表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NO,THANK YOU!!  作者: 伍代ダイチ
THANXX!!
416/485

12.遅効性毒素―11


 こんなところで死ぬわけにはいかない。三平が自身を拾ってくれた。そして共に組織を立ち上げた。それを、これからまだまだ、超能力制御機関の力を得て、更に拡大させるのだ。

(こいつらをとっとと殺して、三平と合流する……ッ!!)

 暗殺部隊とは、殺しの扱いが違う。どちらが良いなんてない。それはクリエイティブな話しでもなく、結局、個々の差でしかない。だが、実力、能力の相性、等々がその覚悟や扱いの違い等と相まって要因となり、

「終わりだッ!!」

 島田の拳が、硬質化の効果も発揮されているジーニーの腹部に叩きこまれた。一撃、二撃、三撃。更に、連続する。その間、島田はまだ、『連続慣性』の効果を発動させていなかった。溜めに、溜めていた。

 そして、ジーニーが防御を固めて、攻撃を受けていた。連続慣性のその正確な効果は未だ、ジーニーは把握できていない。故に、連続した攻撃の間にも、超能力による攻撃が連続している、と勝手に勘違いしていた。

 が、違う。

 故に、島田が拳を振り切り、ジーニーがその勢いで大きく後退した、その直後に、恐ろしく重い、ただ一撃が、ジーニーの上半身を吹き飛ばした。

 一瞬だった。ジーニーの防御は通用していなかった。

 島田の超能力『連続慣性』はステージ6。ステージアップの付加能力として、攻撃を連続させるだけでなく、溜め、そして、好きなタイミングで放つ事が出来る様になっていた。

 滅多に見せない力だった。だが、今、それを出し惜しむ理由もない。

 拳を引いた島田の視線の先で、噴水の様に吹き出し、狭い通路に赤く、太いボーダーラインを描く鮮血を撒いていたジーニーの下半身は、落ちた。落ちてなお、鮮血をまだまだ、溢れ出させて血溜まりを作り出していた。

 上半身は、どれがどこの部分かも分からない程に粉々になり、かろうじて分かる顔の半分の更に半分も、また、遠くまで飛ばされたため、誰にも気付かれる事はなかった。

 島田は振り返る。その血塗れの顔で。

 見たのは、薬師寺が、その超能力で、ルーニーの首を断ち切った瞬間だった。

 単純に相性が悪かった。

 薬師寺の攻撃は、障壁系統の超能力であれば、全方位同時に防げる相手でなければ、攻撃が可能である。

 後援役に徹している様に見えた。事実後援役だった。だが、彼の超能力は、盾とは違う。攻撃に転じる事も出来るし、そもそも、攻撃系統の超能力である。ありつつ、後援にも回る事が出来る。

 無鉄砲、本能のままに、好き嫌いで戦場を駆ける島田の補助をするために、力をそう使っているだけだ。

 より考えて動いているのは、ルーニーではない。薬師寺なのだ。

 そして、より仲間を信じていたんが、島田だった。故に、彼は明らかに、ジーニーよりも頭の切れそうな相手を、薬師寺へと渡した。

 二人は、三平も信頼を置いているコンビである。

 そう容易く、負けるわけにはいかない。





 条件付けだな、と流は気付いた。

 ケイジと名乗った敵のその動きを見て、気づく事が出来た。超能力を持ちながら、ほぼ無能力者であり、超能力社会へと侵入している流だからこそ、柔軟な考えを持てて、故にここまで導きだす事が出来たのかもしれない。

 筋肉の動きが、明らかにおかしかった。人間の可能な稼働速度を超えているような、いないような、そんな機微な違和感にまず、向き合って考えた。考えて、気付いた。肉体を強化しているわけではない、と。

 そこまで到達した時点で、敵の攻撃を反射神経の追いつく分、受けきれる事を考慮して、更に先に、別の可能性も考えた。考えて、戦って、戦いながら、一瞬気を抜けば負けを生み出す可能性の高いこの瞬間にも、冷静に可能性を削り、より可能性の高い答えを導き出す。導き出し、た。

