準備万端
結構書いたつもりで、やっぱり短い。
ブランクはとんでもないことになっているみたいです。
気長にお待ちいただければ幸いです。いや、ほんとに
三日目
三日目は水筒の準備である。
当然森なので、使える素材は竹。
そう、竹による水筒のようなものを作るつもりであった。
竹の節は密封されていて、節の蓋のような部分に穴を開けるだけで水を入れる容器の完成である。
と、思ってはいたのであるが。
まず竹の入手は簡単であった。
植物に詳しいグリューネがいるからであり、しかもこの森の主だったので、この広大な森であるにもかかわらず、どこに何があるのかを分かっている。
少し遠出をすることになったが、日帰りで手に入れることができるものだ。
若干奥地にいく必要があったので、やまいと戦闘能力が消えたグリューネは留守番。
僕とシルエットだけなら立派な人型になった漆黒で行こうと思ったのだが、漆黒はダメだとグリューネが訴えた。
「今や漆黒とかいうその精霊じみた神の器になりつつあるそれは森の主として、ここにいるの。
悪いけど森の生物への害ある行動は控えてちょうだい。」
とのこと。
森の主たるもの、森に棲む生物には平等に接し、特定の生物に対する力添えは禁忌である、もといグリューネの矜持として見過ごせないという。
とかいうわりに僕が死んでた時にやまいの面倒見てくれてたりとかしてたらしいじゃないですか。とにやにやとして言うとグリューネはやまいは森の生物じゃないし、だから肩入れしても問題ないと頬を軽く染めながら言った。
そうですか、にやにや。
力を戻して漆黒についてきてもらおうと思ったが、まぁそこまで人手がいるとも思わないので良しとして、一人でぱっぱと行くとした。
んでグリューネから聞いた場所に竹を取りに来たのだが…
ネックがいくつか。
まず、思っていた以上に堅い。
僕の触腕の握力…いや、腕力、というべきか膂力というべきか。
その力はとんでもないはずなのに、割れないし、へし折れないし、軽くヒートカッター的な魔法陣を書いて使ってみても表面に少し傷が付くだけだった。
異世界なだけに竹の硬度が半端ないことになっているようである。
下手な金庫などなら軽々握りつぶせる僕の触腕が効かないのだ。
驚くべきところである。
そして次に試したのは僕の持つ技でも速度、溜め、破壊力ともにダントツのタコ脚キャノンである。
獲物に使うと破裂して食べ物にならないので、久しぶりに使ってみるとさすがに竹は折れた。
というか砕け散った。
当然これでは用を成さない。
たまたまいい具合のものが残るまで竹林を破壊し続けるのもまた手であるが、環境破壊は望むところではないし、グリューネからも極力やめてくれと普段からちらほら言われている。
ではウォーターカッターのような魔法ならばどうだろうかと考え、試してみるがこの竹、驚いたことに魔法を無効化する何かがあるらしく、威力がかなり減衰されてしまい、ただの水鉄砲だ。
そういえば竹で作る水鉄砲を小さなころに作ったななんて前世の記憶をはんなり思い出しつつ。
細いのは触腕で折れたとしても水を入れるためのものだからあまり効率的ではないし…
そんなことを悩みながら、しかし日は暮れていたので魔法でやまい達に野宿すると連絡し、その辺で休むことにした。
四日目。
この森の生態系において頂点に発つ僕とは言えども、寝てる間は無防備である。
魔法陣で警戒網を敷いて寝ていたが、どうやら問題はないようだ。
さて、改めて竹をどうするかを考えた。
というか竹はあきらめてしまおうか。
この調子だと水筒に加工するのも一苦労しそうだ。たぶん節の蓋も強堅だろう。使い物にならないのではないだろうか。その分、耐久性はよさそうなのに。
とりあえず季節感無視でその辺に生えていたタケノコをぽっきり折ってもしゃもしゃ食べながら何か無いかと考える。
ちなみに味は苦いし、渋いし、堅いしで野菜としてのうま味もないただの水を含んだ大根みたいなもんである。
ぶっちゃけまずいが水分補給兼朝食だ。タケノコはやはり生で食うものではない。すぐ帰るつもりだったから食料は持ってきてないし、付近に動物の気配もないのだ。僕の気配や魔力で逃げ出してしまっているのだろう。
「山菜は下処理が面倒なんだよなあ」
なんて独り言をぼやきながらも、竹の代わりに水筒にできそうな“何か”を探し回ることにした。
いや、探し回ろうとしたところで天啓を得た。
そうだ食虫植物を探そう!
