予定調和
アルファポリスの何かの賞に応募してみました。
よしなに。
変形機能があると言ってのけた勇者カイト。
そして、目の前には立ちはだかる邪悪なドラゴン。
仲間は疲れ果てて、動けない。
一対一の真剣勝負。
生きるか死ぬかの瀬戸際で勇者カイトはなんとする!!
次回っ!
「勇者カイト死す!?」
絶対見ろよなっ!!
「・・・何をぶつぶつ言ってるの?」
「いや、別に。昔風の次回予告を。」
なんてふざけてみたのだが、それを聞いていたやまいに怪訝な顔をされてもうた。
とりあえず勇者のほうを見ると体から目に見えるほどの魔力がほとばしっており、それが水の流れのように剣に集まっていく。
変形か。変形だな。
なんだかんだでちょっとわくわくしてます。
男にとっては変形とか変身とかはロマンである。
そして何の変哲もなかった剣は光り輝き、その刀身には幾何学模様が浮き上がる。
これが第一段階だろうか?
「今の俺は・・・強い!」
お、おう。
なんか自画自賛をし始めた勇者は瞬時に距離を詰めて、フィンケルの首に向けて剣をふるう。
「首狩りっ!!」
なんか勇者っぽくないスキルだなと思いつつも、勇者の剣は吸い込まれるようにフィンケルの首にぶち当たる。
全く避けるそぶりを見せなかったことから、あえて受けたな。
『がああああああっ!?』
ぶしゅーっと血が飛び出るフィンケル。
しかし傷自体はとても浅く、鱗を砕いて下の表皮にわずかばかりの血をにじませる程度である。
あの血。
たぶん筋肉的な感じで無理やり噴き出してるんだろうな、と思うとほんとご苦労様である。
そしてその血が口に入ったのだろう。
勇者はその端正な顔立ちを不細工になるほどまでにゆがめて急き込んだ。
「ごふっ!?
げほっげほっ!!
こ、これは・・・毒かっ!?」
あ、やっぱり不味いのね。
そこから察するに竜の体って不味いんだろうなと関係ないことを考える僕である。
フィンケルはその言葉にちょっとむかついたようで、勇者に対してちょっと本気を出したようである。
が、それは僕たちもまずいのでさりげなく射線上から逃れつつ、地面に防御用の魔方陣を準備しておく。
いやはや、魔法が使えるようになると便利である。
「い、いけないっ!?」
「くそっ!!
カイトッ俺たちもいくっ!!」
地面に魔方陣を書いている間、僕たちのそばにいた僧侶と戦士である二人が勇者のもとへ駆けつける。
あ、ここにいれば無事だったのに、なんて思ったが、勇者が死ぬのを見ていられなかったのだろう。
まぁ直撃を受けたら死ぬよね。
竜の息吹は。
『私の血を不味いとは失礼な輩どもだっ!!
ちょっとお仕置きしてやるからなっ!!』
口元にたまる魔力がぐんぐんと大きく育っていく。
言わせてもらうと、それはちょっとどころじゃないと思うんです。
そして、キャラ崩れてるよ?
「くっ!
