邪竜の加護の正体
お久しブリーフ!
・・・こほん。
久方ぶりの更新で忘れてしまった人がいるかもしれないですが、またこれからしばらく更新し続ける、と思います。
久しぶりすぎて書き方忘れてたり、主人公のキャラが行方不明になっていたりしますが、続きを書きつつも修正していく所存です。
『遠慮なくどうぞ。』
「・・・うん、まぁいただきますけども。」
目の前には大きな切り株。
岩を適当に削ってかろうじて椅子に見えないこともないようなものに座りながらも、その切り株に乗せられた赤い液体に目を向ける。
「・・・アセロラドリンク?」
『さぁさぁ、乾杯といこうではないか!』
といって、たわわに実った胸を震わせながら杯を掲げる彼女。
こちらに向かってきた人間たちを皆殺しにしたあと、そのまますぐに森の奥にやってきた彼女はその辺の、水晶で出来た木の洞に手を突っ込んだかと思ったら、赤い液体がなみなみと注がれた得体のしれない木のコップを取り出して僕の目の間に置いたのだ。
始めて見る飲み物に不安半分、期待半分で口をつけたところ、口に広がるのは濃厚な酸味。
濃厚すぎるほどの酸味が口を突き刺し、次にやってきたのはコチラの舌を抉り取ろうとしているんじゃないかと思える程のえぐみ。
間髪いれずに襲いかかってくる強烈な生臭さと、品によってはアクセントとなるべきなほのかな辛味までもが吐き気を促す。
これで終わりかと思えば口に残るケレン味溢れた甘味。
どこにこの糖分が隠れていたのかと思える程の糖分があとからあとから吹き出つつも舌にまとわりついて離れない。
その有様たるや、油のようなしつこさ。
唾液で押し流そうとしても中々、胃に流れてくれず、一言で言ってしまえば文字通り糞まずい・・・いや、まだ糞の方がマシかもしれないと思えるほどにドきつい味である。
思わず吹き出さなかったのは、悪い意味でこの世ならざる味の分際で強烈な魔力が含まれていたためである。
これだけで10レベルは上がりそうなほどに濃厚で激烈な魔力の本流が身を包む。
その充足感を味わうためだけにこの不浄なる一口を飲みきったといってもいい。
思わず二口目を飲もうとしたところで、舌が拒絶したのであるが。
人に出されたものだし、という礼儀はこの得体のしれない液体が舌に触れた瞬間に吹き飛んでいるというのは言うまでもない。
「・・・とりあえずなにこれ?」
『私の血だよ。
どうかね?美味しいだろう?』
「・・・。」
なるほど。
竜は味覚がおかしいのか。
今、目の前で動いている死体、もとい彼女はこの血を飲んで死んだというから、強烈な魔力云々よりもこの味で死んだんじゃないか?と思わせるほどには不味い、はずなのだが美味しいと?
「・・・僕の好みじゃない、とだけ言っておくよ。」
何も言うまい。
味覚なんて人それぞれである。
それよりもすぐに本題に入ろう。
「邪竜の加護の件だけど・・・」
『せっかちだのう・・・まぁよいか。
さて、話が長くなるのだがその覚悟はー』
「ないので簡潔にお願いします。」
『・・・むぅ、また釣れないことを言う。
そうだの、ならば簡潔に言ってしまおう。
加護を取り除くのは可能だ。』
「ほ、本当にっ!?」
『うむ。
まず加護というものがどういうものかは知っているか?』
「いや知らない。」
『・・・そこからか。
まぁこれも簡潔にまとめてしまえば人間がダンジョンと呼ぶ場所は自然発生する。
我々は異界と呼んでいるが、これが発生する条件としてー』
「ああ、そのへんも飛ばしで。」
『・・・少しくらい話に付き合ってくれてもいいではないか。』
「また今度改めてくるよ。その時にお願いします。」
そう言うと不満そうに唇を尖らせる死体ッ娘。
背後の本体である竜も唇を尖らせたようなリアクションをしているが、正直キモいだけだ。
『・・・むぅ・・・とにかく、その異界と呼ばれる場所では特異点と呼ばれる特別な生物が生まれることがある。
それが私だったり、お前さんに加護を与えた存在だったりする。』
「・・・邪竜の加護は邪竜が与えたものということ?」
『・・・いや、違う。
邪龍の加護だけはほかと違うのだよ。』
「・・・もったいぶらないで結論から言ってほしんだけど・・・ダメ?」
寂しいのか話を長引かせるために、やたらと回りくどい言い回しをしたがる彼女だが、こっちはさっさとどうにかする方法を知りたくてたまらないのだ。
急かそうにもこちらは聞く立場であるからして、あまり強くは言えない。
『・・・邪竜と呼ばれた存在はすでに殺されている。
数千年前の勇者にな。』
「・・・それでどうして加護がかかることがあるのさ。」
『お前さんは分からんだろうが、竜というのは不義理を絶対に許さない。』
は?
『不思議そうだな。だが、まぁ聞け。
とにかく竜というのは人情深い、というと変だが人間よりも遥かに情に重きを置く。
例え筋が通っていようが、情が許さなければ決して許しはしないし、人間に家族を殺されればその人間の済む国ごと滅ぼす。
浮気なんて言語道断。どこぞの王龍と慈愛竜が結婚したとか言っていたが、浮気をした王竜を一箇所に閉じ込めて数千年縛り上げるくらいには嫉妬深い。嫉妬した本人は閉じ込めるための異界を作るのに力を使い果たして死んだと風の噂で聞いたが・・・
なんて話はさておき、とにかく竜は・・・しつこいとでも言うべきかな。』
なるほど。
だから血の味もあんなに色々としつこかったのね、と妙なところで納得。
『もちろん個体差はあるが、とにかく竜は情深いのだ。
そして邪竜はもともと一人の人間だった、と言われている。』
「・・・で?」
『・・・昔々、とある男が居たそうな。
その男は・・・』
「あの、その語り部口調だと絶対長くなるよね?