五日目。
望みの食虫植物を探し出して、拠点へ帰ってきた。
「おかえり、タコ。」
といって真っ先に迎えてくれるやまい。
僕もそれにこたえて、抱きしめる。
やまいは最近僕が抱きしめると本当に幸せそうな顔をしている。
それを見たくて遠出することもあるくらいだったり。
「竹は…へぇ考えたわね。」
と言って竹を一切持っていないことに怪訝な顔をしたあと、グリューネは僕の収穫物を見て得心のいったような顔をする。
さすが植物に詳しいと自称するだけはある。
「たこ、それ、なに?」
やまいが指をさしながら聞いたものは、森には不釣り合いなほどに変な形をしたものだった。
一見するとツボのようだが、粘土を焼き入れしたような素材にはまるで見えず、また金属の類にも見えない。
緑がかった奇妙なツボのようなもので、触るとしっとりしているのが分かる。
そして蓋のようなものがついており、切れ目がある。
にもかかわらず開閉はできないようで、くっついているようだ。
そして紐のようなものが底にあり、途中で切れている。
最後に特徴的なのが中には液体が入っているようだ。
「ウツボカヅラさ。」
ウツボカヅラ。
知っている人や、うすぼんやりと姿かたちを思い浮かべることができる人もいるだろう。
食虫植物で、ハエトリソウと並んで有名なものである。
葉っぱの先からツルのようなものが形成され、それがにょきにょきと伸びていき、先端が膨らんだもの。
それをタコが切り取って回収してきたのだ。
食虫植物は栄養の少ない土地に適応して成長する植物で、その栄養を補うために羽虫や、時には小さなカエルなどの小動物までもを捕食、というよりは捕獲して栄養にする植物である。
僕も詳しいことは知らないが、どこかで聞いたことがあった。
ウツボカヅラのツボに入ってる水は飲める、と。
そこから水をため込んでおく入れ物として使えるのではないかと考えたのだ。
元が葉っぱなら枯れると思うかもしれないが、この森の植物を舐めてはいけない。
竹の例からも分かる通り、動物は当然ながら、植物だっておかしいのである。
とりあえず出発までもう少し時間があるので適当に飲み水を入れたまま放置してどうなるかを見て、あらためて考えることにしよう。
それからさらに二日が立ち、食材はもちろん、必要な器具類などは十分。
鍋などの調理器具は少し前に僕がやったように別の空間にしまっておける魔法で出せるために大丈夫。
回復薬としてのメープルシロップ分も用意したり、グリューネ用の服も作ったりで準備万端。
こうして僕たちは森を出た。
豆知識
食虫植物はだいたいが栄養の少ない土壌に適応したものです。
ゆえに食虫させる必要なんてなくしてやんぜ!とばかりに肥料を与えると肥料焼けですぐ枯れてしまいます。
水枯れにも弱く、また、日照は半日陰(1日数時間は直射日光が当たるような環境)で、日照が足りないと枯れたり、成長が極端に鈍くなったりします。
また、低温にも弱い(種類にもよる)ですから冬場は最低でも室内に入れないとこれまた枯れます。
これだけ聞くとかなり難しい気がしますか?
しかし、それでも愛好家は沢山います。
それだけ魅力的だからで、逆に言えば室内で、窓際に置いて水やりを忘れなければそれだけで元気に育つわけですね。
さて、そんな食虫植物の中でも私が一番好きな種類がウツボカズラの類で、愛好家の間ではネペンテスなんて名前がよく使われます。
そのネペンテスですが現地では蓋が開く前のツボを切り取り、中の水だけを飲むことがあるそうです。
昆虫を溶かすメカニズムは、空気に触れると酸性に傾く水が入っておりその中には、昆虫の外骨格の主成分であるキチン質を溶かす酵素やタンパク質を分解してアミノ酸に変える酵素が入っており、それらでドロドロになったものを吸収します。
しかし、できて間もない袋から分泌されるため、古くなると細菌の力だけで分解されるとか。
ハエトリソウやモウセンゴケと呼ばれる食虫植物も酵素を出しますが、サラセニアの祖先的な立ち位置のヘリアンフォラは初めから細菌だけで分解するそうです。
食虫植物の肥料はそれらの捕虫器に直接与えます。
ネペンテスならツボに直接液肥を入れたり、亀用の餌である乾燥エビなんかを投入します。
入れすぎると袋が腐りますから中に入ってる液体の3分の1の質量を目安にます与えるとよろしいかと。
与えなくても育ちますが、与えると成長が促進されます。
500円玉で買えるような安くて丈夫な品種もありますのでお一ついかがでしょうか?




