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NO,THANK YOU!!  作者: 伍代ダイチ
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7.幹部格―3

 連絡を終えた光郷はまた、閃光の力を使って一瞬でNPC日本本部へと戻って行った。

 そして、琴達と合流した恭介は、琴の様態を見て表情を悪くした。血が、止まっていない。そのまま失血死なんて事にはならなそうだが、見ていて痛々しかった。

 琴は大丈夫だと言うが、恭介は心配して仕方がなかった。恭介の瞬間移動は木崎から奪ったモノで、物体や他の者を移動させる事は出来ない。選択肢は一つしかない。とにもかくにもNPCに連絡を入れて、回収してもらうしかなかった。




    33




 ジェネシス幹部格の動きがここに来て活発になっている。と気付くには時間はいらない。わかりやすい程に、ジェネシス幹部格の人間はNPCのメンバーの前に現れて来る。

 飯塚学が隊長を務めるスリーマンセルの班が任務にあたっている最中だった。

 とある地下組織のアジト。薄暗い通路を駆けていた三人は当然、このアジトを仕切るリーダーの下を目指していた。

 飯塚学はその実力を確かに持っている人間だった。闘技場にて、恭介が着火の力を強化してきたが、それでも燃えるという超能力では、飯塚には及ばない。時期幹部格か、と謳われる事もあるくらいの実力者だった。

 だが、そう上手くいかない事もある。

 真っ直ぐ一直線の通路を走っている時だった。

 何か、鋭利な音がした。その次の瞬間、左右の壁が切り刻まれた様にいくつものパーツに分かれてバラバラに崩れた。

 その『攻撃』が見えていた飯塚学は瞬間、全身を炎と化した。その首元を、何か鋭利な何かが一瞬で通り過ぎたが、肉体までもが炎と貸している飯塚を切断する事は叶わない。

 だが、

「恵里菜! 悟!」

 飯塚学の後方についてきていた隊員二人が、その攻撃をまともに受けてしまった。飯塚が振り返ると、恵里菜と呼ばれた女と、悟と呼ばれた男の首が胴体から離れて床に落ち、続ける様にして首を失った胴体が床に力なく崩れ落ちた。切断面から鮮血が溢れ。燃え上がる飯塚の足元に到達して、蒸発した。

 飯塚が振り返る。だが、炎化は解かなかった。

 鋭利に切断され、破壊された壁から一人の男が出てきた。いや、違う。その反対側からも、もう一人、そこに出てきた。炎の中で飯塚の心拍数が上がった。

 その二人を、知っている。あの流が殺されたその事件で、見た記憶があったからだ。

(ジェネシスの幹部格が二人も……!!)

 飯塚から見て右から出てきたのは、逆立てた金髪が特徴的な、右目の下に尖った模様のタトゥーを入れている若い男だった。そしてその反対側にいる人間。タトゥーの男よりは少し年を取った男だった。坊主頭の男で、特に感情を込めない表情がわかりやすい。イザム、と、マイトである。

 金髪の男、イザムが嘲笑する様な表情で言う。

「偶然。俺らが見に来てるところに襲撃掛けてくるなんてよぉ。お前さんも運がないねぇ。炎人間よぉ」

 イザムは笑っている。そして隣りのマイトは、表情を変えず、ただ炎のと化した飯塚を見ていた。見ていた、ではない。探っていた。あいつを、どうにか出来るか、と。先の切断の攻撃は炎の塊となった飯塚には効かなかった。だとすれば、どうすれば攻撃を通せるか。

 マイトはその方法を持っている。

 そう、飯塚も推測していた。

 ただの人間相手ならば、飯塚のこの状態に、攻撃を仕掛ける事も叶わない。無酸素状態で、物理的な攻撃を受け付けない状態。核爆弾が落とされても、炎の形さえ残せれば生き残る事が出来るだろう。