第三形態に移行するっ!!」
「マナ・フィールドッ!!」
「ドミヌス・ドミナ・トゥテーラッ!!」
「絶対崩壊斬ッ!!」
勇者カイトがさらに剣を変形させ、僧侶リッカがそれぞれの味方の体に魔力による防護膜を貼り付け、魔法使いアティは魔力による防壁を何重にも展開、戦士センシが攻撃を少しでも相殺するべくすさまじい衝撃波を撃ち放つ。
僕は僕でそこそこの魔力で自分とやまいに魔力による膜を張りつつ、やまいを抱えてフィンケルの背後に忍び寄る。
こちらを狙っているわけではないので、一番安全な発射方向と反対に逃げればいいのだ。
爆風もすべてフィンケルの体が盾になってくれるし、万が一のために防護も使ってある。
そしてフィンケルが発射した。
そこそこ強めのブレスを。
『ドラゴンブレスっ!!』
口から吐き出されたのは無数の槍。それぞれは水晶でできており、それがすさまじい勢いと量で射出される。
隙間なく、そして絶え間なく打ち出されるので、まるで水晶でできた壁が押しつぶそうと迫ってくるようなものだ。
戦士が繰り出した衝撃波はぶつかった瞬間に消し飛び、勇者は剣から放出されるビームのような斬撃を飛ばすも一瞬拮抗し、何百本の槍を切り落としたところで消え去る。
もちろん槍はその何十倍もあるわけで、あ、これ勇者パーティ死んだなと思いながらやまいの視線からさりげなく隠そうかとしたところで、あれまさすが勇者。
そのビームのように飛ばす斬撃を何度も何度も繰り出してきたのである。
それに続いて戦士もさっきの衝撃波を繰り出しまくる。
きれいに輝く水晶があたりに散らばりまくるので、できるだけ回収しておこう。
なんか高く売れそうだ。
これにはフィンケルも喜んだのか、
『ふははははははっ!!』
ブレスの勢いを強めた。
飛ぶ斬撃と、飛ぶ槍のぶつかり合いである。
五分ぐらい粘る勇者。
じり貧で、負けるのも時間の問題。
どう考えても避けたほうがいいと思うのだが、なぜか避けようとしない勇者たち。
ところがその眼には絶対負けないという意思が見え隠れする。
何を狙っているのだろうか?
魔法使いと僧侶も何がしかの魔法の準備をしているようだし、ここにいたらその起死回生を狙う一手に巻き込まれるんじゃないか?ということに気付いた時のことだ。
拮抗が崩れる。
ブレスが負けてきている。
加減していたとはいえどもドラゴンのブレス。
負けるわけがないと思ったのだが、よくよく考えてみてほしい。
ブレス。
ブレスを日本語訳すると息吹。だろうおそらく。
息吹とはすなわち息を強く吐いていることだ。
息を吐く。
・・・吐き続けていられる生物なんているのかな?
そう、息継ぎの瞬間を彼らは狙っていた。
おそらく唯一、無防備なその瞬間を!!
「いまだああああああああああっ!!」
やべっ!
巻き込まれるっ!?
「やまいっ!!」
「う、うん!」
やまいを抱きしめつつ、全速離脱。
離脱しながらも勇者たちのほうを見ると、フィンケルに向かってすさまじい魔法が連発されていた。
天に昇るのかというほどの戦士の渾身の一撃。
ユニークスキルの『天上天下唯我独尊』。
巨大な炎と渦巻く風がビームのように相手を穿つ、最上位属性魔法を合わせた一撃。
『イグニス・ストリーム』。
すべては表裏一体。回復魔法を極めた人間だけが使えるという回復効果の反対である、破壊効果をもたらす超絶物理破壊魔法。
『メガ・メガ・メガ』。
勇者だけが使えるという光でできた伝説の剣。
それの3段回目。
エクスカリバーンによる極太のビーム状の斬撃。
『エクスカリバーン』。
それぞれがフィンケルに向かって打ち放たれる。
僕は僕で攻撃の余波に耐えるべく、縮小収納していた触腕をすべて展開し、やまいを守るように包み隠す。
やまいはやまいでくろもやさんを展開し、僕ごと包み込んだ。
次の瞬間。
カッとした光とともに爆発が起こる。
その爆発は山を吹き飛ばす勢いで広がり、小さな水晶森のダンジョンの5分の1を吹き飛ばす勢いで広がる、はずだった。
「なっ・・・」
「ばかな・・・」
「そんなことって・・・」
「ここまでとは思いませんでした。」
当初来ると思った攻撃の余波は一切来ず、すべての攻撃を完全に受け止め、そして空に逃がす一匹の竜がいた。
さすがに無茶な行為だったのか、すべてのエネルギーを受け止め、凝縮し、空にはじくという行為をするために使った両腕はボロボロで、右腕に至っては千切れかけていた。
が、すぐにジュージューと音を発てて治り始める。
『さすがに私が原因でこの森を壊すわけにはいかぬよ。主様としての仕事はおろそかに出来ぬし。
ただ・・・ちぃぃぃとばかし、焦ったぞ。
なかなかエキサイティングではあったがの?』
と言いながらからからと笑うフィンケル。
あれを無理やりまとめて空に投げ出したうえでのこの余裕。
とんでもないね。
僕にもたぶんできるが。
受ける触腕が多い分、うまく衝撃を分散してやればおそらく無傷でできるだろう。
あくまでも理論的には・・・であり、非常にテクニカルな触腕さばきが必要になるだろうけれど。
うん、やっぱり触腕の半分は吹き飛ぶな。
『さて、力を使い果たしたようだし、自然の掟に従い負けた奴はすべて食ろうてやろう。
手向かわなければ食われることも無かったろうに愚かしいの。』
「くっ・・・くそっ」
「カイトッ!
