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カマキリくんのなやみ

作者: 藍京

 ある晴れた日、カマキリ君が野原を散歩していると黄色い花をみつけた。

「あっ、タンポポだ。きれいだなあ」

 さらに近づいてみると、花びらが揺れている。

「あれ?風が吹いてないのに…」

 よくみるとモンシロチョウが蜜を吸っていた。

「キャッ!」

 モンシロチョウはカマキリ君に気づくと、叫び声をあげた。

「なんだよ!おどかすなよ」

 不機嫌な顔をするカマキリ君。

「だって、私を食べようとしたんでしょ?」

「ちがうよ!ぼくは花を見てただけだよ」

「うそを言わないで!」

モンシロチョウは怒って飛んでいった。カマキリ君は誤解された。虫を取って食べるカマキリの習性。逃げられてしまうのは仕方ないのか。タンポポの花が涙でにじんだ。

「ぼくもどっかいこ」

 モンシロチョウの言葉を忘れようと野原から飛び立った。

「ちょっと日陰に入ろう」

 日差しが強く感じたので木陰で一休みすることにした。

「キャー!」

 聞いたことがある声。辺りを見回すが誰もいない。

「たすけてー!」

「えっ?」

枝のほうから聞こえる。カマキリ君は枝のほうへ向かった。そこにはクモの巣にかかったさっきのモンシロチョウ。ゆっくりとクモが近づく。カマキリ君はクモの巣へ飛んでいき、モンシロチョウがかかったクモの巣を切り裂いた。

「何をするんだ!」

 クモは怒った。モンシロチョウは体にクモの糸がまつわりついたまま飛んで逃げた。

「なぜ、じゃまをする!」

クモの怒号はカマキリ君に向けた。カマキリ君はなぜモンシロチョウを助けたのか分からなかった。

「おまえも獲物をとらないと生きていけないはずだ。そのくらい分かるだろ!」

 クモはカマキリ君を一喝した。カマキリ君は頭を抱えて逃げ出した。

 誰もいない木陰でカマキリ君はぼう然としている。

「そうなんだよ。ぼくも獲物を捕まえなければいけないんだ」

 しばらくカマキリ君は考えた。

「そうだ。草を食べていけばいいんだ」

 何とも安易な発想。肉食の虫が草食になれるわけがない。とりあえず草を刈り、口に運んだ。

「うえっ、まずい!」

 口に合うはずがない。それでも自分が変わればモンシロチョウに嫌われずに済むだろうと、自分に言い聞かせて草を食べ続けた。

「う…気持ち悪い…」

 カマキリ君は倒れた。すると、そこへモンシロチョウが飛んでくる。

「どうしたの?」

 草を食べ散らかしたあとを見て驚く。

「あなたには無理よ」

 カマキリ君のそばにきてなだめた。

「動ける?」

「うん…なんとか…」

 モンシロチョウはカマキリ君の周りを飛び誘導する。

「どこへいくんだ…」

 苦しそうにたずねる。

「いいから来て」

 しばらく歩いてみるとそこには水のきれいな池がある。

「ここの水はきれいだから、飲めば良くなるよ」

 カマキリ君は言われたとおり水を飲む。すると胸がすーっと落ち着いてきた。

「ありがとう。命びろいしたよ」

「よかった」

 モンシロチョウは笑った。カマキリ君は調子を取り戻すと羽を広げた。

「もう、大丈夫なの?」

「ああ。いつまでもここにいるとボクは君を襲うかも知れないから」

 そう言ってカマキリ君は空高く飛び立っていった。


        完



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