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私は今日も知らないふりをする

こんにちは笹倉笹下と申します。

今回の作品はR-18にしようかどうか迷いましたが、ち密な官能表現は入っていないのでR-15にしています。

今回もランダムお題からテーマを選んできました。テーマは「誘い言葉・知らないふり」です。

では、本編へどうぞ。

 私はとある地方の女子校に通っていた。高校まで勉強しか取柄が無く、容姿もパッとしなかった私はからかわれたものの、可愛さは皆無だったため他人の彼氏を寝取るとか奪うということで疑惑をかけられることは無かった。だから女子トイレに連れ込まれることには縁が無かった。でも私の友達であるヨウちゃんは私とは対照的な女の子であった。ヨウちゃんは勉強が苦手だったけれど、きれいな顔立ちをしていた。恋愛に関しても浮名を流し、たくさん女子トイレに連れ込まれたけど、全部勝って帰ってきた。そんなヨウちゃんは私の憧れだった。ヨウちゃんはよく言った。

「私は自分の恋愛についてはちゃんと自分で責任を取っているから、あんたも自分で責任取れるようになるまで、焦らなくていいよ。」

 

 私はヨウちゃんに寄って来る男たちが浮気心で寄って来ているということを風の噂で知っていた。ヨウちゃんもそれを知っていたけど、それでも彼らと付き合った。本当はヨウちゃんが危ない橋を渡り続けていることは知っていた。私にはヨウちゃんのことで踏み込むことを躊躇していた。私の憧れが居なくなってしまうのでは無いかと密かに恐怖していた。だから今でも友達であるはずのヨウちゃんを止めることが出来ない。



叫び声がする。



 ヨウちゃんに話をきいたことがある。これを聞くくらいならヨウちゃんに対しての憧れは保たれると思った。

 「なんで、色んな男の人と代わる代わる付き合うの。」

 ヨウちゃんはうーんと考えた後。

 「私は色んな人に必要とされたいんだ。男たちはみんな私を必要としてくれていて、単に私はそれが嬉しいんだ。」

 でもオンナはそれを許してくれないってだけさってヨウちゃんは言った。



今まで聞いたことのない音がする。



 私は大学生になった。髪色を変えたり、ダイエットしてみたり、色々挑戦してみた。少しは可愛いと言われるような女の子になったと思う。ヨウちゃんも同じ大学の違う学部に進んだ。ヨウちゃんは少しも変わらなかった。様々な男たちと浮名を流して、たくさんの男に抱かれた。当たり前のようにある噂が流れ始めた。

 「一年の新永陽子は『好きだと言えば』いつでもやらせてくれるらしいぞ」

 私の憧れがゲスな噂によって、堕ちていく。

 ヨウちゃんはいつも私と一緒に居た。そこにオトコがやってきて、ヨウちゃんに囁いて大学の隅にある倉庫に連れていく。私は倉庫の前でいつもコトが終わるのを待っている。

 耳を塞いで、目を閉じて、それでも気配でオトコが次々倉庫に入っていくのが分かる。中で何が起きているか知らないふりをしていた。無理があるかもしれない、でもそうしないと私が汚れてしまう気がした。



自分の前に誰かが立っている。



 戸惑いながら顔を上げた。

 おじさんがいた。私は救われる気持ちになった。このおじさんは私を悪の所業から連れ出してくれる救世主だ。今まで、ヨウちゃんが、憧れの人がどんどん堕ちていくのを見てきた。もうたくさんだ。でもそれも今日までだ。おじさんは言った。

 「何をしているのかな。」

 「中で友達が。」私は初めて自分の声が震えていることを知った。

 「それは知っている。」おじさんの言葉に耳を疑った。

 おじさんは続け様にこう言った。

 「なんで君も混ざらないんだ。友達なんだろう。」そう言って倉庫に入っていった。

 私はその場から一目散に逃げ出した。倉庫の中からヨウちゃんが私の名前を呼んだ気がした。


 悪魔のような誘いを私が振り切れるまで、数週間の時間を必要とした。家に帰って洗いざらいを両親に吐き出した。父の「後は任せろ」という言葉に安堵し、眠り続けた。やっと家からでれるようになった頃には大学は1セメスターが終わっていた。

 私の目の前で起こったことは新聞の社会面を飾ったらしい。ヨウちゃんの精神分析をたくさんの学者が行い、私を責め立てる記事や悲劇の王子さま扱いする記事がたくさんあったらしい。たくさんの記者が私の眠っている間にやってきたらしい。

 オトコたちがどうなったか、おじさんがどうなったかについては知らない。知りたくない。

 精神を病んだ私は大学を転学することになった。次の春に違う大学の入試を受ける。その大学の近くに引っ越すことになっている。


 退学手続きをする際、両親と共にヨウちゃんと通っていた大学に行った。職員の人が深々と何度も頭を下げていた。諸々の手続きが終わり、最後にコトがあった倉庫はどうなっているか聞いた。もう今は取り壊したということだった。


 その大学の門を出た時、何も感じなかったけれど。家に着いた時、私の憧れは偽物だったのかもしれないと思い、泣いた。


※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

楽しんでいただけましたでしょうか。

最後はハッピーエンドで終わらなかったのは、私としても残念です。

まだ慣れていなくて、コメントする場所はあるのかわかりませんが、何かしらの反応があると喜びます。

今回は目を通していただき、ありがとうございました。

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