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タコのグルメ日記  作者: 百合姫
Ⅸ章 喰み殺す森
91/110

ちょっとだけ強い奴

次回こそグリューネが出ます。と思う。

かなり更新が止まっているのにもかかわらず変わらずにお気に入りに入れ続けてくれていた方々に感謝を。これからはちまちま更新していけたらなと思っています。

…亀更新だとは思いますが、なにとぞよろしくお願いいたします。

それと徐々にほのぼのパートに移行していくかなと。

魔法を全弾、掃射した。

肉片も残らないように吹き飛ばすつもりで。

ファイアランスが爆発し、ガイアパゥワーが地面を抉り、木々をなぎ倒す。

超圧縮魔弾に一瞬穴をあければ、その圧力で勝手に水が噴き出る。そしてすぐに穴を閉じて、また開けて、というのを繰り返せば水によるガトリング掃射。

周りの土と一緒に苔や木々が散り舞う。

連続して轟音が鳴り響き、土ぼこりが舞い散る。


ところがどっこい。

掃射によって舞い上がった土煙が晴れた先には土の拳で動けなくなっていた兄と、それを守ろうとして絶望のあまり動けなくなった弟。

どちらも目立った外傷はない状態でそのままだった。

それどころか、土の拳を破壊されていた。


「どういうこと?」


不思議に思って首をかしげながらも目を凝らせば、彼らの目の前には白銀の鎧を全身にまとった人間が。

状況から見るにすべてを彼、かは分からないが彼が防いだとみるのが妥当だ。


「た、たすかったぜ!」

「あ、ありがとうっ!アシュロンっ!!」


あれを無傷で切り抜けることが人間に可能なのだろうか?

怪訝に思って凝視していると白銀の男だか女だかがこちらに迫ってその腕に持つ大剣を振りかぶる。

名前から察するに男かな?