カイトっ!!」
「くそ、仲間たちを食う前に俺を食いやがれっ!!」
「どうにかして・・・どうにかしなくては・・・」
勇者たちが口々に悪態をつき、悔しそうに泣き出す。
が、勇者はまだあきらめていない。
この絶望的状況でも何かを狙っている。
そのたくらみにあえて乗ってやるみたいで食べるという嘘を言ってまで、そのまま近づくフィンケル。
ちなみに嘘だと見抜いたのはフィンケルの歯が草食動物のものに酷似していたためで、おそらく彼女は草食であり、肉なんて食べたらおなかを壊すに違いない。
そもそも、その論理に従うのであれば彼らが来ることになった男ども殺しまくり事件の時すでに食べているはずである。
草食動物は肉食に比べておいしいというのが鉄板なんだけど、なんでフィンケルの血はあんなに不味いんだろうな・・・なんて、くだらないことを考えつつ。
もう巻き込まれかけるのは御免でゆえに本気で防御魔法を張ることにしよう。
防御魔法を張りながら彼らを見ると勇者は最後の力を振り絞った一撃をフィンケルにお見舞いした。
「俺は勇者なんだっ!!
危険な魔獣に屈っしはしないっ!!」
食べようとして大口を開けたところに先ほどのエクスカリバーンを打ち放ったのだ。
それが直撃し、鱗がはじけ飛んだ。
が、それだけである。
『終わりかの?』
絶望。
そう、絶望に染まる勇者たち。
やまいもどことなく不安そうにこちらを見上げる。
どうするの?と言っているようだ。
もちろん見てる。
茶番だとわかっているのに、なぜその邪魔をするのか。
アホらしい。
勇者たちには悪いが、今しばらくその絶望を噛みしめているといい。
襲い掛かってきた罰である。
殺す気ならばとっくに死んでいた。
何かフィンケルには考えがあるのだ。
くだらない考えだと思うけど。
「まってくれ・・・俺一人の・・・俺一人の命で満足してくれないか?」
「カイトっ!?」
「てめぇっ!
何言ってやがるっ!?」
「そうですよっ!カイトさんっ!!」
という背筋が痒くなりそうな茶番が始まりそうになったので、いい加減どうにかしてくれという意図でもってフィンケルを軽く睨んだのだが、フィンケルは何を思ったか手招きする。
「なに?」
『・・・うむ、ぶっちゃけもう私としては満足なのだが、どう落とし前をつければいいと思う?』
その言葉にびくりと震える勇者一行。
そして僕のほうを見ていろいろと疑問が浮かんでいるようだ。
まぁ竜と普通に話してるしね。
「・・・あまり見せたくはないね。」
と僕はやまいを見ながら言う。
殺す場合であるならということだ。
個人的には好きにすればいい。
彼らは確かに悪い人間ではないのだろう。
あくまでも人間から見れば、だ。
しかし魔獣側から見れば、殺しに来てるのだ。
殺されても文句は言えない。
だが、さっきのやまいの目を見るにどうもそういったことへの抵抗感を持ち始めているようで、助けてあげたいという意思がわずかに垣間見えた。
いままで人と過ごしていたのがいい感じに働いたのかも。
僕と違って彼女は人だ。
その感覚で間違いはない。
僕としても殺しはよくない。短絡的だよ~とは思うし忌避感だってあるのだけど、その辺もまた結局は僕ではなくフィンケルが決めることなのである。
どうこう言える筋合いは僕にないのだ。
『・・・ふむ。ではこうしよう。
そこの娘二人のうち、一人。
ここに残るのだ。』
「なっ!?」
『理由は・・・面倒だからそのうち説明するとして、おぬしらと私とでいくつか。
約束事をしよう。』
「そんなこと認められーっ!?」
『だまれ。』
「っ!?」
ちょっと本気を出したフィンケルの魔力の奔流に絶句する勇者一行。
『この場でおぬしら皆殺しと、一人残る。
どちらが賢い選択かなど言うまでもあるまい?』
「何を考えているんだ?」
ちょっと意味不明すぎたので聞いてみる。
『ふふふ、何。
拷問にかけるというわけではないぞ?』
「いや、知ってるから。」
竜とて動物。
拷問にかけて楽しむ、なんていう竜もいるかもしれないが、そういったことに悦を覚えるのはおそらく少数派だろう。
『まず一つ。
残る娘とてたまには帰りたかろう。
ゆえに寛大な私は娘に無事帰る手段を用意する。
その約束が、「おぬしら四人のうち」誰か一人が残ること、だ。
すなわち人質交換を許すということであるな。』
「おまえは何を考え・・・」
『だまって聞けというのが分からぬか?
