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黒猫と儀式

『獣神様、獣神様。どうか私の願いを叶えてください』


 草木も眠るような静かな夜。月の光も届かない深い森の中で闇に溶け込む黒猫が一匹、にゃーにゃーと鳴いていた。

黒猫は小さな祠に採ってきた果実などを供え、その前に礼儀正しく座って一生懸命に鳴き続ける。その声は夜の闇、そして周囲の木々に木霊して静かな森に響き渡った。


『我、獣神也、貴様は我に何を求める』


 その響きに応えるかのように低く、ずっしりと重い声が小さな祠の奥の方から黒猫を襲う。


『?!……獣神様、どうか私に人の言葉をお与えください』


 黒猫はその声にやや気圧されながらも深く頭を下げ、自身の願いを伝えた。黒猫の口から零れ落ちるにゃー、という言葉は切実で、必死さを帯びている。

しかし、彼にはなぜ人の言葉を得たいのか自分でもよく分かってはいななかった。町中で話しながら楽しげに歩いてる人間達を見てふと、「人間と話せるようになりたい」という衝動に駆られ、「話せるようにならねば」という使命感を得てしまったのだ。


『いいだろう。ただし多少の犠牲が伴うぞ』


『構いません』


 獣神の警告に即答した黒猫は闇を映す金の瞳を閉じ、獣神の次の言葉を聞くことなく疲労感と共に眠りに落ちた。

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