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第13話 依頼

 対峙する二人。

 この時のレイルは、会話では無く手合せなので、落ち着いてルドルの眼を見ているし、冷静だ。

 ロンダが二人を見て合図する。


「始め!」


 ルドルが左右に素早く動きながら、レイルに近寄り、不意を突いて速い連撃を繰り出す。

 レイルは先ほどの手合せを見て、見切っているので全て剣で受け、刃とガントレットがぶつかる連続した金属音の中、隙を見て一度後方に飛ぶ。

 刹那、ルドルは追うように踏み込み、一気にレイルの懐に入り、避けられない力強い右拳の一撃がレイルの腹に突き刺さる。

 が、空を切るようにレイルが消え、既に後ろに回り込んだレイルは、剣をルドルの肩口に軽く乗せた。


「はい?」


 変な声を発し、動けなかったルドルは、ゆっくりと振り向き両手を軽く上げた。


「参った。敵わないな」

「回り込んだ……だけです」

「いや、それが凄いんだって」


 ロンダも追いつくどころか、見切れていなかったようだ。


「今、消えなかったか?」


 眼が合うレイルは自然と眼線を下に向ける。


「普通に……隙を見て、後ろに……回り込んだだけです」


 ルドルは呆れて、片手で青い髪を掻き揚げながら、すれ違うロンダともう片方の手を上げ叩き合わせ交代する。


「あの怪物は任せた」

「任せとけ、とは言えないが、やってみるよ」


 ロンダは先程と同じ距離で槍を構え、相対するレイルも同じ構えで対峙する。

 ルドルが二人を見て合図した。


「始め!」


 刹那、合図と同時にロンダが一足飛びにレイルに飛び込み、渾身の連続突きを仕掛ける。

 ランサーたるロンダが繰り出す槍が十数本に見える程の攻撃を、レイルは全て剣で受け流す。

 ぶつかり合う鈍い金属音が訓練場に響き渡る。

 ――ロンダはそれを読んでいたようだ。

 槍の先がレイルの横を過ぎ、理不尽な動きで振り切り横一線、避けきれない刃がレイルの首に入る。が、空を切り後ろに回り込んでいた。

 ロンダはこれも読んでいたようで、突きだした槍を瞬時に引き、槍の反対側の突起部を、そこにいるであろうレイルに向けて一撃を繰り出す。

 しかし、またもや空を突き刺し、既に横にいたレイルがロンダの肩口に剣を軽く乗せた。

 ロンダは構えを解き、両手を軽く上げた。


「だぁー、くそ、参った」

「回り込んだ……だけです」

「いや、だからそれ自体が、もの凄いんだって」


 レイルは二人の力量を調べていたので、ミャウの言いつけどおり、ほんの少しだけ上回る力を出したつもりだったが遥か上を行き、二人から見ればそうでは無かったようだ。

 観客席から見ていた女性達は、ロンダとルドルの攻撃さえ見えないのに、ましてレイルが、どうしてあーなったのか、何が起こったか、見えるはずもない。

 ただ眼を見開き、口を開けたまま固まっていた。


 レイルは二人を前に眼線を下に向ける。


「魔法攻撃も……あったら、俺は……勝てません」

「謙遜なんてしなくていいよ、レイルは強い」

「そうそう、俺達が見込んだ男だし、仲間になれて良かったよ」


 ルドルは、置いてあった弓矢を持つ。


「俺は中長距離に長けた弓士、アーチャーだから、レイルに見せておこう」


 訓練場の奥に的がある。反対側の端に立つルドル。


「まずこれが俺の普通の矢だ」


 弓の弦を大きく引き、矢を放つと瞬時に突き刺さる。

 只一つおかしい事は、その放たれた矢が、放物線を描かく事無く一直線に突き刺さった。

 ルドル曰く、矢には魔法が練り込んである。

 次に放った矢は、突き刺さる瞬間に炎が纏い、破裂音と共に弾けた。

 その次に放った矢は、見当違いの方向に向けて放ったが、理不尽な曲線を描き、的に刺さった。


「そしてこれが最後だ」


 ルドルは弓を構えたが、矢を持たず大きく弦を引けば、そこに光の矢が現れた。