迫りくる大剣をきっちり手で掴み受け止める僕。


「タコッ!?」

「大丈夫・・・」


背後に下がっている、やまいの焦った声に力強く答える。

やまいも見ていられなかったのか、手を出そうとしていたがそれを触腕で制しつつ目の前の男に注意を向ける。


「っ!?」

「もう油断はしないよ。」


手元にあった石ころが砕け散った。

これには防御用の魔法を刻んでいた。

一度腕をぶった切られたので、それを警戒するのは当然だ。


探知タコレーダーで彼の魔力を探ってみるとなるほど。

納得である。

納得しながらも僕は背中に収納していたすべての触腕を解放。

彼に向けて撃ち出す。

すぐさま離脱しようとするが、そうはさせない。

僕が剣を受け止めた手の表面には一部擬態を解いた吸盤がある。

手で掴む力と、吸盤の力によって彼は剣を引こうとしても無理だ。

そこで初めて剣を手放すという考えに至って、さがろうとするがその一瞬の戸惑いが命とりである。

よほど良い剣なのかもしれない。

もしくは武器なしになることを躊躇しただけか。


「タコ脚キャノン、連式。」


普通のタコは8本。

しかし僕の足は10本だ。

そのうちの4つは人間の手足として使っているから使わないにしても、残り6本でも十分である。

その6本の触腕がねじれ、縮小し、ぎちぎちと音を発てていた。

限界まで筋肉を絞り、その緊張状態を一気に解けば反動で触腕が飛び出す。

回転も加わったスクリューパンチのような触腕の先端が白銀の鎧に立て続けにぶち当たり、轟音を立てながら吹き飛んでいく。


手ごたえ十分。

人間ならば粉々になるレベルである。


筋力が増していくと同時にあまりに威力が高くなりすぎて最近はあまり使えてなかった技だ。

その辺の魔獣でも粉々に破裂してせっかくの食材が食べれなくなってしまうので、自重していたのだが彼相手ならば大丈夫なはず。


鎧が割れ、一部の破片が体に突き刺さっているがアシュロンと呼ばれた彼は普通に立ち上がってくる。

少しふらついているが、僕のタコ脚キャノンを同時に6発も受けて立てるとはなかなかどうしてタフな生物だ。

・・・ていうか普通に凄い。

今の僕のタコ脚キャノンの威力は一発がミサイルに勝ると劣らない威力である。

アームドボアやアーマードスネークと言った大型かつ鱗が変質して鎧やら何やらのようになっている生物であろうとも打ち貫けるレベルなのだ。

なお、これは単発のタコ脚キャノンの話。


それを六発。

背後に飛び退いていたためにベストなインパクトポイント(力が一番乗る位置やタイミングのこと)が若干、ずれていたというのも差し引いても驚きである。

再度、距離が離れたところでお互いに沈黙する。

鎧に含まれる大量の魔力から、おそらくは防具の性能も相まって凄まじいまでの防御力を誇っているのだろう。


「・・・分が悪い。引くぞ。」

「Sランクのお前でも厳しいのか?」

「ああ、はっきり言って竜クラスの化け物だ。少なくとも”探ってみた”魔力量のほどではそれに匹敵する。

戦力も準備もまるで足らない。今回、依頼をした研究所には不可能と伝えておけ。」

「バカ言え!苦労しただけ、手ぶらで帰れるか!」

「なら、俺の助力はあきらめろ。俺は帰る。割に合わん。」

「…っ。…分かった。バックアップを頼む。」

「それなら承知した。」


ジャックは悔しげだが、さすがこんな奥地にまで来ることができる男だ。

目先の欲ではなく、引き際を心得ていると。

ま、逃がすつもりはないけどね。

僕のウソはいつかばれるかもしれない。ならば、ばれた時にグリューネを殺されかねないのであればできる限り殺し続けて、ここは危険だと認識させるまで。

その見せしめの意味も兼ねて殺させてもらう。

もうしばらく人里に下りてないので、ランクがどれくらいでどれほど凄いのかは忘れたがおそらくはSランクは一番上だった気がする。前世の漫画的知識的にもSは強いというのが相場だ。

