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第11話 対話

 その結果は、人前では眼を閉じる、または、正面を向きながら眼線だけ下に向け、ミャウやスラン、へび姫を相手にしているように自己暗示をかけるようにしたら、何とか解消できた。

 ただ、話をしている相手は、変な奴、何だこいつ、と思っているのは明らかだった。


 ここ数日のレイルは、誰もいなくなったギルドで掲示板を見ては、ため息をつき、家に帰る毎日を送っている。

 レイルは何を選べばいいのか判断しかねているのが現状。

 昔受けた、迷いゴブリンの討伐や害虫駆除などは、今になっても少なくなったが張り出されていた。

 が、自身の力に見合う依頼の見当がつかない。

 余りにも暇を持て余していたので、変に依頼を受けず、人に見つからないように周囲を気にしながら、コソコソ、と迷いゴブリン討伐や害虫駆除をしていたのだった。

 そしてまた、ギルドの掲示板を見に行く。

 そんな事を数日見ていれば、レイルの周囲には誰もいないのですぐに眼につく。

 受付嬢のエルサが大きい声を掛けた。


「レイルさーん……おーい、レイルさーん」


 声を掛けられたレイルは恐る恐る振り向き、眼線を下に向け、今スランと話をしていると自己暗示をかける。


「な、何でしょうか」

「こんな時間に来ても依頼は少ないですよ、と言うか無いに等しいです。大きい討伐なら夜か、その他の依頼は朝一番に貼りだされます」

「あ、そうでしたね……また来ます」


 受け答えの出来たレイルだった。その夜、再びギルドに出向く。

 その時間は、依頼を終えたり、新しい討伐を探したり、と冒険者達で賑わっている。

 大半は掲示板を見ているので、レイルにとっては眼が合わないだけ楽だった。

 後ろの方から見ているが、人が減り始めれば依頼も少なくなる。

 レイルが近くで見られるときには、やはり、当然、昼と同じになっていた。


「ダメかぁ……」


 レイルは肩を落とし、今日も諦めギルドを出て行く。

 その姿を、観察するように、調べるように、食い入るように終始見ていた二人の男。

 一人は身長一八〇㎝で、茶髪の短髪、茶眼で大きい筋肉質の男が青いミスリルの鎖かたびらを装備し、小脇に二m程で、刃先が四〇㎝程の両刃がある威圧が掛かっているような槍を抱え持っている。