確実に何かしらの長いエピソードを聞かされる流れだよね?ちょっと勘弁して・・・」
その男は生まれてすぐに親に捨てられた。
なぜなら不気味な角と尻尾が生えていたからである。
生まれてすぐは何かの病だと信じ、しばらくは育てていたのだが、男が立ち上がれる頃には捨てられたのだった。
「あ、この流れはやっちゃうんですね。そうですかーそうですかー。」
さて、その捨てられた男であるが男は捨てられて間もなく死んだ。と思いきや、生き延びた。
男の両親が男を捨てて4、5年が経過した頃。
両親が済むただの村にその名が届くほどに男は有名になった。
力が優れていたわけでも、神童だったわけでも、その角や尻尾が目立ったわけでもない。
その端正な容姿にである。
男は大層な美形で、それこそ神が創ったのではないか?と思わせるほどの美少年と成長していた。
見るもの見るものをすべからく魅了していくほどのある種の毒、と言ってもいいほどの容姿の噂と名は瞬く間に男がいた国に、それどころか世界中に広まった。
捨てたはずの親ですら、手のひらを返したほどであり、母親はその男と生涯を遂げたいと思ったほどである。
男は王様に連れられ、王様の娘、もとい王女と結婚し、国王となったのだった。
「・・・ふぅん、で?」
『で、とは?』
「それで、そこからどうなるの?
ようはその男が邪竜になるんでしょ?」
『いや、ただのこの国の王族の起源の話なのだが?』
「・・・いやいやいやっ!
邪竜になった男の話じゃないのっ!?」
『とある男の話と言ったろう?
何を勘違いしてるんだか・・・ぷーくすす。』
ああ、この死体っ娘。
そういうタイプの人?
人をおちょくって楽しむタイプの人?
今、真面目に話してましたよね?
つか、竜の情深いうんぬんの件も丸々必要ねぇーじゃねぇか。
「・・・ここら一帯焦土に変えたろか。」
『やめいやめい、あまりにも急かしてくるから、ちょーっと余計な話を挟んだだけだろうに。
私の話に付き合う程度のこと、してくれてもよいだろう?
・・・それに今までの話がすべて関係ないというわけでもないのだ。』
ニマニマしながらそう言う彼女。
た、確かにまぁ淋しがりっぽいセリフをちょいちょい言ってくる彼女の発言から察するに彼女はおしゃべりで、人とのコミュニケーションが好きなタイプなのだろう。
せっかく久方ぶりに会った話せる相手を前に色々と余計なおしゃべりを挟んでしまうのは無理もない。
むしろ彼女は僕に対して知っていることを素直に話す義理もないのである。
「・・・早く話してくれないかな?
話す気ないならいい加減、帰るけど・・・」
力づくで吐かせるのは無理だし。
『ふふふ、では続けるとしよう。
での、この国王から生まれた最初の息子。
それが邪竜、だったらしいのだ。』
「・・・らしいって・・・」
『さすがに数千年前から生きているわけではないのだから仕方なかろう?
飲み友達から聞いただけだからの。』
「・・・。」
じとっと睨む僕。
『でじゃ。
この男の特徴、心当たりないか?』
「・・・それは聞いてて思った。
竜人でしょ?
・・・竜人の起源はその王様の子孫ってことになるってこと?」
『そうなるの。』
角と尻尾、竜人の特徴だ。
やまいは腐り落ちてしまっているのだが。
『つまりだ。
邪竜と呼ばれた息子の持つ固有魔法技能。
それが邪竜の加護の正体である。
そもそも本格派の竜は人と比べたら強すぎるからの。
勇者だろうと魔王だろうと人である限り叶うはずもあるまい。
だが、それを可能にし、竜を屠った男がその息子だ。
この頃はただの強大な力で、デメリットらしいデメリットは無かった。
しかし忘れてはならない。
竜は情深い。
彼ら竜達は自身を殺しうる力に対して呪いの念を込めて王の息子に対して、名を贈った。
それが邪竜であり、邪竜の加護であり、その実態はただの魔法技能かつ先天的な異能とでも言うべきもの。
今の時代の竜人に時たま発現する異能は、忌避の呪いもまた一緒に発現する。と言うことなのだよ。
つまり、ぶっちゃけてしまうと遺伝的な問題だからどうしようもない!』
「・・・そ、うか。
ありがとう。
僕はこれで帰・・・」
もともとダメ元である。
無理だということがわかっただけでも・・・っいうか、さっき、可能だって言わなかったか?
『これ、待て待て。まだ話は終わっておらぬ。
先に言ったことを忘れたのか?
都合のいいことにそれをどうにかできるやつを知っているのだよ。』
「それは今までに嫌われた人間の関係も修復可能?」
『しかし完全にその異能を取り除くという形になるため、唯一、人が竜に対抗しうるほどの力を失うことになるのだが・・・かまわぬな?』
「・・・もちろんだっ!」
もともとは家の門番的な意味で奴隷商のところから連れてきたやまい。
しかし今や、僕にとってはかけがいのない子である。
そんな力がなくてもずっと守ってあげるし、あの子が望むならば街でしっかりとした職に就くまで見守ってあげるつもりだ。
気恥ずかしいのだが、一言で言ってしまえば一緒にいてくれるだけでいいのである。
『分かった。ならば明日、ここに連れてくるといい。
友人を召喚する準備があるからの。』
そういって微笑む彼女を見ながら、僕も笑みが溢れるのだった。