というかアシュロンと呼ばれたクラスの人間がワラワラいるとは思いたくない。

タコ脚キャノンを受けて立ち上がる敵が複数で迫ってこられたらこちらも致命傷を負うかもしれないし。

それもあいまってあの白銀鎧の彼は確実に殺しておきたいところだ。


地面に潜らせて穿孔せんこうさせた触腕をジャックたちの足元から出現させた。

ジャックとティムの兄弟は簡単に捕まったが、アシュロンには逃げられる。

反応するだろうとは思っていたし、すぐにアシュロンはジャックが持っていた剣で切ろうとするが、はじかれ、折れる。


「ぐっ!?」

「まだ魔法の効果は残っているんだ。

この魔力の籠った良さげな大剣ですら無理だったのに、そんなちゃっちい剣じゃなおのこと無理だよ。」


アシュロンの大剣はいまだ僕の手の中に。

アシュロンの攻撃力は著しく落ちている。

そのまま捕まえた二人を殺すため、触腕を巻きつけてぐるぐる巻きに。

人間社会よりも森で過ごす時間が多いやまいならば大丈夫とは思いつつも念のために、外から彼らの状態が見えなくする。

そのままキュッとすれば肉でできたボロ雑巾の完成である。

バキュンとえぐい音とうめく声と共に隙間からブシュッと血が噴き出て男たち二人はあっけなく死亡した。

背後のやまいの様子を窺うと、あまり気にしてないようで良かったような、悪かったような。


周りに血の匂いが立ち込め、少し顔をゆがめつつもアシュロンのほうへ向き、触腕を総動員してなんとか捕まえようとする。

が、意外と素早い。

というかスピードはそこまででもないが、上手く緩急を付けて避ける。

経験の差だな。

獣相手ならばともかく対人の経験はほとんどないし。

が、かすった際に吸盤の一つが張り付いてその動きがわずかに鈍る。僕の吸盤は一つだけでもかなりの吸着力をほこる。

その隙に漬け込み、すぐに触腕を巻きつけて捕獲。

そのまま潰そうとして僕の触腕がぶった切られた。


「…ちっ!」

「ぐあっ!?」


が、予想はしていた。

彼の体から刃のようなものが"内側"から突き出ていたのである。

驚くことはせずに目からビームの最大出力だ。


悲鳴をあげながらそのまま消し飛ぶアシュロン。

ビームが過ぎ去ったあとには右上半身が吹き飛んだアシュロンとえぐれた地面だけが残る。

とっさに体をそらしたのだろう。

やっぱり消し飛ばなかったアシュロン。

そこは空気を読んで消し飛んでもよかったのだけど。


なんにせよ良く避けたが、それもまた予想できなかったわけではない。

まだ動けるようなので放っておいても死ぬだろうが念のために、とどめを刺そうと目からビームを撃つべく目に魔力を込めたところで、ろくに動けないアシュロンは口を開く。


「待ってくれないか…降参する。」


という言葉に、目に魔力を込めていつでも殺せるようにしながら僕は返事をする。


「…信用できないな。」

「同じ魔獣のよしみということ…にはならないか?」


そう、こいつ。

先ほどから気になることがいくつかあったのだが、アシュロンはおそらく僕と同じ魔獣が変態、ないしは変身し、”人として人の社会に紛れ込んでいた僕以外の魔獣”だったのだ。


驚きである。

いや、僕という例があるのだからほかにもあるだろうとは予想していた。

この世界ではよくあるフィクションのようにはならない。

知的で魔法技術に長け、強い生物…たとえばドラゴンなどは人になれないのだ。

そんな都合の良い魔法はなく、単に人に擬態、ないしはそうした変化、特有の技能を持っていたり、構造をしている生物が”人”になれるのだ。

もとい極端に少ない。


となればいろいろと聞きたいこともあるが、今優先すべきはグリューネの復活。

殺しておくのが無難。

さて、どうしようか。


「…もちろんタダで見逃してもらえるとは考えていないよね?」

「俺とて自然界で生きて来た時代はある。

自然界の厳しさは知っているつもりだ。ただとは言わない。

なんでも言ってくれ。命を賭けよう。」


自然界において殺しは普遍的でありながらも絶対だ。

狩りを失敗すれば餓えるし、もしも相手が毒を持っていただとか、実は牙を隠していたとかいう状況では返り討ちにあって逆に狩られる。

とにかく力なきものは搾取され、どうにかこうにか生き残るために創意工夫を凝らさなければならない。

本当に厳しい世界なのだ。そこに慈悲はない。


弱者は弱者なりに策をこらす。ものを考える。

ある動物は毒を持つ生物に擬態したり、周りと体の模様を似せて保護色としたり、自分よりも強い生物に定期的に何がしかのメリットを差し出してその代わりに身を守ってもらったり、単純に素早く動けるような構造を持ったりとその方法は様々だ。


アシュロンと呼ばれた彼も自然界を過ごしたというのならばそういったことは経験的に知っているはず。

ゆえに交換条件だ。

僕に対して旨味メリットを与えるからそのかわり命は助けてくれと。

命を賭けるのは当然。

でなければこの場で死ぬのだから。


「ふむ…

まずは質問に答えて。

君の故郷は?」

「ここよりずっとずっと東にある森だ。」

「擬態を解ける?」

「無理だ。これはそこの主の加護と俺のの力がマッチしてこういう形に”進化”したため戻るのは無理だと言われた。俺以外の同種の魔物も人間にはなれず、偶然の産物と言っていた。」


