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第12話 パーティ

 レイルを見つけ、決めた二人。

 半分自慢話だったが、そこは突っ込まなかったレイル。いや、突っ込めなかっただけなのだろう。


「でも……何でD級の……俺なんかが」


 今度はルドルが答えた。


「実はさ、俺とロンダは、一つだけ特化した魔法が使えるんだ」



 ルドル曰く、それは昔、いつも二人で行った修行で得た力で、二人同時に魔法感知を合成し共有すると、相手の隠し持っている力が見える。

 ただ何を隠しているかは見えない。

 その人の中の何か、その強さの指数が見える。ただ難点もある。

 戦闘時は無防備になるので使えない。

 ただそれだけの、たいした魔法でもないので、普段はほとんど、いや、ほぼほぼ使わない。


「はぁ……」

「そこで探している俺達の見た中で、指数が跳ね上がったのが君さ、レイル」


 見破られているのか、カマを掛けられているのか魔法で調べればすぐにわかる。

 が、それも察知されては困るのでレイルはダメ元で、見破られたら仕方がない、と苦肉の策に出た。


「俺は剣士……ですけど、魔法も……ほんの僅かしか使えませんが……」


 心の中で身構えるレイルだったが、取り越し苦労に終わる。


「俺達が欲していたのはレイルの剣技だよ。レイルは剣技を得意としているんじゃないかってさ。そう思ったんだ」


 レイルは内心、ホッとしていた。

 だがしかし、この話はレイルにとって渡りに船である。

 ルードとの約束でもある、仲間を作れる。レイルの頭を悩ませていた、超難関だった仲間づくり。


「俺は……どうすればいいのでしょう……か」


 食いついたようなレイルに、ロンダが嬉しそうに前のめりになる。


「お、やっと食いついたね。レイルの思っている通りだよ。俺たちとパーティを組んで一緒にやらないか?」


 ルドルも嬉しそうに話す。


「そうだよ、パーティを組もうじゃないか」

「俺とパーティですか……でもD級ですけど……」

「うん知っている。でも実力はA級に近い。いや、俺達と同じA級だと感じられたよ」


 レイルは二人と話をしている中で、密かに知られないように、極微量の魔法で調べ悪意の無い事が判明していたので了承する。


「俺で良ければ……お願いします」


 聞いた二人共が、笑顔で拳を上に上げ叫んだ。


「よっしゃーっ!」

「やったーっ!」


 周囲の冒険者達が、何事かと三人を見たが、ギルドでは多少の事は気にされないので特に何もなくそれだけである。


「でも俺……酷い人見知りで……」


 笑顔のロンダがレイルの肩を叩く。


「大丈夫、大丈夫。俺たちが治してやるからさ」

「何か文句言われたら、俺たちがぶちのめすからさ。安心しなよ」

「あ、いや、そこまで……」


 こうして、レイルとロンダ、ルドルの三人パーティが決まった瞬間だった。


 さっそくロンダとルドルは立ち上がる。レイルは狼狽えながらも、眼線を二人に向けた。

 ロンダが嬉しそうにレイルを見る。


「よし、訓練場に行こうか」


 すぐにルドルが動き、受付に向く。


「じゃあ俺が許可貰って来るわ」

「え?」


 既にルドルが受付で話をし始めた。

 ロンダが椅子を仕舞いながらレイルを見る。


「どうしたんだよレイル。折角仲間になったんだから、力量を計ろうよ」

「力量……ですか」

「それに俺達の力も見てほしいしさ。どれだけ力があるのか、互いに見ておけば、その方が安心だろ?」

「それは……そうですけど……」


 レイルはロンダの手の平で、肩を軽く二度叩かれる。


「レイル、ルドルが行ったから俺達も行こうか」


 立ち上がるレイルは、ロンダの後ろを歩いて地下にある広い訓練場に来た。

 手配したルドルは手際も良く、先に来ている。

 ロンダとルドルは準備運動に入ったが、レイルは、ただ二人をチラ見しながら立っているだけ。

