水晶森の裸体祭り
ちょっと煮詰まってたので、気分転換がてら終始ギャグテイストな別の小説を新たに投稿しました。
よろしければ暇潰し程度にどうぞ。
煮詰まってる時は別のものを書くと、いざ煮詰まっていた部分に戻った時にスラスラと書けるものです。
僕だけでしょうか?
事件から三日後。
男は逮捕された。
そして、犯人逮捕に協力した人々の表彰式が行われる。
「ありがとうございましたっ!」
「いえいえ。」
「あ、いえ、別に・・・やりたいことをしただけっす。」
僕が犯人逮捕の協力をしたということでリリィちゃんに感謝された。
当然、死ぬかもしれないのに果敢にも男の自爆を止めたラインハルト君も一緒だ。
可愛い女の子に礼を言われて照れているようである。頬が赤く、周りの男達に嫉妬の視線を受けていた。
もしかしたらファンの人に闇討ちされるかもしれない。
「これは表彰状です。
それと何かお礼をしたいのですが・・・街からもそうですし、私からも個人的にお礼をしたいです。
特にお姉様にはっ!!」
前口上らしきカンペを目の前で破り裂きながら、リリィちゃんは言った。視界の隅でまたもや市長らしき初老の男性がうなだれていた。
ん?お姉様?
「はいっ!
感服しましたっ!!
その可憐な見た目に反して、あの強さと勇気っ!!そして自身の体に魔法陣を刻む度量と技量っ!!
是非にお姉様と呼ばせてくださいっ!!」
僕の手を両手でしっかと握り締めながら詰め寄るリリィちゃん。
その頬は蒸気して赤い。
興奮しすぎではないだろうか?
僕のしたことと言えばただ魔法を打っ放し続けただけだ。
「えと・・・うん、まぁお好きに。」
「はいっ!
お姉様っ!!」
「ち、近いです。」
「す、すいません。」
あわわと一歩引くリリィちゃん。
可愛らしい女の子だ。
☆ ☆ ☆
そんな感じで簡単に表彰式が終わって、さらに次の日。
僕は一つ、考えていたことを実行することにした。
「やまい、ちょっとダンジョンまで出かけてくるからお留守番を・・・」
「・・・いや。」
「やまいじゃ足でまといになる。」
「っ・・・何をするの?」
「ちょっと必要な素材を集めにね。
大丈夫、”前回”みたいなことにはならないから。いざとなったらすぐ逃げるし、前よりも僕は強くなってるからね?」
「・・・・・・でも・・・」
「行く必要があるんだ。
やまいがなんといっても行かないわけにはならない。」
「・・・わかった。」
というやまいは何かを決意したような目をしていたのが少々気になったが、ティキに頼んでこっそりついていかないように言っておいた。
大丈夫なはず。
今回、食べ物となる動物がろくにいないであろう、ダンジョンにわざわざ行くのはもちろん大切な用事があるからだ。
ダンジョンと呼ばれる場所には主と呼ばれる者がいることがあるらしい。
学園都市アルタイルの近くにあった森にはいなかったように、必ずいるわけではないが、ここのダンジョンにはいるらしいという話を聞いた。
ならばダンジョンに潜るべきだ。
理由は当然ながらやまいの邪竜の加護をどうにかする術を知っているかもしれないから。
学園都市という場所の図書館にすら邪竜の加護に関する本はほとんどなく、あったとしても、副作用を治すとか緩和するとかそういうことは一切書かれてなかった。
これはもう、人間の中にそれらを知っている存在は無いと見ていいだろう。
となればかなり長寿である種族の街をあたるか、ダンジョンの主という良く分からん存在に頼るしかない。
未だにグリューネたちが一体どういう存在なのかも良く分かってないが、とりあえず加護を与え、与えられたものは何かしらの影響を受けるというところまではわかっているのである。
ならばここのダンジョンの主の加護に、邪竜の加護の副作用の一切を封じる効果があるかもしれないと期待をするのも無理はないと思う。
ただ、そうであるならばグリューネがここのダンジョンの主の加護を受ければ良いと教えてくれそうなものなので、おそらく望みは薄いだろう。
何かの事情でここのダンジョンの主とは知り合いでなく、それでいて副作用をなんとかする手がかりを持っていると信じて、突き進むことにする。
早速ダンジョンに来たのだが・・・奇妙な場所だ。
「・・・木が水晶でできてるのか・・・」
水晶で出来た木が並ぶまさにファンタジーっぽいダンジョンだ。ダンジョンっぽいダンジョンとも言えるかも。
ところどころ動物らしきものがいるのだがすべて鉱物で出来た様々な動物の形を模したゴーレムのようにさえ思える。
一応、中身を見てみようか?
