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第十七話 決戦

―第十七話―


決戦。


「テス、ヴァ―ヴァリアンは今、我が軍に包囲されている。降伏するなら今の内だぞ?」

「裏切り者のマリアちゃんは、昔の仲間も助けてくれようとしてるのぉ?」

「ぐっ、そうだ…」

「でもぉ、ごめんねぇ。あたしたち、もう覚悟は決めてるの。今ここであんたたちを艦ごと墜とすって。それがあたしたちの、ミラン・ウォーレンの目標だから。」

「そうか… ならば我らもここで決着をつけようじゃないか。」

「やっとその憎たらしい面も声も聴かなくて済むわね!!」

「テス・ラーゲットぉぉぉぉ!!!」

「マリア・レーヴィぃぃぃぃ!!!」


刃と刃、信念と怨念、ついに二人が激突する。



「テスが席を外している今の内に話しておこう。旅団全艦隊に告ぐ。これが旅団長ミラン・ウォーレンの最後の指示だ。今から俺も出撃しようと思う。今までこんなにふがいない指揮官についてきてくれてありがとう。まだ死にたくないと思う者は戦場を離れろ。君たちはよく頑張ってくれた。感謝はすれど、恨みはしない。遠慮せず生き延びろ。それでもまだ俺についてきてくれる者がいれば、君たちの命、俺に預けてくれ。今までありがとう。」


「ミラン・ウォーレン、GA03-Dg 出る!!」


ツヴァイ・レイボルト

「キャプテン! あれを!」

「やはりドラゴニアか。ヴィシュート…」

「キャプテン、あれに乗っているのは…」

「そうだ、ミラン・ウォーレン、いや、ヴィシュート・イーストランドだ。恐らくレオンのことを何か知っているはずだ。リオ、あいつを助けてやってくれ。」

「わかりました。」



「リベルタか、ということは、リオ・グランデ…」

「あなたが、ミラン・ウォーレンね?」

「そうだ。レオンがよく、君の写真を見せてくれたよ。大きくなったものだ。」

「お父さんのこと何か知っているのね! 教えて!!」

「よかろう。だが、俺に勝てたら、だ。」

「そういう熱い展開、嫌いじゃないわ!」


リオとミランの戦闘開始を見て、ジョーが指示をする。

「よし、俺たちも援護だ! 砲撃開始!」


そのころ


「前よりかは強くなったみたいね!」

「テス、貴様は私が嫌いか?」

「今更何を! あんたなんか大っ嫌いよ!」

「確かに私たちは日々反目し合っていた。だが、離れてみて初めてわかった。私は貴様を心のどこかで、信頼していた。お互い憎まれ口を叩きながらも私は、姉を得たような気分だった。相性が悪いのはわかっていた、だけど、貴様がいて安心していたのも事実だ。以前二人でツヴァイ・レイボルトに忍び込んだことがあっただろう? あの時とっさに私たちは姉妹のふりをした。少し嬉しかった… 家族を失った私に、姉が出来たと。少し仲が悪いが心の奥では分かり合っている姉妹になれたと。だから、貴様に… あなたに、まだ生きていてほしい。今度はもう少し仲良く、いや以前のような、いがみ合うような関係でもいい。もうこんなことはやめよう。テス、お願いだ…」

「何よ… ほんとに今更、そんなこと言って… もうあたしは、引き返せないところまで来ているのよ! それなのに、あんたは… ふふ、いいこと教えてあげる。あんたの素性を調べたことがあってね、あんたは両親を『ジオネル・フォードの反乱』で失っている。リオの父親、レオン・グランデもその反乱で行方知れず。」

「そうだ、それがどうかしたか?」

「あたしは、ジオネル・フォードの娘よ。」

「まさか、そんな…」

「言わばあたしは、あんたの両親の仇。そんな奴のことを姉と思ってた? 信頼していた? よっぽどおめでたい頭してるのね。どう? これであたしのことが憎くてしょうがないでしょ? ほら、かたき討ちのチャンスよ、マリア。あたしを殺しなさい!!」

「そんなこと、できない…」

「何腑抜けたこと言ってるの!? ここは戦場よ? あんたがやらないなら、あたしがあんたを殺す。」

「テス… 私を殺すと言ったな?」

「えぇ。」

「ならば、何故泣いている?」

「このあたしが泣いて…いる? どうして…」

「私の知っているテス・ラーゲットは戦いの時、ましてや敵を殺そうとしている時に涙は流さない。」

「あたしの知っているマリア・レーヴィはこんなずるいことはしてこなかった。」

「私がずるい?」

「えぇ、そうよ。ずるいじゃない! 決着をつけようかっていう時にあたしのことを家族みたいに思ってくれていたなんて言うんだもの… ほんとは、あたしもマリアのこと、あんまり嫌いじゃなかったみたいね… あたしとは何もかも正反対。もしかしたらうらやましかっただけなのかもね。」

「テス…」

「…ベリアル、起動。」

「貴様、いったい何を!?」

「終わりよ、マリア。さっきも言った通り、あたしはもう後戻りできない。こんなことまでして、生きていられるはずがない。戦場で死ななくても、裁判で死刑になってどのみち死ぬ。そうじゃないと償いきれないもの。ベリアルが発射されれば、ボロボロになった街も人も跡形も無く消し去ることができる。そして今その照射範囲にはツヴァイ・レイボルトもその他大勢の連合軍も含まれている。ベリアルを破壊して大事な人を守るには、このあたしを倒さなきゃならないわ。さぁ、来なさい。マリア、あんたに会えてほんとによかったと思ってる。生意気な妹がいて、毎日楽しかった… あなたは、あたしにとっての生きる理由だった。ありがとう、マリア。」

「…テスぅぅぅぅぅ!!!」


再び火花を散らし始める二機。

極限の戦いを繰り広げる二人。


「くっ、そうよ、その意気で来なさい! そうじゃないと何もかも失うことになるわよ!!」

「どうして、どうして貴様はぁ!」

「あたしは今まで死に場所を探していた! 自分が納得した相手を探していた! こいつに殺されるなら本望だ、って。それが今やっと見つかった。いえ、前からそこにあったのに見落としていた。なのに、あんたはリオしか見えなくなっていた。それが悔しかったのかもしれないわ!」

「私たちは案外と似たもの同士だったみたいだな。」

「えぇ、言うなれば、鏡みたいなね。」

「そこをどけ! テス!!」

「あたしを乗り越えなさい! マリア!!」



「うぉぉぉぉぉ!!」

「おらぁぁぁぁ!!」


交差する二機。


「はぁ…はぁ…」

「ぐっ、そう、それで…いいの…よ…」


地上に落下し始めるアヴィス・インヴェイド。


「さようなら、マリア…」

「テス…」


アヴィス・インヴェイド、大破。



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