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NO,THANK YOU!!  作者: 伍代ダイチ
THANXX!!
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6.神との接触―9

(何が、どうなってるところ……?)

 肉体には伝達しないが、明瞭な考えを脳内で溶かした。

「こ、こっちは、ってか、二人とも息はあるよぉ!」

「分かった。二人を担いでね。蓮君」

 奏が立ち上がれない住良木に肩を貸して立ち上がらせ、そのまま歩き出す。遅れて蓮はその巨漢の見た目から連想出来るがままのパワーを発揮してなんとか二人をそれぞれの肩に担ぐが、業火程の巨?はやはり厳しいらしく、顔を苦痛の表情に歪めて、奏に続いた。

「階段。気を付けてくださいね」

「う、うん……」

 奏の優しさを住良木は感じ取る。視界は未だブレ続けているが、大分見える様になってきてはいた。そうしてなお、実感する。二階の廊下が業火の超脚力によって受けた被害は甚大で、生活に支障が出る程であると。

 状況が状況ではあるが、自宅がこうなっても全くそれについて触れないのは、彼女の強さなのだ、と住良木は感じ取る。

 足元が悪い中、なんとか階段まで辿り着き、計五人はゆっくりと階段を登る。階段も軋む。先の業火の一撃によって家全体が甚大な被害を受けたのだ。もともと古い家のため、仕方のない事ではある。

 階段をなんとか登り切った住良木は、そこでやっと、声に出す。

「な、なんで……?」

 言葉が漏れたのは、見た光景に驚いたからである。

 彼女が見た光景は、廊下に大きく穴が空いていて、とても渡れる状態じゃなかったはずのその廊下に、様々な物質が集まって廊下の床板を作ってあるそれだった。もともと廊下だった材木や床材、それに追加して、一階茶の間にあったテーブル等も何故かそこに集い、廊下が渡れる様に床を作っていたのだ。

 それを、説明したのは彼女を支える奏だった。

「蓮君の超能力、状態変化です。細かい説明は省くけど、位置状態まで変化させるので、ステージ3だけど、近くにあるモノを浮かせて、廊下に空いた穴にひっつけるくらいなら出来るの。でも、対象影響系って少し珍しいタイプで、モノにしか影響させる事ができないの」

「そ、そうなんだ……」

 奏の説明を理解する事は出来なかったが、これから出来る様になるんだろう、と自身に言い聞かせ、とにかく、後ろで男二人を肩に担ぐ巨漢がこの廊下を作っているのだろう、とだけ考えておいた。

 奏に引きずられながらだが、恐る恐るとそこへと足を踏み出す。最初の一歩はどうしても恐れたが、いざ踏み込み、その床がしっかりしている感触を得ると、何の恐れもなくなった。

 廊下を歩き、そして、到達するはやはり、例の扉の前だった。

 扉の前まで来た所で、

「っ、……あ、蓮。ありが、とう」

 純也が起きた。純也は蓮をタップして、蓮に下ろしてもらい、そのまま自立して現状を見て、判断する。

 目覚めてすぐとは思えない程しっかり自立する純也の強さには関心する事しか出来ないが、ここで純也が目覚めた事は、奏達にとって好都合である。

「チェイサー。ごめん、流の事『見て』くれないかな」

 当然、そう頼む。そして当然、純也は頷く。

「おっけー。ちょっと待ってね」

 そう言って、純也は一人集中する。

 結果は、すぐに出た。

「奏ちゃん。扉開けよう」

 純也はそう言って優しく微笑む。

 奏も、笑んで返した。

 扉に手を掛ける。

(流、流石だね。本当に、ただの無能力者とは思えないよ)

 ドアノブを回し、た、ところで、住良木が自ら彼女の肩から離れた。もう、歩ける程度には回復した様で、見た奏にありがとうと告げて、そして、開けて、と伝える。

 頷き、奏が扉を開くと、その先には、見慣れた薄暗い下りの、長ったらしいが、希望に満ちた階段のその姿があった。

「これで、応援が呼べる……ッ!!」

 圧倒的人手不足により、圧されている神流川村の形勢逆転をするチャンスが来た。





 ただ唯一のミスは、考慮しなかった事。

 今回、神流川村襲撃に選抜されたメンバーの多くは、燐にとって必要のない部下ばかりだった。一部の強者は超納涼制御機関アジトへと派遣されているし、神流川村に派遣された強者と呼べる存在は、ごく一部である。