・・・二つ目、となりの女子と子供は私の友人だ。
危害を加えるような真似をした場合、即刻おぬしらの首を刎ねに赴く。
ゆめゆめ忘れるな。
そのための目印もつけてこう。』
「・・・ぐ。」
フィンケルは勇者一行一人一人に魔力による焼印をつけていく。
黙れと言われた勇者一行は黙って焼印をつけられるしかない。下手をすればこの場で首を刎ねられかねない。
『三つ目、おぬしらには私と戦う義務を課す。
この義務を怠った場合にもその焼印が反応し、私自ら首を刎ねる。
定期的に・・・そうだの。
半年に一回は必ず戦うことじゃな。
とりあえず今はこんなところか。』
意外と面倒な条件ばかり出すフィンケル。
命が助かる代償としては安い、と思うが。
「・・・私が残る。」
といったのはリッカと呼ばれた僧侶。
それをほかの仲間が止め、みたいなイベントがありつつ、結局残ったのはその子であった。
『うむ、これで寂しくないの。』
というフィンケルを見て、あ、これ全部ただの脅しだなと気付いたのはどうにも僕だけだったようである。
動物豆知識
草食と聞いて皆さんが思い浮かべる生き物は何でしょう?
筆者はカワニナを思い浮かべます。
最近買い始めたからね!
さて、学校の理科でも習うことなのですが、それにちょっとした知識を加えて動物の歯についてお話しようと思います。
動物の歯には大まかに草食動物が持つすり潰す歯と、肉食動物の持つ噛みちぎる歯があります。
人間はその二つを中途半端に持ち合わせた雑食の歯を持っているわけです。
ここまでが基本。
歯の形はさらに細分化されます。
同じ肉食の生き物でも一部のカエルは突き刺しつつ、引っ掛ける歯を持っていたり、カワニナを初めとする巻貝の類は舌歯と呼ばれる、石などに生える苔を削り食べるための形状をしています。
様々な歯の形があるわけですね。
中には歯を持たなかったり、水中のプランクトンを鰓で濾しとる濾過摂食を行ったり。
タニシやクジラなどが濾過摂食をします。
ちなみに、プランクトンは小さい動植物のことを指す、わけではなく漂う生物のことを言うので、クラゲなどもプランクトンになります。
ミジンコ=微生物=プランクトンみたいな誤解をしてる方は割といるのでは?
クラゲの最大種はキタユウレイクラゲ。
海の中でこんなのと出会ったらマジでビビります。
傘の直径が2.3メートル、触手長さが37メートルにもなるとか。
2.3メートルの直径を持つ長さ、37メートルの円柱を思い浮かべればその巨大さが分かるかと。
触手全てが37メートルと言うわけではないので実際はもう少し小さく見えるでしょうが、バスくらいは余裕であるわけです。
日の届かない暗い海の中、ダイビングをしていたら暗がりからこんなものが姿を表す。
想像してみて下さい。すごい怖いですww
本題に戻り、ダーウィンフィンチ類の話もと思ったのですが、長くなったので自粛。
興味のある方はググってみると暇つぶしにはなるかもしれません。




