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第十六話 暗雲

―第十六話―


暗雲。


「いや、いやよ! そんなの… やめてぇぇ!!!」


「はぁ、はぁ、夢…? なんて夢なの…」

「リオ? かなりうなされていたようだが、大丈夫か?」

「ごめん、マリア。起こしちゃったわね。」

「いや、いいんだ。ひどい汗だな。そんなに悪い夢でも見たのか?」

「えぇ、旅団の戦艦が、世界の都市を焼きつくしていたわ。それなのに… 私はただ、見ているだけしかできなかった…」

「大丈夫だ、リオ。現実のお前ならなんでもできるし、私もいる。怖がることはない。」

「ありがとう。って、なんで私のベッドに入り込もうとしてるのよ?」

「怖い夢を見たんだろう? そういうときは誰かと一緒に寝たほうがいいと思ってな。」

「まぁ、いいわ。抱き枕にしてあげる。」

「ふふっ、寒くないか?」

「うん、暖かい。おやすみ…」

「私も暖かいぞ。おやすみ。」


ヴァ―ヴァリアン


「都市を同時に数か所攻撃するわ。」

「いきなり何を言いだす? 我が旅団は連合と比べ、兵も武器も量が少ないんだぞ? そんなことをしたら、それぞれの部隊が孤立し、囲まれて全滅だ。」

「おとりにするのよ。奴らの注意をひきつけて、私たち本隊は連合の中心を叩く。」

「これ以上仲間は失いたくない…」

「はぁ… ほんとに腑抜けたわね、ミラン! いい? 最終決戦ってやつよ。そのためにあたしはベリアルを手に入れた。連合の中心を焼き払い、国民が動揺している間に乗っ取るの! 反対する奴は消せばいい! あんたの当初の目的を達成するにはもう手段は選んでいられないのよ? つべこべ言わずにあたしに任せなさい。いいわね?」

「くっ、わかった…」

「作戦はこうよ…」


ツヴァイ・レイボルト

「これは、一体…」

「正夢だった、ってこと…?」

艦のクルー全員、いや世界中に放送された映像には…


『こちら、ヨーロッパの中心都市、サン=レイピアです! ご覧のとおり、アソシエイト旅団と思われる軍勢が無差別に破壊活動を行なっています! 近代的で平和の象徴であった街も今はその影もありません。我々報道陣も戦火をくぐりぬけて皆様にお伝えしています! 連合軍も応戦していますが、かえって状況は悪くなっています! うわぁぁぁ!』


『速報です! 旅団の軍勢が今度はアメリカ、ヨークガイア=シティに現れ、破壊活動を始めています!』


『アジアのダイ=テイ=クン・シティも攻撃を受けています!』


『アフリカ、フィジンヌスにも旅団の軍艦が現れています!』



「世界4都市の同時攻撃だと…? なんてことを…」

「嘘、ひどすぎる… こんなの…」

ひざから崩れ落ちるリオ。

「しっかりしろ、とにかく今はこれを止めなければ。テス・ラーゲット…」


「我々は現時点で最も近い、サン=レイピアに向かう。奴らを止める。GA発進準備!」


「リオ・グランデ、リベルタ・ヴュアル、行きます!!」

「マリア・レーヴィ、ヴァルキリー・メリッサ、出るぞ!!」



ヴァ―ヴァリアン

数時間前

「ツヴァイ・レイボルトは今、大西洋上を航行している。そこであたしたちは、サン=レイピアを攻撃するわ。きっと一番近い場所にいる、奴らが来るから。他の地域を攻撃させている部隊は頃合いを見計らって、あたしたち本隊と合流。囲い込んで潰す。これが作戦。」

「待て、それならば後から追ってきた連合軍に囲まれてしまうぞ。」

「その前に主力艦である、ツヴァイ・レイボルトを墜とす。連合の希望でもあるあの艦を目の前で墜としてやるの。」

「ベリアルを使うのか?」

「そうね、せっかくだから使わないとね。」



現在

ツヴァイ・レイボルト


「ひどい… 街がこんな…」

「おい! いたぞ!」

「ヴァ―ヴァリアン… 旅団本隊か… リオ! マリア! 今日こそ奴らを。」


「えぇ… 許さないわ、テス・ラーゲット…」

「今日こそ倒す!!」



「さぁて、始めましょうか。テス・ラーゲット、アヴィス・インヴェイド、出るわ!」




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