加護のみで人になれるのかと思ったら、そういうわけではないようだ。


「…ふむふむ。

仕込み刃は元の姿だった時の物?」

「そうだ。俺はカマキリの魔獣だった。その時に使っていた鎌を体のどこからでも出せるが、最長2メートルくらいが限界だ。」

「なぜここに?」

「研究所からの依頼だ。

この森の急激な発展…『森食もりはみ』のことを調べたいらしい。

短期間に二度もの森食みが起こったということで注目されているようだな。」

「どういう意味?」

「そのままの意味だ。

本来、森食みという現象は起こすのが非常に難しい。というのもー」


彼の説明をまとめると、森食みはいわばダンジョンの”強制進化”である。

何がしかの要因で森全体の活気が度を越して悪くなると、それに対応できるように進化する。

たとえば突然、山火事が発生した結果、森としての体裁を保てなくなったとき森はそれに対応するように進化する。

今度は山火事が非常に発生しにくい、いわば火に対して耐性の強い環境ができるのだ。

山火事の例でいうならば、山火事は極度の乾燥が原因だとされるため、今までとは比べ物にならないほどの湿潤な環境へと変化する、ないしは乾燥しにくいような構造を持つようになるのだ。

単純に燃えにくい物質で出来るようになったりもするかもしれない。


つまり森食みが起こればおこるほど、森は様々な経験をしてきたということになり、経験を積めば積むほど環境の変化にも強くなるということにほかならない。

こうした異常な環境適応力を持つ場所のことを迷宮ダンジョンと定義するらしい。

ゆえに短期間に二度おこるというのは無いことではないけれど、なかなか見られないことであるし、そもそもダンジョン自身の劇的な変化はそれだけで多量のエネルギーの消費を招く。ダンジョンの中には人為的な森食みを行った結果、持ち直すことができずにそのまま消えて行った場所もある。


「…なるほどねぇ。

短期的に二度の森食みが起こり、なおかつそれを維持できているということで森食みという現象の観察がしやすい…格好の研究資源というか、研究材料がここ…なわけか。」

「おそらくは。もともとの要因はなんであれ、二度目は研究者たちが起こしたという噂を聞いているがな。」

「…。」


やまいから聞いた話の事だろう。

おそらくは特に森食みを行うつもりは無かったが・・・


「…で、森の主を狙ってるのは?もとい僕を狙ってる理由を聞きたいかな。」


実際はグリューネであるが。


「森の主が生きていると三度目の森食みが起こるかもしれないという危惧から処理することを考えたようだ。

そうでなければ安心して調査ができない…ということらしいな。」

「…それだと迷宮ダンジョンは維持できないと聞いたのだけど…?」

「聞いた?」

「…あ、い、いや、ダンジョンの先輩からそう聞いたんだよ。」

「簡単な話だ。ここの付近にはもう町はなく、せいぜいが貧困な村々のみ。

ダンジョンがなくなっても困らないと考えているのだろう。

さらにいえば、これ以上森が広がられて近くの村を壊すという可能性も含めてむしろ望むところといった感じか。

ゆえにどうせつぶすなら研究し尽くそうという魂胆…なんじゃないか?」

「…で、殺すように言われた…わけ?」

「ああ、そうだ。生け捕りにできるならば10倍の報酬を払うとも言われたがな。」


これで聞きたいことは聞けたわけか。


「ここは危険な…もとい僕がいるからということで手を引くように言ってくれ。

森の外に出て人間社会で暮らす君に分かるかは不明だけれど、僕はここでゆっくり生きたいだけだから。

ああ、広める際は君でもまるで歯が立たなかったと言うように。

それを守るなら逃がしてあげる。」

「そんなことでいいのか?」

「ああ。ただし…そうだな。動くなよ。手元が狂ってつぶれても知らないからね。」


彼の右目に魔方陣を刻む。


「そうしたことをしないということがわかればこの魔法が発動して右目が破裂する。

当然脳みそにまで貫通するから、しっかりと言われたことをすること。

いいね?」

「あ、ああ、分かった。」


こうして森への闖入者に対する対策は出来た、と思いたい。


あ、ちなみに彼に刻んだ魔方陣はフェイクであり、ハッタリだ。

そんな便利な魔法あるわけがないじゃないですか。



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