そして脇差に短剣。


「ルドル、今の男どう思う?」


 ルドルと呼ばれたもう一人の男は、身長同じく一八〇㎝で青髪の短髪、青眼でやはり体格もよく、赤いミスリルの肩当て胸当てそれにガントレットを装備していた。

 その背中には大きく見ただけで強力と感じるような弓と矢筒を背負っている。


「ああ、いいと思うよ、ロンダ」

「じゃ、決まりだな」


 二人共爽やかで、俗に言う、誰が見ても、いい男であった。

 出て行ったレイルの後を追うのかと思いきや、その日は何事も無く見送る形で終わる。


 翌日早朝のギルドに、ロンダとルドル、と言う二人の男は円卓を挟み椅子に座っている。

 中は賑やかではあるが、昨日と同じで、朝早くから貼りだされた依頼を探す冒険者が、掲示板の前でひしめき合っていた。

 一番後ろからレイルも覗こうとしている。が、その時後ろから、レイルは軽く肩を叩かれる。

 レイルは既に察知していたが、殺気も無いので、変に構えたら感知能力がバレてしまうので、知らない振りをしてるのが精いっぱい。

 茶髪のロンダに声を掛けられる。


「やあ、初めまして」


 レイルは視認する為、ロンダに一瞬だけ顔を見て、眼線を下に落とす。


「な、何で、しょうか」

「ちょっといいかな、話がしたいんだけど、決して悪い話しじゃないよ」

「は、はぁ……」


 青髪のルドルの座っている円卓に連れて行かれる。


「初めまして、俺はレーリー・ルドルフ・ツアルム。ルドルって呼んでくれよ。そう硬くならないで椅子に掛けなって」


 レイルは一瞬だけルドルを見て眼線を下に向け、椅子に座る。

 ロンダが椅子を引き、座りながら話す。


「俺の名は、ブラッケア・ロンダルガム・ワイヅフレ。ロンダでいいよ」

「で、な、何でしょうか」


 ロンダが屈託のない笑顔で話す。


「とりあえず自己紹介しようじゃないか。同じ冒険者なんだしさ」

「ル、ルーウェン・レイルツエース・ヴェイル、です。レ、レイルで」

「よし、レイル。まずは俺達の事を知ってもらおうか」

「はぁ……」


 まずロンダが主張する。


「俺はこの槍を得意とする槍士、ランサーだ」


 ロンダ曰く、年は二〇才、冒険者ランクはA級で、中位階魔法の手前まで使える。剣も多少の心得はあるので、短剣も装備している。


 次にルドルが主張する。


「俺はこの背中の弓を得意とする弓士、アーチャーだ」


 ルドル曰く、年は二〇才、冒険者ランクはA級で、中長距離戦を得意とするが、接近戦では、もう一つ得意とするガントレットを使う戦士、ファイターでもある。

 弓魔法以外は低位階魔法まで使える。


 そして紹介し終えた二人は、眼を輝かせ、似合わずレイルの話を聞く姿勢で待っている。

 この流れでは、自己紹介しないと済みそうも無い、と確信した。

 レイルは眼線を下に向け、ミャウに話している、と言う自己暗示をかけると、心が安らいだ。


「お、俺は剣士……一九歳です。この装備での……実践はありません。先日……冒険者の再登録をしました。ラ、ランクは……D級です」


 ランサーのロンダがレイルの剣に興味を持ったようだ。


「レイル。その剣、見せてもらっていいかな」


 レイルは気にも留めずに鞘から逆手で剣を抜き、眼線を下にしたまま握り手をロンダに向け渡す。

 差し出された剣を、ロンダが手に持ち、上に向け眺めるとすぐに驚く。


「レ、レイル、この剣は、もしかしてゴーレムキラーか?」


 レイルは内心、一度見ただけでよく分かるな、程度にしか思っていなかった。


「はぁ……そうですけど。何か」


 ロンダの言葉に、ルドルも驚愕の表情でレイルの剣を見る。


「国宝級の剣じゃないか。どこかのダンジョンの最終ドロップアイテムだぞ? レイル、何処のダンジョンで手に入れたんだ?」

「いえ、以前……俺の剣を折られたんで、代わりに……貰いました。で、出所は……言えません」

「そうかあ、それはそうだよなぁ。俺達の武器も同じような物だしな」

「使いやすい……です」


 レイルは二人と話を続けているが、ミャウだと思い続けているので大きな動揺は無かった。

 ロンダから剣を返してもらい鞘に納めると立ち上がる。


「では失礼し……」


 ルドルが両手を前に出し、焦ったようにレイルを止める。


「あ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ、レイル。もう一度座って俺達の話の続きを聞いてくれないか?」


 ロンダも同じように止めに入る。


「あー、悪かった。レイルの気分を害したのなら謝るからさ、座ってくれないか? ルドルが言うように話の続きがあるんだ」


 そう言われて立ち去るのも悪い、と感じるレイルは眼線を下にしたまま椅子に座り直す。


「で、何の話……でしょうか」


 やっと真面目な姿勢になる二人。

 ロンダが話し出す。


「俺とルドルは、数年前から二人で冒険者を始めたんだ」


 ロンダ曰く、有名な師匠の元で鍛錬し修行した。

 卒業試験では、他の追随を許さない程さがあったので二人だけで冒険者を始めた。

 その強さは群を抜いて次々に討伐や依頼をこなし、今ではA級にまで登り付けた。

 だが、さすがに二人では限界がある。

 そこで暫くは依頼を受けずにギルドに出入りして、自分たちに見合う仲間を探すことにした。


「そこで、やっと俺たちと見合う冒険者、レイルを見つけたんだよ」


 その時のレイルを見る二人の瞳は、期待が膨らむように、とても輝いていた。

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