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タコのグルメ日記  作者: 百合姫
Ⅷ章 水晶砦クリスタルシティ
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勇者が来たようです

勇者登場!

この世界の勇者はほんと強いです!

一人で下位竜を撃退できちゃうんだぜ!!

すっごい強いわーぱないわー、ちなみに邪竜の加護もちは一人でぶっ殺せます。中位竜くらいなら撃退もできます。

ゆうしゃつよいわー

「ん?」


そういえばやまいが何も答えていない。

どうしたんだろうと僕の背後にしがみつくやまいを見るとそこには恐怖と敵意の入り混じった・・・ああ、そうか。

そういえば僕が殺されたのは竜だったな。

助けてくれるが竜だとは言っておいたのだが、やはり実際に目で見て感じた場合は違うのかもしれない。

ふるふると震えて、顔色も悪い。

すっかりトラウマになっているらしい。


竜の魔力には似通った威圧の感がある。

なおのことあの時のことを思い出しているのだろう。


とにかく落ち着くようにと抱きしめ、ゆっくりゆっくりと背や頭をなでおろす。


「大丈夫、大丈夫。

敵じゃない、怖がる必要はない。」


じっくりと染み渡らせるように声をかけていく。

だんだんと落ち着いていくやまい。

とんとんと僕の背が叩かれるのはおそらくもう大丈夫という合図だろう。


「やまい、大丈夫。

あの時とは違うから。」

「・・・うん。」


なんとか落ち着いたようで何より。


『私は何かしてしまったかの?』


不安そうにこちらを見る死体っ娘。


「べつに気にしなくていい。

えと・・・それで・・・ステファニーちゃん。

やまいの力を取り除けるって話をそこの竜から聞いたのだけど・・・」

『そのとおりよっ!

あたしステファニーはなんだってできるんだからっ!!

一つの国だってつぶせるよ!!』


へぇ、コメントに困る発言である。

とりあえずスルーしておこう。

そしてさっきから死体っ娘が手をゆらゆら揺らすのでそれにつられて手をツッコまれてるステファニーも揺れる。


「腹話術・・・じゃないんだよね?」


一応確認しておこう。

魔力が全く感じられないうえに、精気もまるで無い、本当にただの人形にしか見えないステファニーなのだが、ここは異世界。

そんな存在もいるかもしれないと話しかけたのだが・・・


『ううん、腹話術よ!

だってステファニーはお人形さんだものっ!』

「そうか。お人形さんだものな。

・・・ううん、あれ、うん、あれだな。

帰るか!」


ちょっと訳が分からないです。

いろいろとツッコむところが多すぎて面倒になったので、もう帰ることにする。

ただの人形て。


『ちょちょちょちょっと待つのだっ!』

「いや、人形遊びに付き合ってる暇ないんだ。

おまえ、これもう『実はそんなやつも手段もなかったんだ!引き留めておしゃべりするためだけに嘘つきました』のノリだよな?

もう面倒くさいんだけど。

ほんといろいろと面倒くさいんだけど。」

『すまんすまん、だから帰らないで、まじめにやるから。まじめに応対するから!

じ、じつはだのう、呼んでいた友人が”なんで俺がお前のところにいかなきゃならんのだ!”と怒っての。』

「・・・怒りっぽい人なんだね。」

『全くだ。

ちょっと”みんなのアイドル、フィンケルたんですぅっ!”って挨拶から入り、ご機嫌伺いがてらの人形劇まで見せたというに・・・』


原因はそれじゃないだろうか?

と思ったが過ぎたことを言っても仕方ない。



『久しぶりの客人を招くということで、私頑張った。

めっちゃ頑張った。すごく頑張った。

そしたら無視決め込んでたやつも折れての。

”わざわざここまで声を届けてこんでいいっ!うるせえわっ!!