もしかしたらあれらはただの甲殻で、中身はちゃんとした身があるのかもしれない。
が、目的はそれじゃないし、あまり帰りが遅いとやまいに心配をかけるので、水晶の森の奥へ奥へとずんずん進んでいく。
ちなみに、現在はそのまんまタコの姿で、周りの景色の色に化けて移動している。
理由は言わずもがな。
無駄な戦闘を避けるためだ。
防御力重視の人の姿、隠密力の高いタコの姿。
今回は後者を選んだ。
しかし途中で見かけた狼やイノシシなどの鼻のいい動物や、熱探知能力を持つはずの蛇などの近くを通りかかってもなぜか気づかれなかった。
鉱物のような外骨格に包まれているだけあって、ほかの地域の同じ動物よりも周りへの注意力が低いのかもしれない。
低い分、不意打ちを受けても大丈夫なように硬いのだろう。
いや、逆か。
不意打ちを恐れる必要がないから、そういった感覚器官が退化していったのかもしれない。
何はともあれ、大きな音をたてない程度に急いで森の奥へと進んでいく。
すると不思議な空間に出た。
木々がなぎ倒されており、大きな空間となっている場所だ。
ほかとは明らかに違う様子に警戒度合いを上げて、迂回するように動く。
はずだったのだが。
ヒュンと何か鋭いものが風を切るような音がした。
そしてぼとんと落ちる。
僕の触腕が。
「っ!!」
すぐに戦闘態勢を取る。
念のため、触腕を伸ばして先行させていたのが功をそうした。
囮としてあえて少し動きを大げさにしていた触腕を何かしらの動物が狩ろうとしたのだ。
全く気付かなかったのは向こうもまた擬態の妙手だったがため。
現れたのは鋭いカマを持ったナナフシであった。
☆ ☆ ☆
何かに擬態するという生物は特に昆虫に多く見られる。
大抵の生物は色を似せることによって保護色として外敵にバレにくくする。
バッタが緑だったり、夜行性の狼が黒だったり、地べたを歩き回るヒキガエルが茶色だったり、草原の王者であるライオンが小麦色だったりと。
これは昆虫に限らず、大半の生き物が獲得している能力である。
緑の生い茂る森で白い体色を持った生き物がいたらほぼ生き残ることは不可能となる。
しかしそれのさらにワンランク上の生存戦略として、色と形を似せることが擬態だ。
枯葉だったり、花だったり、草だったり、枝だったり。ときには毒を持つ生物だったり。
概ねはその生物が生息している植物などの動かないオブジェに擬態するのが基本だ。
その中でも最近の都会の子は知らないだろうちょっと見かけにくい昆虫がいる。
枝に擬態する昆虫。それがナナフシだ。
当然、今までに擬態する生物は多々会ってきたし、食べてきた。
だが、未だに見切れないのがナナフシである。
それくらいにナナフシは枝そのもののような外見をしているのだ。
当然、昆虫なので足は三対六本だ。
そんな奇抜な見た目をしているというわけではないのだが・・・
いかんせん、これが見切れない。
そして枝に張り付くというその生態上、餌は葉っぱである。
ゆえに今まで、この生物に驚異を抱いたことなど一度もなかった。
しかし、今回は違う。
カマキリのような鋭いカマを持ったナナフシがこの世界に入るのだ。
しかもすごいでかい。
このナナフシは水晶の木に擬態するので、当然ながらその見た目はそのまま水晶の塊のようなもの。
しかも水晶の木はそれなりの透明度を持つ、地球ならばそこそこに値打ちがつきそうな純度だ。
それにそっくりな外骨格を持つこいつ一匹を日本に持ち帰ったら、さぞかし高く売れるだろうななんて益体もないことを思いつつ。
切られた触腕の傷口を筋肉を締めて出血を止め、速やかにその場を離れる。
まだこの不思議な空間を作ったであろう生物が近くにいるかもしれない。
ちぎれた触腕が自切したトカゲのしっぽのようにびちびちと反射で動いて気を引いているあいだに速やかに距離を取る必要がある。
が、ナナフシがいるとわかった以上、木の上もしっかり見て回る必要がある。
葉っぱがなく、割と見通しがいい森だと思って気を抜いていた。
これからは上も注意していく。
そんなこんなでより時間をかけてもっと奥まで進んでいくと、不思議な空間がまたあった。
そしてさらに進むとまたある。
そのどれにも共通しているのが、木々が押し倒され、木々がまとめられ、中央に寄っているということだ。
不気味すぎる。
まるで・・・まるでなんだ?
まるで”ベッド”のような・・・巣のような。
それは点々と、まるで気まぐれで場所を変えてるかのような・・・
唐突にそれは来た。
すぐさまに人型になる。
本能で防御力を高めなければと瞬間的に判断し、そしてエアジェットで森の上空に、そしてもう一度エアジェットを使って自分を一気に押し出して、すぐさまその場からの離脱を図った。
が、僕が気づいたということは、相手も気づいたということにほかならない。
一気に距離を引き離したはずの相手が、自分の目の前にいた。
空を舞い上がる自分の目の前に。
「っ!?」
『なかなか珍妙な輩が来たものだな。』
目の前には人である。
裸の人がいた。
ただ背中には大きな竜の翼のような者が生えた長身の美女がいる。
赤い髪に赤い瞳。肌は雪のように白い。
竜人か?
