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第15話 依頼3

 ロンダとルドルが抱えるように両脇にいる女性達は、二人の取り巻きだけあって確かに綺麗だった。

 が――。

 ロンダのすぐ横にいた綺麗なブロンド髪の女性が、レイルに向かって聞こえるように声を大きめに話す。


「何あれ。いつもロンダ様と一緒にいるからって、あの態度は生意気じゃない?」


 他の女性達も同調したようで、後姿のレイルを睨んでいた。


「何様よ、何だかムカつくわね」

「スカしてんじゃねーよ。ルドル様に迷惑掛けんなよ!」

「ダッサー、彼奴あいつ何、調子に乗ってるんじゃないわよ」


 好き勝手にレイルに向かって暴言を吐く女性達。

 レイルはしっかり聞こえてはいたが、気にする事無く家路に向かい離れて行った。

 そんなロンダとルドルは、無表情になり両手を離し立ち止まる。


「今日は解散だ」

「俺も帰るよ」


 何もわかっていない女性達は、ハテナ顔で顔を向ける。


「えー? これから一緒に食事に行くんでしょー? ロンダ様ー」

「そうよ、食べに行きましょうよー。ルドル様もどうしたのー?」


 その後も気遣いもない女性たちは、二人に黄色い声を呼びかけている。

 ロンダがそんな女性達を睨み叫んだ。


「うるせーよっ! バカ女っ! 俺の仲間を罵倒するなら二度と近づくな!」


 ルドルも女性を突き放し怒鳴る。


「てめーら、何、気取ってんだよっ! レイルを馬鹿にするやつは、金輪際、話もしねーよっ! タコ女ども!」


 激怒する二人を見たのは初めての事なのか動揺する取り巻きの女性たち。


「ご、ごめんなさい。そ、そんなつもりじゃ……」

「嫌わないでぇ。ロンダ様ぁー」

「わ、悪気があって言った訳じゃぁ……」


 ――確実な悪気である。

 謝りながら泣いてすがる女性達に、ロンダとルドルは顔を見合わせ、いたずらな笑みを浮かべた。


 翌日、依頼は無いが、レイルは定期的な打合せでギルドに出向く。

 その途中で、先日罵声を浴びせていた女性達が、今か今か、と街角で隠れてレイルを待ち構え、見つけた途端走り寄り、キャーキャー、と腕を組み抱きつき、猫なで声を上げる。

 レイルも既に察知はしたが、殺気も威圧もなかったので立ち止まっただけだった。

 ただレイルは、女性に囲まれる事など初めての事なので、極度の動揺で直立不動で固まり、何も出来ないのが現状。


「レイル様―。昨日はゴメンなさーい、食事でも行きませんかぁ?」

「レイル様―。私は一緒に買い物に行きたいですぅ」

「レイル様―」

「レイル様ったらー」


 固まっていたが、怖くなったレイルは、一瞬ですり抜けるように、しなやかに組まれていた腕を無理なく解き、女性から離れ、素早くこの場を立ち去った。

 レイル様、と呼び止める女性達を無視し、逃げるように立ち去った。

 レイルにとっては過酷なひと時だったのだろう。



 同時刻のレイルの屋敷で、窓を拭いていたミャウが手を止め外を見る。


「ん? 何故、怒りが込み上げてくるのでしょうか。あ、殺気も湧き上がる。無性に滅ぼしたい気分が……あ、治まりました」


 首を傾げ、ミャウは再び窓掃除を続けた。

 森の中のへび姫が急に、隣にいたスランに向けて武装硬化した尻尾を、ベシベシ、と激しく叩き出した。


「何―? 痛いよー、へび姫―」

「ん? 何故かの。怒りがこみ上げ、こうしなくてはいけない、と感じたのだがの。ん?」

「止めてよー」

「ん? 治まったの。悪かったの。ん?」


 触手を上げて抗議するスランは、そう言いながらも既にメタル化しているので、痛みも何も感じてはいない。

 そんな森の中は、日差しも柔らかく差し込み緑も濃く、森林浴と呼ぶにふさわしく、とてものどかであった。



 女性達を振り切ったレイルはギルドに入る。

 奥の円卓には先に来ていた二人が座って話しをしていた。

 すぐにレイルに気づき、振り返る。ロンダは爽やかな笑顔でレイルを見る。


「いよお、レイル。昨日は悪かったな」


 ルドルも爽やかな笑顔で軽く手を振る。


「今日は何か、いい事でもあったかな?」