 ケイジが、負けないために条件をつけている、と考えた。そして、その条件こそが、ケイジの超能力である、と分かった。

 銃弾を避ける、銃弾を受け止める。そんな事を許せるのは、当然超能力だけである。

 そして、激しい攻撃の応酬の中で、ケイジがそれ以外の超能力らしい超能力を見せなかったのと、焦燥の表情が見えたが故、流は、それが一番可能性の高い答えだ、と導けた。

 実際に、そうだった。

 ケイジはほぼ、無敵である。人体の限界を越えて、動けるといえば動けるのだ。

『条件反射』ステージ5。

 ステージ5の時点で、三つの絶対的条件を設定出来るようになっている。そしてその三つを、当然全て埋めている。

 一つ、攻撃を避ける。

 二つ、一つ目の条件が達成出来る余裕のある場合、反撃する。

 そして――、

「終わりだよ」

 そう言ったのは、流だった。

 相手の超能力がより詳しく分かった時点で、対処法が一つでも存在するのであれば、流に勝てる人間なんて、数えられるだけしかいやしない。

 そんなあり得ない言葉を証明するかの如く、流は、ケイジを殺しにかかる。

 既に、仕込みは済んでいた。激しい攻撃の応酬の中で、敵の超能力が及んでいない事をついて隙として、仕込みは終わっていた。

 後は、誘導するだけだった。

 攻撃が連続する。体力的には未だ互いに、まだまだ戦う事が出来る状態であった。

 故に、心理戦。近接戦では、僅かにだが、流の身体能力はケイジの条件反射に圧されていた。だが、仕込みが出来ない程の隙がないわけでは、なかった。

 余裕自体はあった。ただ、攻撃を当てる事が出来なかった。仮に、だが、条件反射さえなければ、流は既にケイジを斬り払っていただろう。

 だが、超能力者同士の戦いである。それを恨む事なんてない。

 だからこそ、容赦なく仕掛ける。

 流の装備の中から、ナイフが消えていた。

 後は、隙を突くだけだった。そして、隙を突く事自体は、問題ない。

 攻防の回数を重ねれば重ねる程、当然、ケイジは焦り、流は真実に近づいていく。

 条件反射の絶対的条件反射をもってしても、流の動きに追いつく事ができないのか、と焦燥し、そして、流が、よりケイジの超能力を理解して、勝利に近づく。

 条件反射に限った事ではないが、超能力には理解が大きく影響する。そもそも理解する事が、超能力の発動の条件にもなっているのだ。理解がなければ、使えやしない。だが、それは逆に、理解されてしまえばされてしまう程、敵に弱点を晒すという事でもある。

 それが、今、流とケイジの間に流れている現状である。

 条件一、攻撃を避ける。

 条件二、条件一が達成出来る場合にのみ、反撃をする。

 つまり、攻撃でなければ条件反射によって避ける事は出来ないし、それが攻撃でない時点で、条件反射による条件二の反撃は降りかかってすらこないのだ。

 流は、そこまで気付いていた。

 だからこそ、終わりだよ、なんて、軽く聴こえる口を叩いた。

 流が、攻撃の止まない中、防御に入った。

 ケイジの二刀が交差する様に流の胸元に入り込んできた。それを。刀を縦にし、両手で受け止めた。

 火花が散る。

 そして、ここが転機。いくつかの手段があった。だが、どこまでが、条件反射を発動させてしまうかが、流には把握できていない。

 まず、そのまま力任せに、押してみた。後方によろめかせる様に、防御して、押し返した。

 すると、

「ッ!!」

 ケイジは、僅かによろめき、そして、二、三歩後退した。

 見つけた。流は、そう思った。

 まず、最初に、相手を動かす手段がなければ、どうしようもない。導く事は出来ても、相手の意図通りでは、無理矢理に追い詰めでもしなければ、『痛みが走った瞬間』に、致命傷を避けて身を引いてしまう。

 だからこそ、無理に後退でもさせる手段を見つけた。

 そして、流は仕掛ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