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第三話 グランデの因縁。

長めです。

いままでが短めだっただけですかね。

―第三話―


グランデの因縁。



連合側は、リオの乗るハノーヴァーのほかに、メロヴィングとノルマンがそれぞれ二機ずつの計五機。対する旅団側は、マリアのセルデューク、テスのヴァルダナ、一般兵の乗る、セレス、ケメナスの計四機。数で言えば連合側がリードしているが、旅団はゲリラ戦法を得意とするので油断はできない。


「はあああああああ!!」 リオが敵機セレス、ケメナスを難なく撃墜する。

だが、連合側の機体もリオ以外はほぼ全壊に近い状態で帰艦してきた。


リオとマリア、テスが対峙する。


歴史にはターニングポイントというものがあるが、今思えばこの三人が戦場であいまみえたこの時が、そうだったのかもしれない。


「マリア、連合にもちょっとは楽しませてくれそうな奴がいたみたいねぇ。」

「テス、舌舐めずりはやめろ。あやつは私の獲物だ!!」

マリアがリオに向かって、神速ともいえるスピードで襲いかかる。

「おいてかないでよ、堅物ちゃん。」 テスもそれに続く。


「わたしの大事な仲間を、よくもぉ!!」 旅団の実力者二人を前にして、全く物怖じせずに立ち向かうリオ。


「グランデ一家はどいつもこいつも血の気が多いのか?」 あの父と母にしてこの子あり、か。不思議と不安はなかった。リオは必ず帰ってくる。そう確信していた。


「ほぅ、この私の一撃を受け止めるとは。貴様、できるな!」

「ごちゃごちゃ、うるさい!!」

「仲間はずれにするんじゃないわよ!」 テスが背後からリオに斬りかかる。

「テス、手を出すな!! さっさと帰艦しろ!」

「あんたはあたしの上官か!?」 テスとマリアが仲間内で争い始める。

「こんのやろぉおお!!」 そこにリオも混じり、三つ巴の様相。


「信じられん。あの二人に引けを取らずに渡りあっている? さすがリオだ。」

目にも止まらぬスピードで火花を散らす三機。

だが、戦闘はいきなり終わる。敵軍艦、ヴァ―ヴァリアンが三機に向かって砲撃を始めたのだ。


「仲間もろとも攻撃するだと!? リオ!! 応答しろ!」

「キャプテン、私は大丈夫です!! 敵機が引き上げていきます。」


マリア、テスも無事だったようで引き返していく。戦闘をやめさせるための威嚇射撃だったようだ。


マリアがリオに振り向き、

「貴様! 名は?」

「リオ・S・グランデ。」

「マリア・F・レーヴィだ。我々は良きライバルになれそうだな。今のところは生かしておいてやる。また戦場で会おう。」

「テス・ラーゲットよ。一応自己紹介しておくわ、よろしくね、子猫ちゃん。」

引き上げる二機。


そこでジョーは目を疑った。

「あれは、GA03-Dg?」 まさか、そんなはずは… いや、確かに敵軍艦に寄り添う形で出てきたのは、あの機体だった。


「キャプテン、リオが帰艦します!」 部下の声ではっとする。

「あぁ、すぐさま修復にかかれ。」


「リオ・グランデ、帰艦しました。」

「無事かリオ? 素晴らしい働きだった。今の戦闘を見れば、黒獅子も鬼姫も驚くだろうな。」

黒獅子とは、レオンの異名。鬼姫とは、リオの母親の異名だ。

「やめてください、キャプテン。そんなこと言ってると…」

「どうなるんだ?」


「キャプテン、通信が入ってます。なにやら評議会議員の方みたいです。」

部下が知らせてきた。


「はぁ、やっぱりきた…」 うんざりした様子のリオ。

「そういうことか、リオもきてくれ。鬼をなだめるのは俺の手には負えん。」


「俺の部屋に通信をつないでくれ。」



「ちょっと!! ジョー!!」 最初からクライマックスのようだ。

「やぁ、リズ。元気そうじゃないか。」 モニターに写しだされた、絶賛激怒中の美女にあいさつする。

「それとも、エリザベス・グランデ評議会議員、とお呼びしたほうが?」

エリザベス・グランデ。先ほどの“鬼姫”とは彼女のこと。元の名前は、エリザベス・フィオネ。“鬼姫リズ”と呼ばれた優秀な地球連合軍のパイロットだった。レオン、ジョー、そしてもう一人、とともに地球連合統一戦争を終結に導いた彼女は、戦後、レオンと結婚し、リオを産んだ。夫の行方不明という悲劇を味わいながらも娘を立派に育てあげ、評議会議員になり、鬼姫は政治という舞台で再び活躍している。


