第六話 封印
冒頭に少しだけ過去のお話が入ります。
―第六話―
封印。
十八年前
「おい、レオン。こんなのを設計して、どうする?お前にはもうGA01(ゼロワン)があるじゃないか。」
「俺のじゃねぇよ。」
「なら、リズへのサプライズプレゼントか?」
「いいや。俺にもリズにもこれは扱えない。」
「じゃあ、誰が、何のために使う機体なんだよ?」
「未来へのタイムカプセルみたいなもんさ。」
「意味がわからん…」
「出来た。GAリベルタ! よし、ドクトル・パーフェクトのところに持っていこう。」
「今回ばかりはお前が理解できない。」
「いずれわかるさ。このリベルタを扱える人間は、今現在、存在しない。いや、まだいないと言ったほうが正確だな。」
「??」
「ジョー、お前にリベルタのキー・コードを預けておく。今からそう遠くない未来に、こいつが必要になる時が来る。その時までこいつは封印しておく。リベルタにふさわしいパイロットに渡してくれ。」
「あぁ… ほんとにどうかしちまったのか、お前?」
「ふふ。さぁて、リズの寝込みを襲いに行くぞ!!」
「一人で行け。ドクトルにはいつ渡す?」
「俺が渡しておく。じゃあな、おやすみ!」
「行っちまった… なんなんだ、あいつ。」
現在
「それが今か… リベルタにふさわしいパイロットとは、おそらくリオ。あいつにはそれがわかっていたのか?」
実際、リベルタが完成してから内緒でキー・コードを入れて動かそうとしたが、うんともすんとも言わなかった。このことからリベルタは、リオ専用機ということだろう。
「話す時がきたみたいだな。」
ツヴァイ・レイボルト、GA格納庫
「キャプテン。」
「リオ、もう怪我は大丈夫か?」
「はい。それよりも…」
「わかっている。リベルタのことだろう?」
「はい。でも、ここは格納庫ですけど…」
「リベルタはここにある。」
「GAなんですね? なんとなく予想はついていましたけど。」
「こっちだ。」
「これは…」
「今から十八年前、統一戦争終結間近にレオンによって造られた。『未来へのタイムカプセル』らしい。」
「お父さんが… 私に?」
「あいつには何故か君が産まれ、GAに乗る未来が見えていたみたいなんだ。」
「タイムカプセル…」
「君に十字架を背負わせることにあいつは何ら責任を感じていなかった!!」
「そんなことありませんよ? お父さんは私に託してくれたんです。本当の平和を勝ち取る手段を。戦争を終わらせる方法を。」
「それは… そんなことは、俺たちがやるべきだった! 俺たちで戦争を、争いを終わらせるべきだったんだ! 君たちのような新しい世代へと積み残していい物ではなかったのに…」
「私は、黒獅子と鬼姫の娘ですよ? 戦争なんてあっという間に終わらせちゃいますよ。それに、これは私の夢でもあったんです。両親のようにカッコよくGAに乗って、人々を護る。」
「だが、時代が時代なら、君は普通の生活を送っていたはずだ。死と隣り合わせの今とは全く違う人生を。」
「私、GAに乗る以外に取り柄が無いんです。料理も家事もほとんどできないし。私にはGAしか残されてないんですよ。私の夢を、存在意義を奪わないでください。」
「リオ… ふがいない俺たちを許してくれ。だが、ひとつだけ反論させてくれ。」
「?」
「君の存在意義はGAに乗ることだけじゃない。君が来て、艦には笑顔が増えた。以前より一層ファミリーになれた。君は俺たちの太陽なんだ。だからそんなさびしいこと言わないでくれよ…」
「キャプテン… 最近涙脆くなりました?」
「そういうリオだって、泣いてるじゃないか。」
「えへへ、お互い様ですね。」
「リオ、君は俺にとっても娘みたいな大事な人だ。」
「ありがとうございます。ジョーおじさん。」
そのあと、二人は主にレオンとリズの昔話を暴露するというかたちで、話し込んだ。絶え間ない笑顔に包まれながら。
「リオ、リベルタは君専用機だ。そしてこれが封印を解くキー・コードだ。」
「はい…」
「試しに動かしてみたらどうだ?」
「大丈夫でしょうか?」
「君にしか扱えないさ。やってみろ。」
操縦席に座り、キー・コードを入力するリオ。
「不思議… こんなに違和感無く動くなんて…」
十八年もの間封印されていたとは思えない滑らかな動きをするリベルタ。
「装備はその都度最新のものに代えている。戦場での力は未知数だがな。」
「初めまして、リベルタ。これからよろしくね?」
「無事に動いたようだな。」
「はい! ありがとうございます!」
「礼なら君の父親に言ってくれ。」
「いいえ、キャプテンにも言わせてください。」
「なら受け取っておくよ。俺はリベルタを連合軍所属GAとして登録しなければならない。君は先に休むといい。」
「はい。おやすみなさい、ジョーおじさん。」
「おやすみ、リオ。あまり夜更かしするなよ?」
専用機を与えられて子供のように、はしゃぐリオにそう言っておくが、おそらく彼女は明日の朝、目の下に隈を作って姿を見せるだろう。さながらあの時、寝込みを襲われた翌朝のリズのように。