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第31話 酒場2

 肉料理やつまみが並べられてある円卓を囲み、一緒に飲み始める四人。

 さっそくラベルトがグラスをあおる。


「フゥ。この店にはよく来るのか?」

「俺とロンダは常連だな。暇な夜は、ほぼほぼ、この店にいるよ。なあ」

「そうだな。俺とルドルの食堂みたいな店だしな。ハハハ」

「レイルは俺達が誘ったんで初めてだよ。ラベルトは?」

「俺は時折来るよ。一人で気楽にな。ハハハ」


 他愛もない会話でも、酔いに任せ、話は弾み、談笑を続ける四人だったが、途中で話が途切れ、会話が無くなり沈黙になることは当然ある。

 その時に、レイルが目の前の肉をフォークで刺しながらラベルトに話しかけた。


「ナギアって、優しいよね」


 その一言で、ロンダとルドルが固まる。

 ナギアの耳に入りませんように、と願っている表情で、二人は眼だけ動かし見合わせている。

 反してラベルトは、蒸留酒のグラスをあおり円卓に置くと、笑顔になる。


「フゥ。ハハハ、レイルにはわかるのか?」

「ん。わかる」

「いい眼を持っているな。その通りだ、全くその通り」


 何事も無く、どおって事も無かったので、緊張が解けたようなロンダ。


「でも、言い方は悪いかもしれないけど、口調は男勝りだよな」


 肩をなでおろし、安心したようなルドルも食いつく。


「そうそう。ラベルトに対しても同等以下の扱いに見えるし」


 ラベルトはグラスを持ち、揺らしながら中で揺れる琥珀色の液体を眺め、三人を見る。


「んー、なんて言うかな。あれは虚勢を張っているだけなんだよ」


 ラベルト曰く。

 昔、ある一人の師匠に弟子入りし、師の元で修行を始める時に知り合った。

 初めての印象は、可愛らしく、華奢きゃしゃで大人しかった。これからの厳しい修行なんてとても無理、耐えられるようには全く見えなかった。

 始まって見れば、予想を反して負けまいと付いて来た。何度も地面や泥の中に倒れ這いつくばり、四六時中あざだらけは当たり前。

 それでも歯を食いしばり耐え抜き修行した。

 二人で最後まで耐え抜いた時は、初めて背中を任せてもいい、と感じた。

 数年の後、晴れて冒険者になり、暫く二人で始め依頼を受けた。

 そこで待っていたのは、女性冒険者の扱いに思い知らされる。

 現在こそ無くなったが、当時は何度も理不尽な屈辱を強いられたナギアは、二人のパーティを止め、あえて一人で依頼をこなすようになった。

 そして性格も男勝りになり、理不尽、許せない時は、躊躇なしで大の男を屠り、数人が相手でも立ち向かい、自身に非が無ければ、所構わず大暴れするようになった。

 だがそれに伴って、高度な、難しい依頼もこなすようになり、一目置かれ、A級に登り詰め、そのころから時折、一緒のパーティを組んではさらに難しい依頼を受けた。

 大きな討伐でも群を抜いて強く的確な判断でこなし、すぐにS級となり王国から依頼された大きな討伐は二人で中心となって完了し、英雄級とまで言われるようになった。

 誰にも知られていないが、根はとても優しい女性だ。


「好きな旦那と子供の前だけは、優しい笑顔を振りまく本来の姿。まさに絶世の美女ってところかな。ハハハ」


 ルドルは両腕を組んで納得しているようだ。


「成る程なぁ。わからないものだよ」


 ロンダも納得しているようで、頷いている。


「うんうん。いい話だ」


 すぐにラベルトは円卓の上に前のめりになり、片手で口を包むように当て二人に小声で話しかける。


「ただし、これは絶対に内密にな。少しでも口外し、ナギアの耳に入ったらどうなるか――わかるだろ」


 ロンダとルドルは顔を見合わせる。


「さっきの話の流れで行けば……地獄絵図か?」

「地獄絵図だな」


 ラベルトは姿勢を崩さず話す。


「喋った俺も巻き込まれるのは当然だから以後重々気を付けろよ……ナギアを怒らしたら……凄まじいぞ」


 想像したくないような二人は黙って頷いた。

 反して気にしないレイルは、聞いていたのか聞いていないのか、終始無表情ではあったが美味しい料理を食べ、酒を堪能していた事は周知の事実である。


 話題は変わり、レイルが自宅へ帰る話になっている。

 ロンダとルドルは既に知っている事なのだが、話を聞いていたラベルトは納得しているようだ。


「成る程な。だから見かけなかったのか。この町の仮住まいは理解したよ。で、レイルの自宅ってどこの町なのか?」

「遠い山の上」


 ロンダとルドルが、思い出したように辛い表情になる。


「ラベルト、聞かないほうがいい」

「ああ、レイルには悪いけど、二度と行きたくない」

「ヘェ。そんなに遠いんだ。興味あるな」

「聞かないほうがいい。いや、俺は言わないし、レイルも言うな。話が面倒になる」

「ん。わかった」

「そうそう、それがいいよ。うん」

「何だよ。俺はのけ者か? まあ、大変なのは理解したから別にいいけどさ。

――あ、そうだ、思い出した。ロンダとルドルはS級なのは知っているけど、同じパーティなのに何でレイルだけB級なんだ? おかしいだろ、普通」


 ロンダが、以前レイルと会ってから現在までの経緯いきさつを、掻い摘んで簡潔に答えた。

 背もたれに寄りかかり、納得するようなラベルト。


「フーン。ナギアが言っていた通りだよ。あいつも見抜いていたんだな」


 ルドルが皆のグラスを眺め、振り返る。


「おーい、お代わりくれー。酒を四つなー」


 また話題が変わり、ロンダが茶髪を掻き上げながら話す。


「ラベルトは今回の討伐をどう思う? また起こるのかな」

「まだあるかもしれないよ。聞いた話じゃ勇者一行が、作戦を練り直して再び魔王討伐に出向くらしいからさ」


 ルドルがグラスをあおる。


「フゥ。勇者一行も懲りないねぇ。こっちから手を出さなければ、何もしてこないんだろ? 止めればいいのにな」

「全くだよ。いい迷惑だ」


 ラベルトは、グラスを揺らし、揺れる酒を眺めながら話す。


「認定されたのか、召還されたのか、引き抜かれたのかは分かりかねるが、国王か参謀、側近辺りの指示かも知れないよ。勇者だって馬鹿じゃないだろうし、色々としがらみがあって大変なのかもな」


 ルドルはラベルトと同じように背もたれに寄りかかり、両手を後頭部に当てる。


「勇者一行も、引くに引けない事情、悩みがあるのかぁ。そう考えると何だか可哀そうな気もするな。ま、また何か起こるなら起こったで対処するんだろうし、そうなったらまたレイルにも連絡入れるよ」

「ん、わかった」


 ロンダがグラスを持ち、前に出すと、三人もグラスを手に持つ。


「じゃ、討伐の完了とレイルの御帰宅に、かんぱーい」

「「かんぱーい」」

「ん、ありがと」


 店内は、酒の入った他の冒険者たちの、話にならない雑音のような声が至る場所から聞こえ、夜遅くまで明るく賑やかだった。


 翌日レイルは帰る事となるが、その途中で……。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

これにて第二章が閉幕となります。

感想等いただければ嬉しいです。


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