怒りの鉄槌
【女神セルテナ】
さっきから私の前で、紫色のローブを着て杖を持った痩せた男が熱弁をふるっている。
「大いなる邪神様、人族の輩を倒す力を我々に授けてくだされ‼︎ 貴方を封印した憎き女神ユノラを血祭りにあげましょうぞ!」
…だとかなんとか言ってる。邪神 邪神って言われるとなんだか無性に腹がたつわね。でもそれよりも、私としては今情報が少なすぎて何がなんだか分からないしそれにいくらあのユノラでも勝手に神をしかも魔王を討伐したこの私を封印できないだろうし、ユノラの力では到底無理だと思う。 …以上のことを踏まえて、今はこの男から情報を聞き出そうと思う。
「「おぉーーー 邪神ジャーク様〜」」
「ジャーク様‼︎ 我らに力を‼︎」
とかなんとか言ってきた。邪神ジャークとかネーミングセンスなさすぎ。ちょっと話してみようかな。
「…我が名はセルテナ。ジャークではない。何故我をジャークと呼ぶのか。答えよ。」
我ながら中々ドスの効いた怖い声だと思う。すると紫ローブの男が
「はい。邪神様。貴方は眠っている間に潜在能力が開花し、伝説の邪神ジャークへと進化したのであります‼︎ のう⁈ 皆の衆!」
「「おおおおおぉーーー ジャーク様 ジャーク様 ジャーク様〜」」
正直言うと、めちゃくちゃうるさいし、腹がたつ。そもそも、神は進化などしない。強くなったり、傷がついたりしても、進化はしない。…はず。と言うことから、ちょっとこいつらデタラメ言ってることが確定したので、脅して情報引き出したら皆さん天に昇っていただきましょうかね?
「そこの男、2人で話がしたい。」紫ローブの男に言う。
「かしこまりました。ジャーク様。私の家へどうぞ。」
「わかった。」
「まず私が何故あそこに眠っていたのか、いつからなのかを教えてほしい。」
紫ローブの男は、少しの間ポカンとしていたが、私を見ると、一冊の本を持ってきた。
「私から話すよりこちらをお読みになった方が分かりやすいかと。」
「ありがとう。 少しの間下がっていてくれ。」
「は! 皆の者、この部屋から出て静かにしておれ。警備は厳重にな。」
「「は‼︎」」
そして皆が出ていくと、私は本を読み始めた。そこまで分厚くない本だ。
「何々?」
『200年前邪神セルテナは、魔王を討伐したことにより、神の中でも絶大な地位を築き、自身を中心とした派閥を作り上げていた。そして、あろうことか神王ゼルディスを暗殺しようと陰謀を企てる。しかし、それに気づいた聖母神ユノラによって、力を封印され今はダルマスの地に眠っている。』
私に関する項目には付箋のようなものが貼ってあり、すぐに見つかった。まず、一言。
「ふざけるなーーー‼︎ ユノラの奴め、血祭りにあげてやる!」
やばい、やばい。理性を失うところだった。にしても、この邪神封印に関する項目はひどく文字数が少ない。まるで何かを隠しているように。そう。隠している 隠しているどころじゃない!
「私が魔王倒したこと以外全部嘘だし!派閥ってもしかして、甘味研究会のこと?あれのどこが派閥なのよ⁉︎ゼルディスって私の父よ?父!なんでお父様を殺さなきゃいけないのよ。全く‼︎」
私が殺気を漂わせているせいか、外がうるさい。
「あぁ、もう!イライラする!ほら、くらえーー!」
〈ドギャーン〉
なんだかすごい音を立てて魔法が暴発してしまった。神として不覚。今私の眼の前では、地獄ができていた。燃え上がる屋敷。あ、人に燃え移った。叫ぶ人々。私が復活したのがばれないようにするために、自然災害に見せかけてこの村を人ごと全部消すことにした。
その名も、
「天変地異‼︎」
今度は自分の力で魔法を放てた。ここ200年魔法使ってなかったしな〜。まぁ訛ってる気はしないけど。
そしてしばらくすると、大雨がこの集落を流れる川の上流で降り出した雨もちろんこれも私の魔法の効果。
「うわぁ!逃げろ〜!ウグッッ!なんだこれ、障壁か⁉︎」
ご名答。それは私が作った物理障壁。人じゃぁ砕けないと思う。もちろん集落をぐるっと囲んでいますとも。
「お!流れてきた。」
音を立てて川の水が集落に向けて流れてくる。勿論障壁があるから通り抜けられない。けどのぞ強度弱めにしたし、もうしばらくしたら決壊するかな。
「さて、一仕事しますか。」
私は、集落全体に記憶を消す魔法と、転移の魔法を放つ。これで哀れな邪神信者たちも報われる。と言うのも、記憶というのは、なかなかの魔力になる。彼らの生きるために必要な記憶以外は、私の魔力としてもらっておいた。で、その魔力で、安全で快適な近くの年に突っ込んどいてあげて、かつ、あの紫ローブの男の家にあったお金を均等に配分しといたから、しばらくは食うに困らないだろうし。実はあの男私をダシにして集落の人からお金を巻き上げてたみたいなのよね。まぁ初めて会った時からそれが感じ取れたから、あいつだけは、洪水に飲まれて、死んでもらおうと思う。あいつ性根腐ってるから、助けてもまた同じことすると思うのよ。だから死んでもらって、その魔力を渡してもらいますっと。実は人間の死ぬ時って、かなりの量の魔力が回収できる。記憶や、その他諸々。生まれたばかりの子供でも、爆裂術式を展開して三十発ぐらい放てるくらいの魔力が回収できる。だけど、回収するにはいくつか条件があって、この仕事専門の神なら条件とかいらないけど、それ以外だと
・回収される者を視認できる範囲にいること
・膨大な魔力を回収する者が有していること
・回収されるものと面識があること
の3つ。場合によっては条件が増えたりもする。私は神だから、膨大な魔力を有しているし、あいつのことも見えてる。それにさっき会って話した。
「うがッッお助けください!ジャーク様ーー‼︎」
やっぱりそのジャーク様って名前気に入らない。あ、あいつ死んだ。
「良し。回収♪回収♪ 頂きまーす!」
「命を失いしこの者の力を我に還元したまえ 魔力吸収‼︎」
男の体から光が出て、私の手のひらにの吸い込まれた。
わたしの耳には水が建物を、森を飲み込む音が聞こえていた。
まるで全てを飲み込む闇のように…。