 指揮官すら燐にとって必要のない人間であり、実際役職をこなせていない。

 だからこそ、個々で強い人間が目立つ。

 だが、それは神流川村の住人に当てはめても同様と言える。

 この村には、超能力者が集まっている。その全員が超能力制御機関に所属し、碌の下で働いている。

 その多くの人間の中で唯一、前回の襲撃の際も、そして今回も、自分の家族を守るためだけに、他は全く気にも留めず、自身の家族、血筋だけを守るために戦う一族がいた。

 その一族は子孫代々、生まれて間違いなく超能力を保持し、そして、その全てのステージが高い、という特徴がある。故に、どんな場合があっても、血筋を絶やさない様に、と家族を守る事を左右線に、出れる人間、一家総出で血を守るために動く事になる。

 それが、零落一族である。

 碌が血を絶やすなと直接指示を出す程の、濃い超能力者としての血を残す、零落一族は今回の襲撃でも、守りに入っていた。

 それほどの力を持った人間が、雑魚と燐に評価される程度の人間を容易く屠るのは当然でもある。

 圧倒的だった。大量に投入された燐の下っ端達の一部は、当然の如く名をあげようとしているモノがいて、彼等が零落家を見つけて襲撃をかけたのだが、今現在、零落家は一切の被害を受けていない。家すら綺麗に無事な状況だった。

 実際の所、零落一族の動きさああれば、この村で起きている燐の部下達の襲撃は今すぐにでも修了だろう。

 だが、彼にとってそれは最優先でない。当然、自身がでなければ尚更家族達に危険が迫る、と理解すれば彼はやっと外へと出るだろう。

 だが、懸念にもならない。零落こそ、超能力者である。最高峰に立っている超能力者だ。 

 流がジャマーを倒し、奏達がアジトへと入り、成城と希砂がなんとか行きのる事が出来たその時と同時、零落はついに迫りつづけていた敵を完全に打ち倒した。

 だが、仲間の手伝いをしにいこうなんて考えなかった。それは、感じ取っているが故、である。

「お待たせしました」

 各々が応援を呼ぶために動き、結果、流が美奈の超能力でジャマーを発見し、倒し、アジトとの扉を繋いだ。これで、アジト内に取り残されていた多くのメンバーが多くいて、その大勢を神流川村へと流す事が出来る様になった。

 が、同時、既に碌が手を打っていた。

「遅かったな。あっちはそんなに大変だったか」

「いいえ。確かに強者と言える程度の能力者は数名居ましたが、その程度でした。問題の燐は、最初こそ影がありました。小太刀が言うので間違いないかと。ですが、戦闘中、戦闘終了後、確認をすると、既にそこに燐の姿はなく、すぐに戻ってきた所存です」

「戻ってきたついでに、大勢殺したな。流石だ」

 神流川村。愛浦商店まで続く道の途中、立ち止まって言葉を交わしたのは碌と、猪方光輝であった。

 彼がここに来ている、という事は当然、鏑京もこの村に既に到着している。が、彼はすでに村の中へと飛び込んで活躍している。

 能力が似ているため、効果も似たように現れているのだ。

 そんな中、碌は状況を推測した上で、的確な指示を出す。

「大一と小太刀は戻ってくるのに結局数時間を要する。京に村の応援を頼みつつ、光輝、お前にはアジトに向かってもらう。俺の推測が正しければ、あっちが敵の目的の一つにはいってるはずだ」

 それに対して、当然、猪方光輝は深く頷き、そして、その場から瞬時に消失した。既にアジトに到着したのだろう。

「さて、」

 ここまでは、予想通りである。

 碌は超能力制御機関の頭である。故に、戦うよりも、スべきことがある。それが、統率を取る、という事。作戦を立てる、という事である。

(燐が消えた。襲撃を仕掛けたのも間違いなく燐だろう。だとしたら、今、燐はどこにいる)

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