「そんなことはどうでもいいの!! さっきの戦闘でハノーヴァーに乗っていたのは誰なの!!」

「あの戦い方を見れば、わかるんじゃないのか? 黒獅子と鬼姫の片鱗を見せつけたんだからな。」

「やっぱりリオなのね… 危なっかしくて見てられなかったわ。」

「あの、お母さん…」 リオがおびえたように話しかける。

「リオ! どこか怪我は無い? 大丈夫なの?」

「うん、平気だから、ジョーおじさんを怒らないであげて?」

親子のやりとりを眺めていたジョーが、長年抱いていた疑問をぶつける。

「それにしても… お前らは本当に親子なのか? どう見ても姉妹にしか見えないぞ?」

どういうわけだか、リズは全く歳をとっていないように見え、十八年前の統一戦争の頃から見た目はほとんど変わっていない。


「あらやだ、ジョーったら。私には心に決めた人がいるのよ。」 にやけながらそう言う彼女の怒りはだいぶ解けたみたいだ。

「とにかく、リオ。無事でいて頂戴? あなたは私の大事な娘なんだから。」

「わかってる。ありがとう。お母さんも気を付けてね。」


「リオ、ここからは、グランデ議員ととても大事な話がある。席を外してくれないか?」

「わかりました、キャプテン。それでは失礼します。」

リオが立ち去るのを見送ってから、話し出す。


「グランデ議員。」

「何よ、改まって。」

「先ほどの戦闘で敵軍艦のそばに、GA03-Dgと思われる機体を確認した。」

「それって…」

「俺の見間違いかもしれないので、上への報告はまだしていない。」

「そうね。でも極力急いだほうがいいわ。」

「ヴィシュート、なんだろうか?」

「…それはわからないけど。もしかしたら、旅団が機体を奪って使っているのかもしれないし。上には酷似した機体を確認しました。とだけ報告しておけばいいわ。」

「さすがは政治家だ。」

「あら、馬鹿にしてるの、キャプテン?」 皮肉を言いあえる数少ない仲間だ。

「私のほうでも調べてみるわ。リオをお願いね。」

「あぁ。また近いうちに。」


通信が切れる。GA-03Dg(通称:ドラゴニア)の正規パイロットは、ヴィシュート・イーストランド。レオン、リズ、ジョーとともに統一戦争を戦い、戦後レオンと同じく作戦中に行方不明になった。その彼が、旅団と何らかのつながりがある? もしかしたらレオンのことも何かわかるかも知れない。だが、リズの言うとおり、旅団が奪って勝手に使用していることもありうる。この時よからぬ不安を覚えたことを、彼は自分でも認めようとはしなかった。


アソシエイト旅団軍艦、ヴァ―ヴァリアン


「マリア、テス、仲間割れとは情けないな?」

「申し訳ございません、ボス。この女が横やりを入れてきたもので。」

「悪かったわよ。でもこの堅物が偉そうに命令してくるから。」

旅団の二強ともいえるエースパイロットが二人して説教をされていた。

「お前たちはいつもそうだな。なぜ同調しようとしない?」

「そもそも合わないのよ、あたしのような優雅な人間と、このブシドーお嬢ちゃんは。」

「貴様が優雅? 下品の間違いではないのか?」

「何よ? 決着つける?」

「望むところだ。」

「…待て。二人とも落ち着け。お前たちと互角に戦っていた、連合の小娘の名は?」

「リオ・グランデです。」

「…グランデ。またしてもその名か。」

「連合の英雄さんと同じ名前じゃない? 評議会議員にもいるみたいね。」

「グランデの呪縛か…」

「ボス? 呪縛とは?」

「お前たちには関係ないことだ。とにかく仲間割れはやめろ。」


ミランの部屋での説教が終わり、立ち去る二人。

「やつらの仲の悪さにはいつも悩まされる… それにしても、リオ・グランデ。レオンとリズの子供か… 皮肉なものだ。」



「ボスの様子、何か変だったな。」

「そうねぇ、何か知ってるのかも。」

「ところでテス、貴様はなぜ私についてくるのだ?」

「はぁ? あんたがついてきてんでしょ? さっさとどっか行きなさいよ。シッシッ。」

「ふん!! 私はGAの手入れに向かう! ついてくるなよ?」

「誰が行くか!」

マリアが去るのを忌々しく見つめながら、

「ミラン・ウォーレンとグランデの因縁。なんだかおもしろそう。」

ニタリとしながら歩きだすテス。


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