第十八話 真実
―第十八話―
真実。
「やはりあの黒獅子と鬼姫の娘だけあるな。まるで二人を相手しているようだ。」
「あなたは、お父さんやお母さんとともに戦った、仲間だったんでしょ? なら何故こんなことに!?」
「たしかに連合には不満を抱いていた。統一戦争終結の英雄と俺たちを囃し立てながら、俺はあいつらと比べて冷遇された。それだけではなく、レオンは俺からリズを奪った。」
「何を…」
「あのまま行けば、俺はリズと結ばれるはずだった。幼いときから常に一緒だった! それなのに、あの男が、レオンが俺たちの幸せをかっさらって行った。そこで考えたんだ… レオンがいなくなれば、と。そこで『ジオネル・フォードの反乱』だ。この機に乗じて奴を亡き者にすればいい。計画はうまくいったよ、だが、最後の最後に奴は軍本部に緊急信号とともに俺が裏切ったとの情報を流した。俺は行方をくらますしか無かった… 本当に困った奴だったよ、レオンは。最後の最後まで。」
「そんなの…ただの八つ当たりじゃない!! そんなちっぽけな理由で戦争を起こしたって言うの!? 憂さ晴らしのために、何の罪もない人々をたくさん死なせたっていうの!? ふざけるんじゃないわよ! あんたを信じてついてきてくれた仲間を、本当はそんな理由で傷つけたの!? いい? あんたみたいなちっぽけな男にお母さんはついていかないわ。今も昔も… ちゃんと罪は償ってもらうわ。あんたをここでは死なせない。しっかりと自分のやったことを償わせてあげるわ!!」
「感情で動くところもあの二人そっくりだ。そしてそれは、正義感の上に成り立っているということもな!」
「あんたは今ここで落とす!!」
「怒りで前が見えなくなるのも、さすが親子だ!!」
「ごちゃごちゃ、うるさい!!」
「すばらしい操縦テクニックだ。だが、違うな!」
「うぐっ、あんたなんかに絶対に負けない!」
終始リオを圧倒するミラン。
「そんなものか、グランデの血は?」
ドラゴニアの伸縮するアームがヴュアルを捕える。
「腕が!?」
「ふん!」
「ぐあぁぁぁ!」
高圧電流が流され、ダメージを受けるヴュアル。
「古い機体だからって侮れないわね…」
「まだまだ未熟だな!」
迫りくるドラゴニア。
「これなら!」
「何のつもりだ?」
つかまれていた脚部を撃ち落とし、拘束から逃れると同時に、ドラゴニアのアームを使用不能にしたのだ。
「機転は利くようだな、面白い!」
しばらく攻撃を当てては、離れを繰り返す二機。
「そろそろおしまいだ。落ちろ!!」
「ふふっ。」
「笑っている…だと?」
「後ろ、見てみなさいよ。」
「!?」
「ボス…」
「マリア…」
「マリア、そっちは片付いた?」
「あぁ、そういうお前は手こずっているみたいだな。」
「テスは、負けた…のか…」
「次は、あなたです。ボス、いや、ミラン・ウォーレン…」
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「リオ! 今だ!!」
「とぉりゃぁぁぁぁ!!」
「そういう抜け目ないところも、容赦ないところも、あいつらそっくり…だ…」
墜落を始めるドラゴニア。
「マリア! あいつは死なせちゃダメなの!」
「わかっている!」
「私が、落下を食い止める! お前はボスを!」
落下しているドラゴニアを抑えに入るメリッサ。
「ここまで近づくのが精いっぱいか… コックピット、開いたわ! ミラン・ウォーレン、私たちと一緒に来てもらうわ。」
「好きにしろ… 貴様らの勝ちだ。」
「ツヴァイ・レイボルト! ミラン・ウォーレンを確保! 連行します!」
「これでひと段落ね。」
「いや、そうじゃない。」
「え?」
「テスが、ベリアルを起動させた。」
「何それ?」
「この街も人も、何もかも灰にしてしまう、レーザー砲だ。それを食い止めるには、破壊するしかない!」
「何なのよ、全く!」
ツヴァイ・レイボルト
「キャプテン! リオとマリアが帰艦します!」
「よくやった二人とも。」
「キャプテン! 早く戦闘区域からの全軍撤退を!」
「どういうことだ、リオ?」
「ベリアルと呼ばれる破壊兵器が起動しました。それが発射されれば、私たちは街ごと灰になります。」
「くそ! 止めるにはどうすればいい?」
「破壊しかありません。私とリオでやります。」
「危険だ!」
「大丈夫、私たちを信じて、ジョーおじさん。」
「絶対に生きて帰ってこい。絶対にだ。」
「はい!」
「もちろんです!」
「サン=レイピア周辺の地球連合軍に告ぐ、早急に戦闘区域から離脱せよ。住民を保護している救助艦もだ! ええい、旅団の奴らも死にたくなければ我々とともに離脱しろ!!」
「リオ・グランデ、リベルタ・ヴュアル、行くわ!!」
「マリア・レーヴィ、ヴァルキリー・メリッサ、出る!!」