これやるから勝手に使っとけっ!!”という一言とともに渡されたのがこれなのだ。』


といって死体っ娘が取り出したるは、毒々しい色のどんぐりである。


「・・・なにこれ?」

『それがのう、私もほんに困ってしまって・・・使い方がさっぱりわからん。』

「おいぃぃぃぃぃぃっ!?」

『何かと一緒に飲むのか、何かしらの処理を施してから食べるのか、そのまま適当に体に貼り付けるのか、煎じて体に刷り込むのか、肛門からツッコむ座薬的なものなのかすらもわからん。

使い方がの。

一度も使ったことないし、ただ奴が昔に”邪竜の加護ってのがあってだな・・・それをどうこうするのは俺の専売特許だぜ!”と自慢するように言っていたのを聞いていただけで・・・』

「一応木の実の体を取っているのだから・・・食べる、んじゃないか?」

『と、思うだろ?

しかし、この色を見て食うものかと言えるかは些か難しくないかの?』


確かに。

かなり厳しい色合いで、濃紺の下地に黄と赤の点々が散りばめられているどんぐりである。

少々、食べるには勇気がいるだろう。


そのまま二人で悩んでいると、ひょいと手に取るやまいが。

あっと思ったその時には口に入れてしまった。


『ええええええええっ!?』

「ちょぉぉおおおおおっ!?」


なんでそんな簡単に口に入れちゃったのっ!?

あほなのばかなの死ぬのっ!?やまいがっ!


「こ、こらっ!ぺってしなさいっ!!ぺってっ!!」

「・・・ごくん。大丈夫、すごくおいしそうに見えたから。」


お、おいしそう?

なんで?

・・・邪竜の加護を持つ人間にだけ美味しく見える、ないしは食べても大丈夫だった、ということだろうか?


でもってしばらくするとやまいの体から何か変な違和感?みたいのがふっと消えたように見えた。

が、変化といえばそれだけである。

これでもう彼女は嫌われなくなったのだろうか?


今までに嫌われてきた人たちに好かれるようになるのだろうか?


僕もどきどきしながらやまいに言う。


「や、やまい・・・くろもやさんは?」

「・・・出てくる。」


手を軽く開いて、そこから邪竜の加護の力である、くろもやさんが滲み出る。

くろもやさんが出るということは・・・


「失敗・・・か?」


それとも緩和くらいにはなったのか?

ここにはもともと忌避フェロモンの影響を受けない人しかいないのでどうにもわからん。


『ううむ・・・あれじゃの。もひとつこちらに送還してもらうように言おう。

ついでにしっかりとした使用法も聞いての。

だから気を落とすでないよ。』

「あ、ありがとう。」


気遣いあふれる彼女の言葉にさしものやまいも礼を言う。


『さぁさっ!気をとりなして、茶でも飲んで過ごそうではないかっ!

今日のために急いで奴から茶葉も頼んでおってな・・・』


そのまま楽しそうに話をし始める彼女だった。

今更だが、彼女の名はフィンケルらしい。

なんてことはさておき。


やまいもぎこちなくもフィンケルと一緒にどっから仕入れたのか分からない茶葉のお茶を飲みつつ、のんびりと過ごすのであった。


「・・・うん。これはうまい。」


芳醇な香りに、すっきりとした・・・ほんのりとした苦みとでも言おうか。

苦みとあっさりとしたお茶特有の旨味。

なかなかどうして好きな味である。


『ほうほう?

気に入ったか?

これは私自ら暇つぶしがてらに栽培しているお茶での。

ほれほれ、気に入ったのならもっと飲め。たんと飲め。のめのめのめのめっ。』


どんだけ飲ますんだと思いつつも、久方ぶりに飲む日本風のお茶におなかがたぷたぷになるまで飲み続ける僕だった。


☆ ☆ ☆


そうしてお茶を飲んでいるとである。


「こ、ここは・・・」


人の声がしたほうを向くとそこには立派な鎧を着たイケメンの男が一人とそこの両脇には3人の仲間。

戦士と僧侶と魔法使いと思わしき3人がいる。

中心にいる立派な鎧と細身の剣を持つイケメンの男はもちろん、ほか3人もこの場の違和感に口をあけっぴろげていた。


『おや、ここまでたどり着くとはのう。

人にしてはやるではないか。』


と言って前に出るのはすっぽんぽんの死体っ娘。

戦士とイケメンは顔を軽く赤くさせつつも死体っ娘をにらむ。

そしてその背後の竜本体であるフィンケルをにらみ、そして最後に僕たちに視線を向けた。


「・・・人質・・・ではないな?