 レイルは真顔で椅子に座る。


「今後はやめて。でないと……」

「あ、いや、わ、悪かったよ、ほんの冗談だよ、すまんすまん、おいルドル」

「人見知りが治れば、なんて思ったからさ。もうしないと誓うよ」


 レイルは既に、二人の悪気が無い事を察しているがくぎを刺す。


「なら、いいけど――次は無いよ」

「お、おう」

「りょ、了解だ」


 すぐに打ち解け、次の依頼の打ち合わせを始める三人。

 手の付けられていない、いや、手が付けられていなかった幾つかの依頼を、円卓に乗せて検討する。

 山に出没するバジリスクの討伐。

 牧場に出没し空から牛を獲って行くワイバーンの撃退。

 岩山で暴れて落石を起こしているゴーレムの討伐。

 倒せず先に進めないでいる、ダンジョンの階層主、ヒュドラの討伐。


「この四つの依頼が、受け手がいないらしいけど、どれにするか」


 ルドルが両手で、青髪を掻き揚げたまま依頼を並べてある円卓を、見下ろす形で見る。


「バジリスクとヒュドラって、やばそうだな。確か強酸とか毒とかが特化した魔物だよな。更に皮膚も硬くてロックベアーの比じゃないらしいぜ」


 ロンダがレイルを伺うように見る。


「レイルはどれがいいと思う?」

「ん。どれでもいいけど」

「ハハハ、相変わらずだな」

「被害優先ならワイバーンかな」

「成る程、確かに牛が狙われているのは痛いな。じゃ、今回はこれに決まりだ」


 ルドルも肯定する。


「りょーかーい、今回は俺の出番が多くなりそうだな」

「そうだな、ルドルの弓矢に任せたよ」


 次の依頼が決まったところで雑談になる。

 ルドルが円卓に両肘を付き、前のめりに顔を付きだし二人を交互に見る。


「なあ、東の遥か最果てにある魔国って知っているか?」


 ロンダは知っているようで頷く。


「ああ、魔王が統括してる魔物の国だろ? 偉い遠い場所らしいと言うのは、冒険者のA級以上にだけ極秘裏で回っているから聞いて知っている」


 レイルは無論知らないし、興味も無いので無表情だ。


「俺は知らないし気にしないけど」

「最近A級以上の間で、密かに噂されているんだけど、どこかで勇者が現れたか召喚されたかは知らないけど、王国で認定されたようだ」


 ルドル曰く、この話は市民、下位、中位冒険者は知らないのでここだけの話で留める事。

 十数年前、何処かの地で勇者が数名誕生し、極秘裏に城内で育て、鍛錬した。

 そして先ごろ、魔王討伐に出立したらしい。

 勇者達は四人のパーティで、リーダーが魔法剣士、他に魔道士が二名、そして戦士兼剣士らしい。


「へぇ、パーティの王道だな。でも今更討伐?」

「そうなんだよ。均衡を保っているのに何で今なんだか」

「王国のする事だから、俺達には縁遠い話しだな」

「それはそうだけどさ……って、おい、レイル、寝るなよ、起きろよ」


 ルドルが、下を向き寝ているレイルの肩を軽く二回叩く。


「ん。俺、興味ないから」


 ロンダが呆れながらも笑顔になる。


「ハハハッ。この手の話は普通に食いつくんだけどな。レイルらしいよ」


 レイルにとってはどうでもいい話しだった。

 そして解散。

 数日後に待ち合わせ、受けた依頼で出立した。


 今回の依頼場所。

 ウイルシアン王国の南の検問所から、南東、南、南西に伸びる街道がある。

 その先には各都市がある。

 その中の一つ南西に向かう先の都市、ウィットラム魔法都市。

 魔法学校を始め、戦争に向けた魔法軍の統一など、魔法に特化した人口百万人の都市。

 そこから西に向かった町にある郊外の牧場に、ワイバーンが頻繁に飛来して牛をさらっている。

 今では数百頭いた牛の半数が、味を知ったワイバーンの餌となってしまっている。

 

 到着したがまだ日も高く、見渡せば牧場を渡るそよ風が気持ちいい。

 空にはいくつかの雲がゆっくりと流れている。

 そこに出向いて来た、ロンダ、ルドル、レイルの三人の冒険者。

 この場所にワイバーンが飛来するなど、考えられない程のどかだった。

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