 その矢は放たれる事無く、弦を戻し光の矢を消す。

 それは、爆発力が大きく、訓練場が壊れてしまうから。

 他にも氷、炎、雷の矢を放てる、と言う。


 両手で後頭部を触りながら見ていたロンダも、ルドルと交代し槍を持ち構える。

 槍を大きく振りかぶり、投げれば風を切って突き刺さるが、これも重力を無視し放物線は描かなかった。

 そして槍の尻から、ごくわずかに細い魔法の糸がロンダの手に繋がっているのをレイルは見えていた。

 そして予想通りロンダの手に戻る。

 その他、刃先や両刃に魔法を載せて、ルドルと同じく、炎、爆裂、雷を出せる。

 これがA級の力、力量なのだろう。

 レイルも他には隠し持っている何かが無いかと聞かれたのだが、魔法は見せない。

 なので、腰袋から、持って来た投げ針、昔使った刺突武器を取り出し、魔法など掛けず、ルドルと同じ距離から普通に投げ、的を見事に貫通し、壁も貫通し、地中深くに突き刺さり無くなった。

 レイルは、これくらいなら二人の力量を見て、普通だろうと二人をチラ見したら、またもや上を行っていたらしく驚愕の表情になっていた。


 広間のテーブル席に戻り、その日はこれからの予定などを簡単に話し、レイルは二人と別れた。

 それからの日々は、ロンダとルドルが依頼を受け、ギルドでレイルと待ち合わせて打ち合わせる。


 そして出立し、依頼を遂行し完了する日を送る。

 さすがにA級である二人の受ける依頼は、簡単では無い依頼が多かった。

 が、三人になった事で、怪我も無く予想外に簡単に、順調に遂行していた。

 二人はレイルが仲間になった事によって、さらに難関な依頼を受け始める事となる。


 先を歩くロンダ。


「ルドル、レイル、この先だ」

「おぅ」

「ん」


 薄暗い洞窟の奥が魔物の群れが犇めき大騒ぎだ。

 今回の依頼は、ウイルシアン王国から離れた洞窟に、いつしか住み始めた、ゴブリンロード、オークロード、オーガロードが、多数のゴブリン、オーク、オーガを纏め上げ、町を襲っていた。

 襲来は事前に把握していたギルドが依頼をだして、受けた数組の冒険者を、町の近くで待ち伏せ、討伐しようとしたが、あまりにも魔物の数が多かった。

 町は辛うじて助かったものの、依頼を受けた半数以上の冒険者は全滅し、負傷者も多発していたのが現状。

 その拠点が分かり、数組の冒険者が討伐に行ったが、洞窟と言う地の利が、魔物を有利にしていた事もあって、帰ってくる冒険者は少なかった。

 そこで最終的にロンダ達三人が依頼を受け洞窟に向かった。


 洞窟奥深くの大広間では、現在魔物数百体と三人の乱戦が勃発している。

 獣臭が立ち込め、血生臭い上に鉄の匂いが混ざり、辺りは魔物の血で染まってる。

 ロンダは槍を高速回転させて怯ませ、連撃で複数体を突き刺す。

 突き出す刃先からは、時に炎、時に雷で爆ぜ、圧倒する。

 ルドルは、二人の援護で矢を放つ間に、近づくゴブリン、オークをガントレットで次々に殴り倒す。

 少し離れているレイルは二人をチラ見しながら、あくまで普通に切り飛ばし、自分のペースを極力二人と同じに、合わせるようにしながら、サクサク、切り飛ばしている。

 ロンダが乱戦の中、さらに奥深くにいた魔物の三体のロードを確認したが、囲まれていたので手一杯だった。


「ルドル! レイル! この奥にロードが! 親玉がいるぞ!」


 怪我も無く討伐しているルドルも、今は弓が放てない程、ガントレットが唸りを上げ、廻りの魔物で手いっぱいだった。


「だーっ! くそっ! こっちもゴブリンだらけで動けない! 手一杯だーっ!」


 レイルの周囲も同じようにオーク、オーガが、レイルを倒そうと犇めいていたが、二人が苦戦し始めている、と感じ、スランとの手合わせよりは、ほど遠く弱めに戦っていたレイルだが、少しだけ強めに前方周囲の魔物を切り飛ばして踏み込み始め、ロードのいる奥に向かって行く。

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