どういうこと・・・なるほどっ!!

俺たちを油断させるための罠かっ!?」


戦士が言う。

彼は残念ながら脳筋のようだ。

こいつらが来るかどうかも分からないのに人質を取るわけがないし、罠を張るはずもないだろうと。

そもそも竜は罠を張るとかそんなちゃちな存在ではない。

というか彼ら自体がもはや罠だろう。


ちなみに僕はやまいと一緒に水晶の森に来たので、服を着ています。

今日の服はジーパン風の冒険ズボンにタンクトップという快活な感じの服装である。

そしてポニーテールだ。

好きな人はとことん好きという感じだと思われる。

なんて話はさておき。


「くっ!そういうことかっ!!」


と言い放ってイケメン男がいきなり死体っ娘に切りかかった。


ど、どういうことだってばよっ!?

訳が分からなかった。


『むっ。』


その剣を軽々素手で受けるフィンケル。

だが、男はすぐに背後に飛び退くと同時に僕達を抱えて後ずさったのである。

さりげなく僕は何があってもいいように、やまいを抱えていたため実際は僕だけを抱えた男。

おう、よく僕を持てるなこいつ。

筋肉の塊である僕は見た目に反して超重量級。

魔法なんてのがある分、物理法則そのままの重さというわけではないが、それでもお相撲さんよりはレベルで重いはずなのだ。少なくとも。


それを抱えてこの俊敏さ。できるっ!

なんてね。

この世界では珍しくないことでした。


ただ内心で見た目よりは重いなこの娘とかは思ってるに違いない。


「お前・・・擬態して人を食うタイプの魔獣だろう?

だからこの子達に人の姿をして近づいた。

違うか?」


違います。

どや顔で言うイケメン男には悪いけど全く持って違います。

てか降ろしてほしい。

中身男なので、密着してるのはちょっと遠慮したいです。


「君たち、危なかったね。

だけど俺たちが来たからにはもう安心だ。

なぜなら・・・俺は勇者だがふっ!?」

「いつまで引っ付いてるのっ!ばカイトっ!!」

「あうっ。」

「むぅっ?」


決め台詞を言おうとしたところで魔法使いの娘っ子にひっぱたかれてのけぞるイケメン男。改め、勇者。

僕はしりもちをつき、お尻を痛めた。なんてことはないけれど抱えていたやまいもちょっと驚いたようだ。


「大丈夫、やまい?」

「へ、平気。」


少し顔が赤いのはどうしてだろうか?

まさかさっきのどんぐりの!?


「やまいっ!

顔が赤いけどそれは大丈夫なの!?」

「だ、だいじょうぶ、これはそうじゃないから・・・」

「ほ、ほんとに?

隠したら逆に心配するからね?」

「大丈夫だから・・・」

「・・・そう。それならいいけど・・・」


なんてことを話してると、勇者が立て直したらしく、彼は言う。


「君たちはさっさと逃げろ。

ここにいては足手まとい・・・いや、こんなところで逃がしてもほかの魔獣に食われるのがオチか。

センシッ!

この子達はお前が守ってくれ。

俺とリッカとアティはあいつを討伐するっ!」


と言ってかっこよく抜刀する勇者カイト。

これが僕と彼の初めての出会いだった・・・と言うと後につながる何かがありそうでわくわくしないかい?


実際はそんなことなかったのだけれど。











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