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『ビトウイーン』

初投稿です。

どうぞ、よろしくお願いします。


「面白いものだな。人間とは。」


ウサギが言った。


「自分たちがやったことなのに、気持ちが悪い、不快だと目を背け、あたかもそんなこと無かったかのように振る舞う。

今も地球のどこかで実際に起こっていることなのに。」


ウサギは、怒っているわけではなく、むしろ憂鬱そうな、それでいてどこか面白がっているような顔で続けた。


「私は、元気に跳ね回ることもできない金属の箱の中で一生を過ごした。

最後は人間に、ナイフで首をかき切られ、毛皮を剥ぎ取られ、肉の塊として捨てられた。

人間はラビッドファーと呼ぶらしい。

なかなか、オシャレじゃないかい?」


ウサギは皮肉な笑顔を浮かべた。


「まだいいほうだろう。」


もう一羽のウサギが言った。


「私なんか、手足を縛られ、全身の毛を無理やりむしり取られたよ。もちろん、生きたままね。

生まれて初めて声を出したよ。

声というより、悲鳴?…いや、断末魔というやつかな。

私はアンゴラウサギといってね、私の毛でアンゴラという製品ができるらしい。

こちらも、なかなかイケてるだろう?」


二羽のウサギはくすくすと笑い合った。


そこに、一匹のオオカミがやってきた。


「やぁ、お二人さん。随分と賑やかだが、なんの話をしてるんだい?」


「人間の話さ。私たちは人間に殺されたんだ。人間の為にね。」


「そいつぁひどい話だなぁ!」


オオカミは尋ねた。


「人間のことが、さぞかし憎いんじゃぁないのかい?」


すると、ウサギは、

もう何回も同じことを繰り返してきたのか、面倒臭そうな口調で答えた。


「別に憎んでなんかいないさ。そりゃぁ確かに死ぬほど痛かったし、実際殺されたが、恨みだとか、そういう感情はない。

そういうのは、生きている者が抱くものだよ。」


「死んでからは、そういうものはどうでもよくなってしまった。

執着というか、拘りというか。」


「そんなもの持ってたって、仕方ないからね。復讐するにしても、もう死んでしまったし。」


二羽のウサギが入れ替わり立ち代り喋った。

そしてまたウサギは、くすくすと笑った。


「それに、君だって似たようなものだろう?」


オオカミは突然の質問に言葉を詰まらせた。


「な、なんのことだい??」


ウサギは目を丸くした。


「君、日本生まれだろう?」


「そうだけど、それが?」


二羽のウサギは顔を見合わせた。


「どうやら、知らないようだね……」


「そうだねぇ…知らぬが花という言葉もあるし、黙っておこうか……?」


しかし、オオカミは気になって仕方がなかった。


「なんだい?教えておくれよ。気になるじゃないか。」


ウサギは、仕方ないか、とため息をついた後、オオカミに説明した。


「君たち日本のオオカミは、人間に皆殺しにされたんだよ。病気の原因だっていう理由でね。」


「そうだったのかい!?」


オオカミは声を裏返らせた。


「知らなかったのかい?君も人間に殺されただろう?」


「僕が死んだ時、バァン!!と大きな音がして、体が吹っ飛ばされて、気付いたら死んでいたんだ。」


「それは人間の鉄砲という道具だよ。」


「そうなのかい!?」


二羽のウサギは呆れ返った。


「君は無知なんだなぁ。」


「いやぁ、お恥ずかしい。」


オオカミはしゅんと尻尾を垂れた。


ウサギはここぞとばかりに尋ねた。


「どうだい?人間のことが憎いかい?

今からでも殺してやりたいかい?」


オオカミは少し考え込んでから言った。


「そうだねぇ…なんていうか、もうどうでもいいかなぁ…。

それに、復讐で人間を殺したら、それこそ人間と同類みたいなもんだし。」


「やっぱり、そうだろう?」


二羽のウサギと一匹のオオカミは、

くすくすと笑った。







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