【二日目】
堕天使って英語で何ていうんでしょう。
dirty……入らないか。
今朝は堕天使に起こされて起きた。目覚めが悪いのは当然だ。しかも、厄介なことに私が起きてもなお堕天使は私の部屋に居座ってカーテンを開けたりしている。それ位出来るって……神を舐めるなよ。
ふわっとした服を着ているという事もあって、窓から射し込む柔らかな光を帯びてとても優しそうな雰囲気を漂わせている堕天使。だけどこいつ、怖いからね。本当、怖いからね。敬語使いながら目上の神に拳を飛ばすんだから。あ、すいませんつい……と言うけど、殴っといてそれはない。ついで済むかよ! 一日一回雑巾を紅く染めて床を拭くのが日課です、なんて自己紹介された記憶ないんだけどな。
ふわっとした服を着てるのもきっと、その凶悪なパンチを繰り出す筋肉を隠すため。予想が当たっていれば、袖をたくしあげた瞬間私はあんぐりと口を開けてしまうだろう。天使じゃなかったら、どこかをほっつき歩いてるチンピラだ。
そんな奴が何故私の部屋で掃除機なんかかけているのだ。それは公務のうちなのかと訊いてみれば、勿論ですと答える。貴方のお役に立つ事が天使の役目ですからとか綺麗事まで添えて。殴るのは私事の一つとして処理されるんでしょうね。全く。その怖さのお陰で、だったら神の疑問を解決するのも公務なんじゃないのかとも訊けなくなる。
怖い天使だ。忙しく私の部屋で「家事」をしているだけで、私の筆が止まる。日記が開いているので見てしまいましたと言いながら、左手で掃除機をかけながら右手を震わせて近づいて来られたらたまらない。だから私は、日記はいつも閉じて携帯する事に決めた。
今日は、堕天使が今日も「神の仕事」を教えてくれないが為に私は暇をしていた。あの堕天使、下界を見る方法すら教えてくれないのだ。『神はいつも、私達を見守ってくれています。アーメン』と言って祈りを捧げるかわいこちゃん……失礼。修道女の姿がまぶたの裏に浮かぶ。私は今、そんな少女の健気な祈りにも背いているのだと思うと悲しくなる。まあ、私は恐らく崇拝なんてされていないのだろうが。嗚呼、下界を見たいものよう。神の仕事は下界を見ない事には始まらないと思うのだがね……。