 ただし、それは外見だけで、レイルは二人の力量を調べていたから。

 その結果、二人共甲乙つけがたいほど、A級らしい同じ強さだった。が、ミャウには到底及ばず、二人がかりで、触手二本のスランと手合せしても厳しそうな程だ。

 なので、レイルにとっては手の内も見せることなく、普通の手合せになるだろう。

 この訓練場には、観覧席、若しくは観客席のような見学席が設けてある。

 何かの催し物の時にでも使うのだろう。

 勿論三人の手合せでは誰もいない――はずだったが、数人の女性が黄色い声を出し、手を振っている。


「ロンダ様―、頑張って―」

「キャー」

「ルドル様もー、負けないでねー」


 レイルは訳も分からず面喰っている。

 苦笑いのロンダ。


「レイル、悪い。いつの間にか取り巻きに知られたみたいだ」


 ルドルも、青い髪を片手で掻きながら苦笑いで同調する。


「さっき上で聞き耳立てていたのかな。悪い悪い、レイル、でも気にすんな」


 応援している女性達は、冒険者らしいが、二人を追い駆ける、親衛隊だったようだ。

 二人に集中し、レイルは落ち着きを取り戻す。

 まずは自分たちの手合せをレイルに見てもらおうと、中央で対峙するロンダとルドル。


 ロンダが中腰で、歩幅を広く取り半身で構え、槍を肩口から横に、切っ先をルドルに向ける。

 相対するルドルは、近接戦なので弓を外しており、両手を軽く上げひじを曲げ、ガントレットで拳を作って半身で構えた。

 刹那、ロンダの速い突きがルドルを襲う。

 だが、金属音と共にガントレットの甲で弾く。

 その流れでルドは踏み込み、槍の内側に入り、右拳をロンダに繰り出す。

 ロンダも手の内を知っているのか槍の柄で受け、後方に飛び、その反動を利用して眼にも止まらない連続突きをルドルに繰り出す。

 ルドルは、ガントレットの甲で受けてはいたが、力強く速い突きを受け続けられない、と判断し横に飛ぶ。

 読んでいたロンダは、体を合わせ、避けたルドルに一撃を放った。

 刹那、ルドルがガントレットで、鈍い金属音と共に、力強くロンダの槍を上に弾き、ロンダの懐に飛び込み右拳の一撃を放った。

 間に合わないロンダは、短剣に近い手ですぐさま抜き、ルドルの拳を剣で受け動作が止まる。

 ルドルが拳を引き、その手を振る。


「こんなもんかな」


 ロンダも短剣を納め、槍を肩で担ぐ。


「レイル、今の手合せ見て、どうだった?」


 見ていた女性達からは、全く見えなーい、とか、速すぎー、とか、強すぎー、格好いいなどと聞こえて来た。

 一部始終を見ていたレイルは、何がどうとか、凄いとか、基準が全くわからなかったので、眼線を下に向け棒読みになる。


「すごいですね」


 ロンダは、担いでいた槍で肩を叩きながら呆れたようだ。


「やっぱりレイルは強いよ」


 ルドルもガントレットを触って、大騒ぎしている女性達を一瞬だけ見る。


「うん、あれが普通だよな。でもレイルは普通の反応じゃないしさ」

「すみません」


 ルドルが腕を大きく回す。


「よし、俺が先に手合せ願おうか」

「はぁ……」


 手合せのルール。

 手合せは真剣で行う。怪我をしても、ロンダとルドルが回復魔法が使えるので問題ない。

 万が一にも、ここはギルドなので安心して戦える。どちらかが先頭不能か降参したら終了。

 レイルも上位階魔法が使えるが、極力出さないと決めているので、使う事など皆無だが、腰袋には回復薬の瓶を三本入れてある。

 これはスランの触手から出たエリクサーだった。


「俺も回復薬……持っています」


 準備運動するルドルが屈伸しながら笑っている。


「いいって、いいって。レイルのは使わなくていいよ。勿体ないしさ。俺かロンダに任せとき」

「はぁ……」


 レイルが剣を抜き、ルドルに向けて構える。

 ルドルは先程と同じにガントレットで構える。

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