 だが、相手は超能力者だ。それだけでなく、人口超能力を自由に使う、幹部格である。

 一瞬だった。

 警戒する暇すらなかった。

 マイトが、燃え上がる飯塚の横にたった一歩で接近した。そして、飯塚の『炎を消した』。

「なっ」

 言葉にならなかった。ポン、と肩を叩かれた気がした。そもそも、炎の塊を『叩く』なんて有り得ない話だ。だが、確かに飯塚は叩かれた感覚を得た。

 その、瞬間だった。炎が沈下したのは。

 そして、一瞬。言葉を吐く暇もなかった。ただ、僅かに見えたのはイザムから何かが飛んできた様な光景だった。その光景の次の瞬間には、飯塚の視線は足元にまで落ちてしまっていた。言葉は、出せなかった。自分の視界をあとから落ちてきた自分の身体が隠してしまった。

 そこから先は認識出来なかった。足音が去るような音は聞こえた。自分が放置された、とは思った。だが、それだけだった。それから先、視界は真っ黒に陥って、そして、意識は断たれた。





    34




 飯塚の死の知らせはすぐに広がった。死体の回収は出来ない、と思われたが、垣根が率いて回収班が向かったそこには、幹部格どころか人一人いなかったため、楽に回収が出来た。一部の人間だけがその首が切り落とされた状態を知っているが、一般の隊長以下の人間はそれを知るよしもない。

 飯塚の死に方から推測された相手の超能力者の数、超能力は、二人と、超能力を無力化する力と、切断する力。

 これは大まかに言えば外れてはいない。だが、微妙に違う。

 イザムの超能力は『切断』である。この切断の力は恐ろしい程に協力な切断っぷりで、その名が単純すぎる切断、と付けられるのもそのためである。

 そして、マイトのその超能力それが、

「炎を断ち切るってのも有り得ない話だ。きっと無力化されたに違いない。それこそ、郁坂流が保持していた封印の様に」

 そう言いながら海塚のオフィスに入ってきたその小さな影は、海塚の部屋の中央まで進むと、立ち止まり、部屋の中を見回した。そして、呆れた様なその幼い表情で見せて、嘆息して言った。

「やっぱり日本は狭いねぇ。なんか湿っぽい感じ。ねぇ、海塚。っていうか恭介君どこ?」

 小さな影だった。自身のデスクに付く海塚はその影を見て気だるそうに眉を顰めた。立ち上がり、その小さな影を見下ろして言う。

「日本語がお上手で、『メイリア』」

 メイリア・アーキ。身長一五五cm。体重四○kg。銀に近い長いブロンドが特徴的な、小さな女の子――の姿をした、NPC総頭である。ロサンゼルス支部にいたはずの彼女だが、どうしてか、今、彼女はNPC日本本部に来ている。

「どうしてここに? アポもなしに」

 海塚がデスクの横に回って、彼女を見下ろして言う。するとメイリアはニヤニヤと笑み浮かべて、応える。

「私がわざわざ日本までやってきた理由は一つだよ」

「それは?」

「郁坂恭介君の強化」





 休憩室。そこに恭介と桃がいた。琴はまだ自宅療養中なため、この場にはいない。他にも数名休憩室にはいた。皆練習場での練習を一時的に休んでいるか、終えた者達で、これから帰る者もいた。

 そんな休憩所に、一人の小さな女の子が入ってくれば、全員頭上にクエスチョンマークを浮かべたくもなる。

 突如として進入してきた女の子は、見た目からして外人で、その場にいた全員の眼を引いた。あんな子NPC日本本部にいたか、と疑問の声が数々上がってきている。

 恭介も見たことのない女の子には眼を奪われていた。

「なぁ、桃。あんな子ウチにいたか?」

「さぁ、見覚えないけどねぇ。誰かの娘さんかな?」

 桃もその存在は知らないようで、首を傾げていた。

 当然と言えば当然。メイリア・アーキというその名前を知りはしていても、姿を見たことがないのだ。もとより彼女はロサンゼルス支部の人間であり、日本に来る事など滅多にないのだから。

 メイリアは皆の視線を集めながら、てくてくと歩いて恭介の前までやってきた。皆の視線が恭介の下に集まっていた。

「え、何、恭介君子供いたの? 琴ちゃんも桃ちゃんもいるのに?」

「えぇー。恭介君以外にやるのねぇ。しかも外人さん」

 と、周りがざわざわし始めた。

「チゲぇよ!」

 そう言って恭介が叫ぶと、

「うるさい。ぎゃあぎゃあ騒ぐな」

 そう言って、メイリア・アーキが恭介の腹に、思いき入り拳を入れた。

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