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第38話 ギルド

 ウイルシアン王国

 陽気のいい昼下がり、槍を片手に持つロンダと、弓を背中に装備したルドルがギルドに入って来る。

 丁度出て行く者と入る者が向かい合う形で、装備しているナギアとラベルトが威風堂々と出て行く所だった。

 ロンダが爽やかな笑顔で片手を上げる。


「よお、ナギア。久しぶりだな」


 冷たい表情ではあったが、同じ階級だからなのか普通に答えるナギア。


「ああ、依頼を受けていたからな」


 ルドルも髪を掻き上げ、爽やかな笑顔を見せる。


「ご苦労だね、なら後ろのラベルトも一緒だったんだろ」

「ああ、少し疲れているよ。帰って一杯やって寝たい気分だ」


 ナギアが足早にギルドを出る。


「ラベルト、行くぞ」


 ナギアを流し眼で見送ったロンダが、後ろのラベルトにすれ違いざまに顔を向け小声で話す。


「ナギアは何を急いでいるんだ?」


 顔を近づけ、ラベルトも小声で話す。


「ああ、依頼達成したから、一刻も早く旦那と子供の待つ家に帰りたいんだとさ」


 外からナギアが振り返り、苛立つように声を掛ける。


「おい! ラベルト! 置いて行くぞ」

「ああ、今行くよ。んじゃな」

「またな、気を付けて帰れよ」


 ラベルトはナギアの後を追うように、足早に出て行った。

 ロンダはラベルトの後姿を見る。


「ラベルトも大変だな。これも同じ師について修行した腐れ縁ってやつか」


 ルドルも両手を腰に当てて見ていた。


「それがパーティだろ? 俺たちも同類だよ」

「そうだけどさ。でも、男のラベルトがナギアに言われっぱなしって、やはりナギアの方が強いから。なのかな」

「それは考えられるな。けど、ラベルトも優しいところがあるから、それで成り立っているのかもよ」

「成る程ね。それもそうだ」


 広間には二人以外、誰もいないギルドの中。

 他愛もない話しをしながら掲示板を眺め、一通り見た後、肩を落としテーブル席に力なく座った。

 ロンダが槍を力なくテーブルに載せる。


「今回は、俺たちに適した依頼は何も無いな」


 ルドルも気合が無くなったのか、弓を背中から外し、テーブルに槍と並べるように載せて背もたれに深く寄りかかる。


「主にC級、D級の依頼ばかりだから、今回は諦めたほうがいいな」


 二人はそれ以上話が続かず、沈黙すればギルドは静かになる。

 ――唐突にルドルが、前のめりになり思い出したように話す。


「レイルは今頃何しているかな」


 ロンダも思い出したような表情になる。


「あいつなら、またあの、スラン、とか言う災厄級のスライムの魔物やミャウと手合せでもしているんじゃないのか」

「あー、凄まじい強さのジャイアントスライムかぁ。今となってはいい鍛錬だったな」

「向上したのは確かだったしな。でももう行かないぞ、コリゴリだからさ」

「ハハハ、俺も同意見だ」

「特にミャウのしごきは辛かったな」

「確かにきつかったし、死にそうだったよ。でも、いい鍛錬だったと思う。お陰で今があるのだし」

「あの地獄の鍛錬で一気に飛躍したのは自身でも感じたな。それは否めない事実だ。今も感謝している」

「久しぶりにレイルを呼ぶか」

「難しい依頼も無いのに。か? 遠方だし、それはレイルに悪いだろ」

「そうだよなー。でもレイルに会いたくはないか?」

「んー、会いたいに越したことはないけど――」

「――どうしたものか」


 ロンダとルドルの話声だけが、ギルド内に響いているので、カウンター越しに座っているエルサは、暇を持て余していたように、両肘を立て組んだ手の上に顎を乗せていた。

 途中から二人のやりとりを、聞き耳立てるように終始聞いていたのだろう、エルサが可愛い声をかける。


「あのー、聞くつもりはなかったのですけど、聞こえていたので一言いいですか?」


 ロンダが背もたれ越しに腕を掛け振り返る。


「ん? いいよ、エルサ。何かな」

「はい。近々、ウイルシアン王国主催の格闘技が執り行われるのですが……出場してみませんか?」


 エルサ曰く。

 昔は五年に一度行われていたが、いつの頃からか執り行われなくなった。

 今の国王になって今年、改めて再開する事となった。

 一対一とパーティ対パーティの二部門で開催される。

 昔は階級によって束縛され、強者が中々上級に上がれない事を危惧した王国が、強さを求め、上位に入った者には昇級させる為に執り行っていた。


「一ヶ月後ですが、参加されては如何ですか? まだ閉めきっていませんので」


 ルドルは背もたれに寄りかかったまま、両手で髪を掻き上げながら後頭部で組む。


「俺はパーティとしては参加してみたいけど、個人戦は無理だろ。レイルとナギアが出たら決勝は二人で本決まりだろ」

「俺もそう思うよ。多分上位は俺たちとラベルト、それに参加するなら勇者か。それでもナギアとレイルは別格だからな。むしろじっくりと客席から見ていたいな。でもあの二人は参加しないんじゃないか?」

「そうだな。しかしイベントなのだから、気楽に出ようぜ、的な、一応打診してみる価値はあるよ。いい意味での言い訳としてさ。なら明日にでもレイルに送ってみるか」

「事後報告だと仲間外れみたいだから、あくまで強制ではなく、レイルの意志に任せるとして、打診してみようか」

「了解。明日、連絡するよ」

「来てくれたのなら宴でも開くとしよう」

「お、いいね。そうなったらラベルトたちにも打診してみようぜ」


 翌日にルドルは、城壁の外に出て、魔法を練り上げた矢をレイルの屋敷に向けて放った。


「よし、後はレイル次第だな。待っているぞ」



 ウイルシアン王国の西の城門

 サリアとオリナは、検問所を何事も無く通り、冒険者登録をする為その足でギルドに向かった。

 初めて王国に入ったのだろう、サリアが街中を見回しながら歩く。


「わぁ、ここが人族の国かぁ」

「サリア、余り興奮しないで。警戒されたら困るから」

「え? あ、うん。了解」


 その後のサリアは、眼だけ動かし悟られないように見て回り歩き、ギルドの前に着いた。

 北のギルドと変わらない造りで、王国のギルドの造りは四カ所とも統一しているようだ。

 昼を過ぎてはいたが、依頼を受けそびれた冒険者が数組、テーブル席で話し合っているのが見える。

 その時、赤く艶やかな髪を揺らしながら歩くオリナを先頭に二人が入れば、その美貌と容姿に冒険者達が眼を向けることは必然か。

 すぐに視線を察知したオリナだが無視し、カウンター越しの受付嬢に登録依頼をE級として書面に書き、何事もなく二人とも無事に冒険者となった。

 だがしかし、見ない顔の美女が新規冒険者になれば、粉を掛ける奴らが現れるのは必至。

 ギルドを出ようとしていたオリナとサリアの前に、身長一八〇㎝程で金髪短髪の冒険者である男と、その後ろの仲間であろう、全員が金髪短髪の男達が立ち塞がる。


「姉さんがた。俺たちのパーティに入らないか? 今ならすぐに入れて上げるよ」

「いや、結構です。間に合っているので構わないで下さい」


 オリナが避けて出て行こうとすれば、後ろの男たちが行く道を遮るように立ち塞がる。


「まあまあ、連れ無い事言わないで入りなよ」

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