ハートキャッチコウガイビル
その日は部活で他校との試合があり、賢三は部員たちと一緒に帰っている途中だった。
試合をした学校は駅から少し遠い。駅から学校までのバスがあるが、交通費を飲み物や食べ物に使ってしまい、帰りはバスに乗ることが出来なくなった。そのため彼らは駅まで歩いていた。距離が長いが坂道が少ないことが救いだった。
空は白い雲に覆われて今にも雨が降り出しそうだ。実際一時間くらい前に小雨が降ったので、アスファルトの地面はまだ湿り気を帯びている。そんな中一行は静かで不気味な団地を抜け、少し開けた道に出た。
道は広いが、車は全く通らない。賢三たちの来た道と丁字路を成している。突き当りの通りに小さい店のような建物が並んでいるが、どれも看板が錆びていて営業をしているとは思えない。
賢三はふと地面へ目をやった。湿った地面には一本のラーメンの麺のようなものが落ちていた。だがしかし、それはラーメンと呼ぶにはあまりにも色が薄い。不思議に思った賢三はそれに近づいてよく見てみた。それは表面は粘膜で覆われており、片端が扇のようになっている。そして少しずつ動いている、生きているのだ。
賢三はしばしその奇妙な生き物に目を奪われていた。そしてそれの進行方向から扇状になっている部分が頭部にあたることがわかった。賢三はその生き物を指でつまんでみた。すると生き物は体を素早く縮めた。頭の部分が後ろへ下がって行き横幅が広くなる。彼はそれがおもしろくてしばらくその遊びをしようと思った。しかしそれは叶わなかった。
「おいケン、なにしてるんだよ。置いてくぞ。」
先輩が彼を呼んだ。賢三の気付かないうちに、他の部員はもう二十メートルほど先を歩いていた。彼はあわててかばんから空のペットボトルを取り出して、生き物を中に入れた。ふたを閉めて前の集団に追いつくべく少し走った。
家に帰ると試合の疲れを取るため、賢三は入浴してから少し寝た。
目が覚めると、彼は昼間捕まえた生き物のことを思い出してかばんからペットボトルを取り出して生き物のようすを見た。
生き物はぺしゃんこにつぶれ、ペットボトルのなかには黒くどろどろとした液体が入っていた。賢三は思わずうわあっ、と言ってペットボトルを手から放した。黒い液体は、賢三の嫌いな信玄餅に付属している蜜のようだな、と思った。生き物は死んでいるようだった。
賢三はこれからも生き物を捕まえては殺すだろう。しかしそれは大した罪ではない。我々も浅ましい欲を満たす為に、日々頭の悪いことをしているのだ。少しは恥じろ。
初めて書いた小説でした。一回も読み返してないので無駄が多い。