いや、やまいと同じ竜人にしたって角と尻尾がない。
それはおかしいだろう。
では竜が人に化けたか?でも、例え竜でも人に化けるのは容易いことではないと聞いた。
だったら僕の知らない亜人か魔人か?
それとも目当てのこのダンジョンの主だろうか?
その目立つ見た目に反して、存在感が希薄すぎる。
「こっちに構わないでもらいたいんだけど?」
冷静に話し合いを試みてみる。
『そうはいくまい。
久しぶりに興味の惹かれる者が現れたのだ。じっくりと鑑賞させておくれ。』
鑑賞、と来たか。
彼女から感じる魔力は一切がない。
不自然なほどに全く感じない。
大気中にも魔力は、魔素は少量ながら存在している。
少なからずそれくらいの魔力はあってもおかしくないのに、この生物はその魔力量すら無い。
ゆえにまるで黒い色をした紙の一箇所に白い絵の具をぽつんと一箇所、点にして塗ったような違和感がある。
なのにもかかわらず、こうしてこいつは空を飛んでいる。
物理的にありえない翼で空を飛んでいるのに、だ。魔力を使わなければ飛べるはずがない。
どこにそんな魔力があるのやら。
珍妙とはこちらのセリフだ。いや、空を飛ぶ裸の美女と空を舞う裸の美少女が見つめ合ってる段階で珍妙な光景なのだが。
こんな得体のしれない生物を相手にしていられない。
首周りから背中に向けて収縮して収めていた触腕を展開。
薄く広げて、翼のように見立てる。
そこにエアジェットを打ち付けて、一気に加速する。翼というよりはヨットの帆のような物と言っていい。
一気に加速で森を出る勢いで逃げようとしたのだが、瞬時に回り込み、あえなく蹴り落とされる。
かなり早い速度で飛べるようだ。
水晶で出来た木々にぶつかり折りながらも地面に着地。
瞬時に相手の方を見て魔法を発動する。
レーザー眼、最大出力。
一瞬のためのあとに極太のビームが空に向かって発射される。
当然避けるだろうが、避けながらもこちらを見るほどの余裕はないはず。
ビームが盾となって死角ができればその隙に逃げることができる。
その隙をついて周りの気に擬態しながら魔力を収めて瞬時に離れた。
「・・・撒いたかな・・・?」
気配探知で分かる範囲にはいない。
あれだけ違和感のある存在を見逃すことはないからおそらく逃げ切れたと判断してもいいはず。
近くの水晶によりかかり、一休みと行こう。
「ふぅ・・・なんだったんだ、あれは・・・まるで生き物じゃないみたいな・・・」
『当たらずとも遠からずと言ったところだな。』
「っひぃああああっ!?」
休憩と気を抜いた瞬間に、何気なく右を向いたらドアップでさっきの人間がいてビックリした。
すごいビックリした。
心臓が飛び出るほどにビックリした。
ホラーすぎる。
『・・・面白いな。
その姿・・・予想通り、人間ではないようだ。人の体に自分の体を・・・強引に押し込んでいるのか。』
タコ状態からすぐに人間状態に。
擬態でごまかせないのなら、全身全霊でもって逃げ切るだけだ。
機動力の高い人間形態をかたどってすぐに逃げ出そうとしたところで腕を掴まれる。
「っ・・・は、離してくれないかなっ!」
『まぁ、まて。
ここまで人が入り込むのは久方ぶりなのだ・・・いや、人ではないが・・・まっすぐ奥に向かってきたところを見るとお前さんは私が目的なのだろう?』
「私・・・?」
『このダンジョンの主だよ、私が。』
と言われても、未だに胡散臭い気配は依然として溢れたままであった。
動物豆知識
ナナフシをご存知でしょうか?
桜の枝などに張り付いて、葉っぱを食べる枝のような昆虫で、ナナフシ、またはナナフシモドキと呼ばれます。このナナフシは単為生殖を行うため、一匹いれば繁殖が容易だったりします。卵は植物のタネや何かしらの昆虫の糞にしか見えないので、作者が飼育していた時、最初は間違えて卵を捨ててしまいそうになったほど。
(単為生殖とは交尾をせずにメスだけで繁殖することを言う)
ちょっと想像が付きませんよね。ただ、オスがいないわけではないそうです。かなり珍しいらしいですが。
ちなみにこの単為生殖は原始的な昆虫以外にも使われている生存戦略です。
世界最大のトカゲで動物番組にもそこそこ登場する、コモドオオトカゲは普段はオスメスによる交尾で増えるそうですが、2007年近くに動物園で飼育されていたコモドオオトカゲが単為生殖で繁殖することが発覚したとか。




