第五話 リベルタ
ついに専用機、ロールアウト!
―第五話―
リベルタ。
「申し訳ありません、キャプテン。私がもっと注意していれば。」
「いや、リオは悪くない。俺が迂闊だった。」
「キャプテン、軍本部から通信です。」部下が心配そうに告げる。
「俺の部屋につなげ。」
一時間後
「減俸で済んだのが奇跡だ。いったい何が?」
「キャプテン!」
「リオ。俺は平気だ。 …もしかしてリズに?」
「はい、母に頼んで。勝手なことをしました。でも、私にも今回の件は…」
「気にするな。でもありがとう。君たち親子は命の恩人だ。冗談抜きでな。」
普通なら、良くて謹慎、最悪死罪モノの失態を犯してしまったのだが、リズが軍上層部を説得して奇跡的に減俸だけで済んだ。後日リズに感謝とお詫びの連絡を入れたが、見返りに最高級レストランでリズ・リオ親子に食事をおごることを求められた。
それから数日、戦闘は起きず、精神的に張りつめた日々を送ることになった。
その頃ヴァ―ヴァリアンでは、
「マリア、テス。本当によくやってくれた。おまえたちには、専用のGAを与えよう。どんな要望も叶える。自分の好きな装備のGAを造ろうではないか。」
「ありがたき幸せです。」
「ほんと? やったわ!」
「だが、少し時間をもらう。特注品を造るのだからな。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「じゃあ、さっそく設計士に言ってくるわ!」
小躍りして行く二人。嬉しそうだ。
「…さて、ジョー、リズ。どう動く?」
数日後
「キャプテン、来ました! ヴァ―ヴァリアンです!」
「久しぶりだな。GAの発進準備だ!」
「リオ・グランデ、エディンバラ、出ます!」
リオを筆頭にパイロットが続々と出撃していく。
旅団側もGAを多く出撃させているが、マリア、テスはまだのようだ。
「何故あの二人は出てこない?」
「こいつら、以前と動きが違う!?」 リオが苦戦している。
「もしや、あの小規模な戦闘はリオの動きを研究するためだったのか?」
そうなると危ない。いくら天才的な操縦技術を持っていても、癖や一瞬の隙を狙われるとあのリオでも落とされるかもしれない。
「このぉ! まだまだぁ!」
「リオ! 後ろだ!」
「え?」
「エディンバラ、被弾! 機体稼働率58%に低下!」
「これしきの傷で!」
「囲まれているぞ!」
だが、やはりやられているままでは終わらない。驚異的な動きで周りを囲んでいた敵を殲滅。
「まだやれます!」
「さすがだ。リオ・グランデ!」
「この声は、マリア・レーヴィ。」
「こんな攻撃でやられては面白くないからなぁ。見よ!これが私の新しい相棒、ヴァルキリー!!」
「新型GA?」
そう、リオの眼の前に現れたマリア。彼女のGAは以前のセルデュークではなく、彼女専用に開発された、ヴァルキリーというGA。彼女の要求をすべて実現した機体。まさしく戦場の聖女にふさわしい、『戦乙女』。
「くっ、早い! それにパワーも!」
「どうした! その程度だったのか、貴様は!?」
「うぅおぉぉぉぉ!!」
「そう来なくてはなぁ!」
「だめ! 防ぐので精一杯…」
「機体稼働率30%に低下! 危険です、キャプテン!」
「わかっている! 撤退しろ、リオ!」
「しっぽを巻いて逃げるのか?」
「それはあんたよ!!」
「そんな子供だまし、私には通用しない!」
「きゃあ!!」
「しぶといな。なら、これでどうだ!」
「うそ…活動限界? 動いて! 動いてよ!」
「さらばだ。リオ・グランデ。」
ヴァルキリーから放たれた閃光がリオのエディンバラを直撃する。
「リオ!!!」
エディンバラが粉々になる。コックピットから外に投げ出されるリオ。
「もし生きていたら、また戦おう。」マリアが帰艦していく。
「リオ! リオ! くそ!俺が出る!」
なんということだ。世界の希望をここで失うわけにはいかない。レオンの忘れ形見を。
「行くぞ、相棒。」
「ジョー・カタオカ、GA02-Bs、出るぞ!!」
彼が統一戦争を戦いぬいたときの機体、GA02-Bs(通称:バッファス)で出撃する。
「リオ、待っていろ。」
投げ出されたリオを回収し、帰艦する。
他の機体も即座に撤退させ、ツヴァイ・レイボルトにも戦闘区域からの撤退を命じる。
大敗だった。
「あれ?私、どうしたんだっけ? そっか、マリアに負けちゃったんだ。それで、外に投げ出されて…ここ、どこだろう?」
「あれは… お父さん?お母さんもいるし、あの小さい女の子は…私?」
「幸せそう。みんな笑顔で。 …戻らなくちゃ。またみんなで笑えるように、生き続けなきゃ。」
「うぅ…」
「リオ!?」
「ジョーおじさん…?」
「よかった… 目が覚めて。」
「泣いてるの?」
「そんなわけあるか。泣いてなど…」
「顔がぐしゃぐしゃだよ? うぐっ…」
「無理をするな。一命は取り留めたが、まだ安静にしていなくてはならない。」
「戦闘は?」
「負けたよ。我々は撤退した。それよりも今は治療に専念しろ。」
「リベルタ。」
「え? 何故それを…」
「夢を見てたの。お父さんとお母さんと小さい私が笑顔に包まれていた。その時この言葉がふっと浮かんだの。ジョーおじさん、何か知ってるの?」
「傷が癒えたら、話そう。今は休め。」
「うん。おやすみなさい。」
「ドクター、リオを頼んだ。」
リベルタ。まさか再びその名を聞くことになるとは。
レオン、これがお前が望んだ未来なのか?
お前は娘に十字架を背負わせたかったのか?
世界の命運を。
そして肝心のお前はどこにいる?
無責任だとは思わないのか?
それともお前にはすべてがわかっているのか?
その疑問に答えは返ってこない。