国の要人達は天が割れ、空が黒く染まって行くのを見てこの世の終わりだと騒ぎ立てているというのに。この聖女は終末の恐怖とは無縁のところにいる。


「行くわよ!」

 その凛々しい姿は普段の無理難題を吹っ掛ける様子とは違い、貧しさに手を差し伸べる聖女としての気概のようなモノを感じざるを得ない。

「……へいへい。ついて行くよ」

 癪だけどな。





「師匠! お止め下さい!!」

「……あら? 何を止めろというの?」

「今やっていることをです。大体の事情は先程、教えられましたのでわかっています。……お願いですから、私に最後まで言わせないでください!」

 態度こそ普段通りだが、懇願するように縋るように必死に頼み込む。これ以上やると取り返しが付かなくなると……!


「駄目よ」

 だが、相手もそれがわかっていて……むしろそれを望んで行っているのだ。今更、小娘が喚いたところで止まらない。止められない。


「事情を聞いたと言ったわね。どこまであれはあなたに伝えたのかしら? どうせ、今の行為は地上を滅ぼす行為だとか……そんなところでしょう?」

 まさにその通りだった。

 いつものように相手の要求を対話を持って聞く、天啓ではなく。神意とも呼ぶべき抗えぬ命令をされたのだ。よほど取り乱していたのかまるでが出たような態度に、所詮は下界の小娘に過ぎない身の聖女は脳をかち割られそうなほどの衝撃を受けた。


「あれはいつもそう。上から見下ろして、関係のないことには干渉しない。そのくせ思い通りに行かないと喚き散らす。この世界の誰よりも永い存在のくせに、生まれたばかりの赤子にも劣る」

「……師匠は神と会ったことがあるんですね」

「あるわよ。私とあの人、そしては神が降臨するのを目の当たりにしたことがあるわ」


「降臨……神話ですね」

「そうね。今となってはあなたの組織が語り継ぐ物語になっているけれど、事実起きた事よ」

 あの時は凄かったと語る教主の瞳は遠い昔の光景を映し出しているのだろう。


「――私達の正体は生きた魔法よ」


「魔法が生きているそう言ってもわからないでしょうけど、魔法だって元からこの世に存在したわけじゃない。当然、それを生み出した者がいた」

「……世間では神が為したと」

「そうね。それも間違ってはいない。だけど、神に迫るほどの魔法を新たに生み出した者もいた」

「それが師匠の主ですか」


 星の数ほどの魔法使いがいる中で極致に至ったのはたった二人。


「私は生命を魔法に」

 神にも迫る命を操る魔法。

「あの人は破壊を」

 そして、すべてをこの世にあるすべてを破壊する魔法。


「永遠を生きる私と、刹那の破壊をもたらすあの人」

 二つの魔法は同じ時代に生きた。

 片割れは今も生き続け、そして片割れは一度死んで生き返った。

 次回、過去編(予定)

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